淡々とした、単調な日々。
比伊呂は、あくびを噛み殺す。
男は多忙だった。
迫ったコレクションの打ち合わせ。
衣装の最終段階のデザインのチェック。
男はその合間に、比伊呂のレッスンをした。
「そこ、背筋伸ばして」
男の言葉に、従う。
「違う。視線は、こっちだ。そう、お前はそれでなくてもお前自身が目立ってしまうのだから―――」
ある意味褒め言葉。
だが、今の比伊呂にとっては『ダメ』と言われているのと変わりない言葉。
―――服より、目立ちすぎるな。
男の言葉が突き刺さる。
どうすればいい?
ジレンマに陥る。
どうすれば、男を見返す事が出来る?
どうすれば、男に認められる?
「・・・呂。比伊呂」
視線を上げると、男の顔が目の前にあった。
「余裕だな、比伊呂。考え事が出来るなんて」
男の口調は、先ほど比伊呂を指導していた時とはガラッと変わっていた。
―――肉食獣。
比伊呂はゾッとして、背筋を伸ばした。
「別に、考え事なんて・・・」
「反論なんて、聞かない。言い訳なぞ、聞く耳もたない。馬鹿なペットには躯で覚えさせるだけだ」
男の切るような言葉に、比伊呂は目の前が真っ暗になった。
「や・・・っ、あ・・・」
頭を振って必死に訴えるが、男はニヤリと笑ってその手を緩めようとしない。
「お仕置きだと言っただろう? 比伊呂」
高ぶって、あとひと擦りでイケるという所で、男は煽り続けていた手を止め、比伊呂の熱の塊の根元ギュっと握りこんだ。
イきかけていた比伊呂は、その苦痛に悶える。
「や、やっ・・・」
イきたくて、比伊呂を握る男の手を外そうと、必死震える手でその指を引っ張る。
「生意気な、愛玩具<ペット>だ。ご主人様の意思に反して、己の意思を突き通そうとするのか?」
男の冷たい言葉に、比伊呂の躯は震えた。
「今日は、イかせない―――」
男の言葉に、恐怖が躯中に広がる。
「ご、ゴメンナサイ・・・」
「―――遅い」
男が比伊呂に見せたもの―――それは、金色に輝くリング―――に、比伊呂は大きな瞳を更に広げた。
「言う事を聞かないペットには、しっかりとした調教必要だ」
男はそう言うと、比伊呂の恐怖で萎えてしまったソレにそのリングをはめた。
冷たい感触と恐怖に、比伊呂は息を詰める。
「似合うじゃないか、比伊呂。ずっとしておくか?」
「・・・許して、お願い」
怯える比伊呂に、男は傲慢な笑みを向け、ゆっくりと首を横に振った。
―――比伊呂には、悪魔の微笑みに見えた。
「あっ・・・ああっ・・・」
腰を獣のように突き出し、背後よりグロテスクなディルドーを受け入れる。
「腰をもっと振ったら気持ちよくなれるよ、比伊呂。もっと従順で淫らで可愛いお前を見せてくれたら、俺はそのリングを外したくなるかもしれない」
男は悪魔の言葉を、比伊呂の耳に囁きかける。
「いやっ・・・もぅ・・・も・・・あぁ!」
男にスイッチを押され、比伊呂の内部を犯す真っ黒なソレは再び淫らな動きを始めた、
奥を犯され、蠢くディルドーに、比伊呂の頭の中は真っ白になる。
強すぎる快感。
後ろだけで感じてしまうようになった躯。
もっと奥を犯して欲しくて、無意識に振ってしまう腰。
「イかせて・・・お願い、イかせて・・・!」
イきたくても、イけなくて。
頭はもうおかしくなっているのかもしれない。
比伊呂は、男に縋りついて、懇願する。
プライドなど―――もう、無い。
「淫らなお前は、綺麗だよ。もっと俺を煽れ・・・・!」
比伊呂の内部を犯していたディルドーを抜くと、男は比伊呂を己のソレで一気に貫いた。
「ああっ!!」
熱い男のそれで、一番犯して欲しかった奥を貫かれ、比伊呂は躯中を震わせる。
男はそのまま比伊呂の腰を掴み、起き上がらせる。丁度、背面座位の格好になった。
「や、ん・・・」
比伊呂の体重で、男がさらに奥へと侵入してきた。
「ん? イってしまったか?」
比伊呂の先端からトロトロと流れる液体を指ですくって、男は比伊呂の目の前に持ってきた。
羞恥で、思わず目をそむける。
「今更、照れているのか?」
男はそういいながら、比伊呂を苦しめ続けたリングを外した。
「よく、頑張ったな。今日のお前は最高に淫らだった」
「んっ・・・あっ、ああっ」
耳朶を噛まれ、熱い吐息と共に囁かれる、労わりの言葉。
その優しい言葉に、涙が溢れる。
「泣くな、比伊呂。泣いてる顔もそそるが、どうせなら快感で泣け」
男に躯を預け、比伊呂は首筋に軽く歯をたて甘えてみる。
男が苦笑して、髪の毛に優しい落とした優しいキスに、胸が熱くなる。
悪魔―――と、反発しながらも、男の飴と鞭の使い分けに、比伊呂は翻弄され、流されていた。
激しく腰を使われ、比伊呂の息はあがる。
「イけ、比伊呂。淫らに、綺麗に、俺の腕の中で―――」
「や、イク・・・あっ―――!!」
比伊呂が解放したと同時に、男の迸りを比伊呂は己の中で受け止めた。
|