11000HIT記念
視線で殺して、魂で縛れ!


 あまりのショックで、思考回路がストップしてしまった英治は、さしのべられた腕にも何の反応もせず、ずっと男の顔を見つめていた。
 男は、もう一度大きく溜息をつくと、英治の右腕を掴んで自分の方に引き寄せた。

「あんた・・・・ほんとに俺の事、判ってなかったのか・・・・・?」
 ギュッと抱きしめ、耳元に囁く。
「だって・・・・」
 男の胸の中で、英治はイヤイヤをするように首を振りながら、混乱している自分の頭を整理していた。
「だって・・・髪型が違う、髪の毛の色が違う、雰囲気が違う、話し方が違う・・・・・」
 違う違う違う・・・と子どものような口調で繰り返す英治に、男は云うつもりの無かったことを言葉にした。

「俺は、あんたに突然去られて・・・次に再会できた時には、初めてあったような顔で『よろしくな』だ。そんなに、俺のことがイヤだったのか?忘れたかったのか?他人のフリをしたかったのか?・・・って思っていた。」

「そんなの・・・・」
 判らなかった。
 全然、気付かなかった。

「だったら、今度は全力で縛ってやると思った。もう、突然去られてあんな思いをするのは絶対イヤだった。なのに・・・・あんたの中には誰か他の人間がいる―――」
「だって・・・!!」
 言い募ろうと・・・自分の気持ちを云おうとする英治を遮るように、男は話を続ける。
「ナゼ、俺を捜してたんだ―――。一度は捨てた、俺を・・・」
「捨てたつもりなんて無かった―――!!ただ、云いそびれて・・・お前に連絡取ろうとしたときに、連絡先が判らないことに初めて気付いたんだ・・・」
 英治は震える手で、男の服をギュッと掴む。
「アキラを忘れた事なんて無かった。ずっと、アキラのこと考えてた。何で・・・何で云ってくれなかったんだよ・・・・水島ぁ!!」
 今にも泣き出しそうになっている英治をギュッと抱き寄せ、水島・・・アキラは、自分の中にずっとあった恐れを口に出した。

「一度・・・俺を捨てたお前に・・・・・もう一度、捨てられろと云うのか?」

 その、苦しそうな声に、水島に縋り付いていた英治は、ハッと顔を上げた。
「捨ててなんかイナイ!!水島、お前に抱かれながら、ずっとアキラのことを想ってた。」
 水島の胸を握りしめた拳で叩きながら、必死に自分の気持ちを口にする。
「え・・・いじ・・・」
「アキラのことが好きなんだって、藤岡に云われて自覚して・・・なのに、今度は水島のことが頭を離れなくなった―――、2人のことを想って、俺は頭がおかしくなりそうで―――」
 オレは・・・
 オレは―――――!!

 だが、続くはずだった英治の言葉は、水島の口腔内に消えていった。


◇◆◇◆◇


 2人はそのまま無言で、近くのラブホテルに向かった。
 そして、部屋に入った途端、2人は縺れるようにベットへダイブしたのだった―――。

「英治・・・英治・・・」
「ん・・・アキラ・・・・アキラ・・・」

 口付けを交わしながら、お互いの服を脱がしあう。
 もう、言葉はいらなかった。
 ただ、お互いの熱い想いを、情熱を、交わしたかった。

「ああ・・・イイ・・・アキラ」
「英治ん中、すっげー熱い・・・」
 英治は初めて、自分から水島の唇を求めた。
 英治のそれだけの行為で、水島の胸の中は熱くなる。
「もっと・・・!もっとアキラぁ―――」
 深いつながりを求めるように、英治は腰をよじる。
 そんな英治の嬌態に、水島は深い口付けで答えながら、英治の腰に腕をまわし、覆っていた躰を起こした。

「あぁぁ・・・・!ダメだ・・・・アキラ・・・」
 アキラの躰にのし掛かる格好になった英治は、自分の体重と重力で、水島との繋がりが一層深くなる。
「深い・・・深いよ・・・アキラぁ・・・」
 下になった水島は、自分では動こうとはせず、英治の躰に手と唇で愛撫を繰り返すばかり。
「アキラ・・・なぁ・・・」
 英治はじわじわとわき上がってくる快感に、たまらなくなって潤む目で水島を見つめた。
「自分で動いてみて・・・」
「んなの・・・できねー」
 恥ずかしくなって、唇をかみしめうつむいてしまった英治に、水島は向かい合って両手で頬を挟んでお互いの額をくっつける。
「英治が・・・俺をほしがってるって感じたいんだ―――。今までは・・・俺ばっかりだったから―――」
 水島はかき口説くように、英治の唇を丁寧に舌で舐め、唇の端から耳朶・・・うなじ・・・鎖骨へとキスを落としていく。
 英治はそんな水島を見て、フーと息を吐くと、意を決したように自分から少しずつ動き出した。
「んっ・・・んっ・・・んぁ・・・」
 自分の上で目元を紅く染めて身もだえる英治を見ながら、水島・・・アキラは、遂に英治を手に入れた事を、実感した―――。


