Would you love me?
−4−


 


 ―――苦しい。
 誰か、この熱を解き放ってくれ!







◇◆◇◆◇







 男の手と舌は、比伊呂のわき腹をなで、臍を舐めあげ、内股を刺激する。
 その度、比伊呂の躰は陸に上がった魚のように跳ね、その唇からは堪えきれない声が漏れた。

 「―――い、やっ!」

 男が比伊呂の奥に隠れた蕾を、その指でそっとなぞった。
 そのなんとも云えぬおぞましい感触に、比伊呂のは本能的に身を捩る。

 「おとなしくしてろ。俺は、別にお前が感じてようと感じていまいと関係ないんだからな。」
 「・・・・なっ。」
 男の言葉の意味が見えず、比伊呂は思わず男を見上げた。
 男は残酷な笑みをうかべながら、比伊呂の顎の人差し指で上げゆっくりとその唇を比伊呂に重ねる。

 「・・・んっ・・・ふっ・・・」

 抵抗を放棄しつつある比伊呂の口腔内に侵入した男の舌は、上顎の裏側を刺激して、奥に逃げ込んだ比伊呂の舌を丹念に誘い出す。
 誘惑に負けた比伊呂の舌がおずおずと出てきた所をとらえ、絡め取った。

 「うっ・・・ぁ・・・」

 飲み込みきれない唾液が、唇の端から首筋へと流れる。
 それを追うように、男はやっと比伊呂の唇を離したのだった。

 首筋を舐め、男は比伊呂の耳朶に歯をたてる。

 「俺はサドじゃないんでな。痛みに泣き叫ぶ愛玩動物<ペット>なんてのは興味ないから、なるべくお前に負担にかからないようにはしてやるつもりだが・・・。」

 男は比伊呂の蕾に強引に指を差し入れた。

 「いっ―――」
 襲った痛みに、比伊呂は一瞬息を止める。

 「本来・・・奴隷の快感なんて、持ち主はどうでもいいんだよ、比伊呂。」
 ―――お前がおとなしくしないと、俺はお前をただの奴隷として扱うよ?

 男の言葉に、全身総毛立つ。
 抵抗すれば・・・無理矢理強姦する。
 男の言葉を要約すれば、そういうことだ。
 
 潤滑剤も使われていない固く閉ざされた比伊呂の蕾の中で、男は強引に指をかき回す。
 あまりの痛みに、比伊呂の瞳からは涙があふれ、自然に許しを請う言葉があふれていた。

