9000HIT記念
視線で殺して、魂で縛れ!


 水島は、いつものように英治を捜していたが見つからず、イライラとしていた。
 その時、廊下を歩いていると前方から、会いたくもない男が手を振って近寄って来るのが見え、思わず顔をしかめた。

「よっ、なんつー顔をするんだ。冷たいヤツだな。」
「何のようだ。俺は急いでいるんだ。」
「別に用はないが・・・麻生先生がさ」
 水島が英治を探していることが判っていて、意味深に言葉を運ぶ男に、水島はイライラとして珍しく突っかかっていった。
「英治がどうしたんだ、何処にいた。」
「ほっほう、先生を呼び捨てするなんて―――」
「五月蝿い!質問に答えろ」
「麻生先生なら、自習室で可愛い生徒に告白されて困惑している所を、“クールビューティー”にカウンセリングを受けているぜ」
「―――ふ、藤岡さんと・・・!」
 水島は、――口でも行動でも――1度も勝てない先輩の顔を思い出し、ゾッとした。
 どうせ、水島が英治に構っているのを知って、暇つぶしにいつもの嫌がらせをしてきたのだろう。
 ―――あの人に一体、何を吹き込む気なんだ・・・。

 それに・・・可愛い生徒に告白だと――――――!
 何度、無防備すぎると云わせるんだ―――あの人は!!

 水島は男を振り返りもせずに、自習室へ走って行った。


◇◆◇◆◇


「で、どうするんですか?」
 藤岡は英治の前に座ると、机に片肘をついて優雅に質問をしてきた。
「何を・・・?」
 藤岡が聞きたいことはわかっていたが、英治は答えたくなかった。
「可愛いじゃないですか。“先生といると、胸がドキドキするんだ”なんてね」
 英治の顔をニヤリ、と藤岡は覗き込む。

 ―――答えたくないが、許してくれないらしい。

 英治は大きく溜息をついた
「お前な・・・男同士で、好きとか嫌いとかなんて―――」
「別に、俺は好きになれば、男も女も関係ないと思いますよ。」
「えっ?」
 英治は藤岡の思いがけない言葉に目を見張った。

「恋愛感情なんてモノは、理性的に処理できるモノではないでしょう。好きだって思ってしまったら、性別なんて後からついて来るんじゃないんですか。男とか関係なく“そいつが好きだ”と思ってしまったら、もう、否定は出来ないでしょう?たとえ自分がノーマルな体質であってもね。」

 同性なんて馬鹿馬鹿しい・・・。
 一番そう云いそうな人間に、同性との恋愛を肯定され、英治は何とも云えない気分になってきた。

「そんな・・・お前は経験あるのか―――?」
「俺はまだ、“恋愛感情”というモノ事態を人に抱いたことがないです。」
「ってお前、確か梅華の美女と・・・?」
「恋愛感情なんてモノはなくても、つき合えるんですよ。」
「―――お前はそういうヤツだな・・・」
 英治は藤岡に答えながらも、頭の中では1つのことでイッパイだった。

『―――好きだって思ってしまったら、性別なんて後からついて来るんじゃないんですか。男とか関係なく“そいつが好きだ”と思ってしまったら、もう、否定は出来ないでしょう?―――』

 自分のアキラに対する感情・・・・・・。
 もう、友達というだけでは、説明できないモノ。
 男同士だから―――そんな感情あり得ないモノだと思っていた。
 けど―――。

「藤岡」
「何でしょう、先生?」
「も、もしも、な・・・。いつでもそいつの事が頭の中にあって、ヒマさえあればそいつの事を思い出して、凄く会いたくて・・・・他のヤツと・・・・その、してても・・・・そいつの事を思ってしまうのは―――恋愛感情だと、思うか―――?」
 英治の真剣な顔に、藤岡も真剣な顔になった。
「第三者から言わせてもらうと―――間違いなく。」
「そうか―――」



 英治は立ち上がり、自習室の扉に向かった
「―――藤岡」
「はい、なんでしょう?先生」
「ありがとう」
「―――いいえ」
 藤岡はフワリと笑って、英治に手を振った。


◇◇◇


 準備室に向かいながら、英治は自分の気持ちを整理していた。

 この気持ち。
 アキラに対するこの気持ち
 コレは
 そう―――恋愛感情なんだ。

 アキラが好きだ・・・

 英治はパッと顔が紅くなるのがわかった。
 思わず顔に手を当てしゃがみ込む。

 ―――うわっ、何だよコレ・・・。
 でも、はっきりと自分の感情がわかった。

 オレはアキラが好きなんだ―――。



 その時―――

「先生」

 突然、後方から声がかかる。
 今、一番聞きたくなかった声かも知れない・・・。

「水島・・・・」
 しゃがみ込んだまま、振り返ると、少し息を切らした水島が立っていた。
 いつも以上に感情を読みとれない表情・・・。

 怒ってる―――?
 ナゼ―――

 水島は英治のそばまで寄ってくると、手首をわし掴みにして、そのまま英治を引きずっていく。
「なんだよ・・・水島・・・?!」

 英治は、角にあったトイレの個室に水島に引きずり込まれた。
 水島は鍵をかけると、大きな手のひらで英治の両頬ををはさみこみ、視線をぶつける。
「藤岡さんと・・・何を話していたんですか」
「な―――」
 何で、知ってるんだ・・・。
 思わず絶句した英治に、水島は畳みかけるように話す。