◇◇◇


 新任教師として、舞台上で話している英治を見たときのことは忘れられない―――。
 一度は英治を失って・・・。
 これは、運命だと思った。
 もう、離さないと思った。
 後で声をかけて、『実は俺、高校生だったんだ―――』て、笑い話にしよう。
 そして、自分の気持ちを伝えるんだ―――。
 そう思っていたの所に、生徒会主任の岸谷が「新任の先生に挨拶しろ」と英治の前に俺達を連れていった。
 さすがに、『俺だよ―――』とは、その場では云えなくて

『副会長の水島<みずしま>です。麻生先生よろしくお願いします。』
 そう云った。
 目では、“英治・・・俺だよ・・・”必死に訴えた。
 だけど・・・英治から返ってきた言葉は

『いや、オレこそきっと君らには色々教わると思うし…よろしくな。』
 君ら・・・
 君ら・・・・・・・・
 俺は、矢野や渡辺と同じように扱われた。
 信じられない思いで、英治を見返すと、怜一とナゼか見つめ合っている。
 イライラして、怜一の袖を引っ張った。
 やはり、英治は何事もないように、岸田と俺の前を去っていった。

 なぜ・・・・・・・・?
 ナゼ、俺を無視する―――?

 英治は・・・俺とはもう会いたくなかったのか・・・・・?
 もう、俺と関わりたくない―――?

 俺は、本当は捨てられたのか―――

 だったら・・・・・・
 自分の名前を云って、もう一度捨てられるよりは・・・

 俺も他人のフリをする。
 そして、今度こそ英治を手にいれる。
 今度は、何をしても・・・がんじがらめに縛り付けてでも・・・・・手にいれる。
 もう、失いたくない―――
 失えない―――
 英治の気持ちが得られなくても、躰だけでもいいから・・・・・
 躰だけでも―――!!

 そう思って、すぐに実行した。
 嫌がる英治を、縛り付けて犯した。
 躰に、俺から与える快楽を刻み込ませた。
 「貴方は俺のモノだ―――」
 この言葉を、自分の言い訳に・・・免罪符に・・・。

 だが・・・日に日に募る焦燥感。
 英治の心の中に誰かがいることに気付いたのは・・・いつだっただろう。
 胸を焼き尽くすような、嫉妬。
 躰だけでも―――?
 馬鹿なことだ・・・。
 そんなモノでは、足りない―――
 足りるわけなかったんだ・・・・・・・!!

『アキラのことが好きなんだって、藤岡に云われて自覚して・・・なのに、今度は水島のことが頭を離れなくなった―――、2人のことを想って、俺は頭がおかしくなりそうで―――』

 アキラ―――優等生に疲れて、外で遊び回った・・・本当の自分。
 水島―――仮面をかぶって、優等生を演じる・・・コレも本当の自分。
 どちらも・・・どちらの俺も好きだといってくれた。

 英治
 英治
 好きだ
 好きなんだ―――


◇◇◇


「はぁ・・・あぁ・・・んん・・・!!」
 必死に縋り付きながら、腰を動かす英治に我慢できなくなった水島は、もう一度英治の躰を押し倒すと激しく腰を打ち付ける。
「やぁ・・・・ああ・・・!!」
 あまりの快感に、涙と啼き声の止まらない英治にキスの雨を降らせながら、水島は頂点へと向かってそのまま激しい律動を繰り返した。

「あはぁ・・・アキラぁ・・・アキラ」
「英治・・・英治・・・好きだよ・・・・好きなんだ」
「んぁ・・・・俺も・・・アキラの事・・・好きだ。」
 喘ぎながら、途切れ途切れでも自分の気持ちを伝えてくれる、英治が愛しい―――
「水島のことも・・・好きなんだ―――」
「英治―――!!」

 最上の告白を聞きながら、水島は英治の最奥に自分の欲望を解き放った。

エピローグへ・・・


次の更新予定は・・・カウンター12000を越えた日だと思うんですけど・・・。

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