 「いい子だ、比伊呂。おとなしくしているね?」
 「・・・・し、てる・・・・ひぃっっく。」

 恐怖と痛みに泣き出した比伊呂に男は優しくキスを落とすと、躰を起こし比伊呂を軽々と抱き上げた。








◇◇◇








 ドサッ

 その部屋は見覚えがあった。
 そう、最初につれられてきた部屋だ。

 男は比伊呂をベットに下ろすと、ゆっくりと己のシャツを脱ぎ捨てた。



 「冷っ・・・」

 濡れた冷たい感触に、ビクリと肌を振るわせる。

 クチュリ
 隠微な音が、響いた。

 「あ・・・や・・・」

 男の指が、比伊呂の中に侵入する。
 だが、先ほどのような痛みが・・・ないのだ。

 「これは、潤滑剤。コレで比伊呂のココをゆっくりと解してあげるよ。」
 男の指は円を描くように、比伊呂の中で蠢く。

 「ほら、もっと足を開いて。」
 「やっ・・・」

 男の言葉に、比伊呂ハッと我に返る。
 両足を開き、その間に男を挟みこむ格好。
 なんと、恥ずかしい。

 「・・・比伊呂。」

 小さな抵抗を始めた比伊呂に、苛立ちを込めた声で男が咎める。

 「痛っ―――!」

 ギュッと比伊呂自身を掴まれる。
 痛みに比伊呂の抵抗が止まると、男はニヤリと笑い比伊呂の耳元で囁く。

 「コレを噛んでやろうか?あまりに聞き分けのないペットは、飼い主が躾けをしないといけないからな。」
 「や、や・・・。」

 噛まれるなんて―――
 比伊呂はゾッとして、首を必死で横に振る。

 「じゃ、大人しくしてるね。」
 何度も肯く。

 「足、開いて―――?」

 男の声は、麻薬のようで。
 比伊呂は痺れたように、従ってしまう。

 「イイ子だ。」

 指が増やされる。
 圧迫感に、息があがる。

 男の指は一方で比伊呂の奥を探り、もう一方は痛みで縮こまっていた比伊呂自身を微妙に刺激する。

 圧迫感と、奥に持たされる微妙な感覚と、自身に与えられる刺激。
 
 ―――オカシクナリソウ

 だが、気を飛ばす事も出来ずに、比伊呂はただ耐えるようにシーツをギュッと握った。

 「う・・・」

 力を持ってきた比伊呂自身は、今度は先ほど根元に結ばれた紐に圧迫される。

 「ね・・・コレ・・・」
 「ん―――?何だ?」

 悪魔―――

 男はわかっているくせに、判ろうとしない。
 苦しい。
 取って欲しい。
 手は、縛られて自由にならない。
 もどかしくて、腰を捩る。

 「ジッとしてろって云っただろう。」
 「ヤ・・・取って・・・」

 必死で訴える。
 もどかしい。
 痛い。
 苦しい。

 開放、して欲しい。

 「何を、取るんだ?」
 「コレ・・・紐・・・取って・・・」

 1つずつ、プライドを崩される。
 1つずつ、プライドを崩していく。

 「だって感じていないんだろう?比伊呂。」

 悪魔は、まだ許しをくれない。
 これ以上、何をさらけ出せと云うのだ。

 「それとも、感じているのか?男の俺に感じさせられてる?」

 グチュリ
 3本目の指が入る。
 内壁を刺激する指は、圧迫感の他に、なにかを比伊呂にもたらす。
 それは、躰の奥を熱くする何か。

 そして、それはどんどん比伊呂を追い詰める。

 「苦し・・・・。取って・・・。お願・・・・い。」

 それは、懇願。
 完全なる屈服。

 「感じてる、コレに?」
 男の指が、内壁を引っかく。

 「それとも、こっち?」
 男の指が、比伊呂の先端を擦る。

 「感じ・・・てるっ。感じてるぅ・・・イカせてっ!!」

 比伊呂の言葉に満足した男は、食い込んでいた根元の紐をゆっくり外す。
 そして、探り当てた比伊呂の奥の1箇所を、指で刺激した。


 「や、あぁぁぁぁ―――」

 小さな悲鳴をあげて、比伊呂は白い液体を吹き上げた。










◇◇◇










 「はぁ・・・・はぁ・・・・」
 「よく、出たな。比伊呂。最近してなかったのか?」
 「なっ―――」

 ニヤニヤ笑う男を、比伊呂は睨み付ける。

 「負けん気の強いお前を、俺は事の他気に入っているんだが、この場合その表情は反則だな。」
 男の顔が近づく。

 「お前のその顔は、誘っているようにしか見えない―――」
 「ば―――!!」

 罵りの言葉は、男の喉の奥に消える。
 噛み付くようなキスは、比伊呂の余裕と理性を奪っていった。

 やっと唇が離された時には、比伊呂の意識は朦朧としていた。
 だから、一瞬気付くのが遅かったのだ。



 「い、―――!!」
 「馬鹿・・・。力むな。」

 痛い。
 熱い。
 苦しい。

 男の熱い楔が、どんどん内部に入ってくる。

 「息を、吐け。」
 「で、きない・・・」

 弱弱しく首を振る比伊呂に、男は仕方ないという風に、比伊呂の前を刺激する。

 「や・・・やめっ・・・」

 力の抜けた隙に、男は一気に比伊呂の奥を犯した。



 ズキズキする。
 熱い。
 ドクドクいってる。



 「抜いて・・・」
 「今更、抜けるかよ。」

 比伊呂の懇願は、あっさり却下される。
 そして、
 「そろそろ、動くぞ。お前も慣れてきたみたいだし。」

 比伊呂の奥は、拒むような動きから飲み込むような収縮へと変わってきている。
 
 「や・・・あっ・・・あっあっ―――」
 「最初だからな。優しくしてやるよ。お前がいいように、な。」

 男はゆっくりと抜き差しを始める。
 最初は軽く。
 そして、どんどん大胆に。

 ギリギリまで引き抜き、一気に奥に突き入れる。
 回転するように、回される。

 
 部屋にはヌチャヌチャと、イヤラシイ音が響き渡り、比伊呂の絶え間ない喘ぎ声と、男の低い息遣いがだけがあった。



 熱い。
 苦しい。
 熱い。
 嫌だ、嫌だ、嫌だ。

 こんなの、知りたくない―――


 「そろそろ、イクぞ。」

 男の声は、比伊呂に最終審判を告げたように聞こえた。


 「や・・・嫌・・・やぁぁぁ―――」


 比伊呂は今日2度目の欲望を開放させると、そのままやっと望み通り意識を手放したのだった。













2002.4.29
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