「あの人は・・・あの人に関わってはダメだ。あの人は全てを見通していて、そして、その状況を楽しんでる。人の気持ちをもてあそんで、自分の感情はなにも動かさない―――冷たい、冷たい人なんだ。」
 断言した水島に、英治は思わず反論する。
「なに云ってるんだ。藤岡はイイヤツだぞ。ちょっとイジワルだけど、顧問になったオレに良くしてくれるし、相談にだって・・・・・・」
「相談なんて、俺にすればいいじゃないですか!」
「そんなの・・・・・」
 アキラの事なんて、お前に聞けるわけがないじゃないか―――

「それに・・・生徒から告白されたんだそうですね」
「あ・・・」
「何で貴方はそんなに無防備にしてるんですか―――」
「む、無防備なんて・・・知らないぞ!」
 キッと見上げると、水島の顔がぐっと近寄ってくる

「その顔が無防備だって云うんです。その顔で・・・何人の人間が、そそられているか知らないんですか―――!!」

 水島の手は英治のベルトに掛かり、それを一気に引き抜くと、ズボンと下着も英治の抵抗を全く無視して、膝まで下ろされてしまった。
「おま・・・こんな所で―――!!」
「関係ないです。貴方は俺のモノだって判ってもらわないと・・・」
「ちょっ、まて―――」

 躰をひっくり返され、英治は思わず壁に手をついた。
 水島の右手は英治の蕾に伸び、入り口を軽くつつくように刺激してくる。
 濡れたジェルの感触に、ゾクゾクッと英治の背筋は泡立った。
 入り口を焦らすように撫でていく水島の指の感触が、焦れったくてむず痒い。
 奥への快感を求めるように、英治の腰は勝手に揺れてしまう。
 そんな英治の様子を満足げに見つめながら、水島の反対の手は、敏感な内股を刺激しながら、半分勃ち上がった英治自身に軽く触れた。
「あっ―――」
 英治は眉間に皺をキュッと寄せ、息を詰めた。

「もう―――感じてるんだ」

 背中から囁かれる声に、躰がグッと熱くなる。
 うなじを舌で這われ、食いしばる歯の間から甘い声が漏れ出す。
 いつの間にかネクタイはくつろげられ、シャツのボタンは半分はずされ、胸の突起物はもてあそばれていた。
「んぁ―――」
 クチュッ
 濡れた音と共に、水島の指が英治の奥に差し込まれ、鼻から声がぬける。
「ああっ」
 水島の指はグイッと英治の内部をかき回し、最も感じる部分をスッと掠める。
「やぁ―――ああぁっ、んぁ・・・そこぉ・・・」

 もっと奥に・・・・・
 もっと欲しい・・・・・・・

 求めるように腰を突き出す。
「そんなに欲しいんだ―――先生」
 煽るように耳朶を咬まれ、思わず壁に爪を立てる。

「あ・・・」
 入り口に熱い感触を感じて、英治は自然に力を抜いた。
 躰は、これからの快感を期待して震えている。

 水島は英治の腰を抱え、ゆっくりと・・・強引に自分の猛ったモノを挿入していく。
「んあ・・・んぁ・・・あぁ・・・」
 躰を押し開かれていく感触に、英治は苦しそうに眉を寄せた。
 その顔に水島はもっと―――煽られる。
「ああ・・・!あふっ・・・」
 英治の内部でより熱くなった水島の圧迫感に、英治は喘ぐように躰を反らした。

 水島は、根本まで収まったモノをグラインドさせながら、この1ヶ月で知り尽くした英治の感じる部分に当たるように突いていく。
「はっ・・・ああっ・・・・・ん・・・」
 啼き声が一気に高くなる。
 英治は頭を振りながら、与えられる快感に悶えた。

 その時―――

 人の声が聞こえてきた。
 トイレに誰かが入ってきたのだ。
 水島は動きを止め、英治の躰は一気に固くなる。

 何人かの生徒の話し声がトイレ全体に響き渡った。

「こんな所で、こんな事やってるって・・・思っても見ないんでしょうね・・・」
 かかる熱い息に、心臓が高鳴り、力が抜ける。
「おま・・・やめ・・・」
 抗議のため振り返ると、水島の顔が意地悪くなるのが判った。
 そして、水島はゆっくりと腰を動かし始めた。
「――――ぁっ」
 漏れそうな声を抑えるために、必死に唇を噛み、額を壁につけて耐える。
 荒い息使いが、個室に響く―――。
 緊張した状態に、2人とも異常なほど興奮していった。

 生徒達が出ていったのが判ったところで、英治は抗議の声を上げようとまた振り返った所を、また唇でふさがれ舌を絡められた。

「んっ・・・んんっ・・・!!」
 そのまま激しく突かれ、2人は際まで高まっていく。
 意識は白濁してきて・・・英治はいつものように、一人の男の事を思い浮かべかけた時―――

「どうして―――」
 水島の小さな・・・だが、血の吐くような声に、英治の意識が一気に現実に戻る。
「どうして貴方は・・・俺を見ない―――!!」
「んっ・・・・あぁ・・・」
「こんなに・・・・・・こんなに、想っているのに―――」
 悲痛な叫び声。
 胸が裂けそうなほど―――
 思わず振り返って・・・目と目があう―――――。
 あってしまった・・・。
 そしてその視線に、英治は捕らえられる―――。

 ―――水島・・・・・・

「あぁ・・・!だめっ―――」
「英治・・・あぁ・・・・・英治・・・」
「イイ・・・もぉ・・・イクゥ・・・!水島ぁ―――」
「英治―――」

 水島
 水島
 水島――――――

 視線を反らさず、水島と見つめ合ったまま、英治は自分の欲望を解放した―――。
続く・・・


次の更新予定は・・・カウンター10000を越えた日(もしかしたら、11000になるかも←弱気)です。

Back Top NEXT