6000HIT記念
視線で殺して、魂で縛れ!

「いて・・・」
 英治は目が覚めた途端、躰の全身に走った痛みに、顔をしかめた。
 枕元に置いてある、目覚まし時計に手をかけ、時間を見る。
 もう、学校に行かなくては行けない時間だ。
 だが・・・。

 何で、こんなに躰中が痛いんだ・・・?

 瞬間、昨日の英治の躰に起きたことが、走馬燈のように頭の中を走った。
 ―――そうだ、オレは・・・水島に、生徒に、好きなようにされて・・・・!!
 思い出したくもないことを思い出して、英治は唇をかみしめながら枕に顔を埋めた。

◇◇◇◇◇

「送っていきますよ、麻生先生。」
 意識が戻り、怒りのあまり震えている英治に向かって、水島は平然と告げた。
「さ、触るな!!」
 伸ばしてきた腕を、振り払う。
「わからない人ですね。立てないでしょう、そんな躰じゃあ。」
 確かに、先ほどまで好き放題蹂躙されていた英治の躰は、そこかしこが悲鳴を上げていた。
 だが、そんな問題じゃない。
「帰る。」
 痛む躰に叱咤しながら、英治は立ち上がる。
 脱がされていた服は―――英治が気を失っているうちに水島が着せたらしく―――きちんと着せられいた。

 だが、ソファーから一歩踏み出した所で、英治はガクッと膝をついた。

 ・・・なぜ。
 腰に力が入らない。

「普段使わないところを、酷使したのですから、当たり前です。」
 英治の頭の中を読んだように、水島が声をかけてくる。
 ・・・それさえも、英治には頭にきた。

「クソッ!触るな、触るな、触るなぁ―――――!!」
 残っている体力を振り絞って、英治は生徒会室を飛び出した。



 愛用の車に飛び乗って家まで帰ってきた英治は、風呂場に飛び込んだ。
 シャワーを浴び暖まった途端、ドロリと、英治の中に放たれた水島のモノと英治自身の血が混じった液体が流れだし、太股をつたった。

「グッ・・・」

 吐き気がこみ上げる。
 指を入れて、中に放たれたモノを掻き出しながら、情けなさに我慢していた涙が溢れ出した。

 ―――こんな事、誰にも云えない。

 生徒に犯されました、など学校にいうわけにもいかず―――なにより、男に犯されたなんて、プライドにかけて云えない―――友人に相談できるわけもない。
 この事は、どうやら自分の胸に直しておかなければならないらしい。

 クソッ、泣き寝入りかよ!あいつ、殴っておけばよかった。

 水島に対する呪いの言葉を吐きながら、風呂場を出ると、英治はそのままベットに倒れ込んで眠ってしまったのだった。

◇◇◇◇◇

 トゥルルルルル―――

 電話の音に、英治はハッと顔を上げた。
 電話を取りに行くのも億劫だ。
 動きたくない。
 しばらくすると、留守番電話のテープが流れ出した、

『麻生先生』
 そこから流れ出した声は、今、一番聞きたくなかった声。
『躰、大丈夫ですか。今日は一日休んだ方がいいと思います。』
 な、何が休んだほうがいいだと!!お前のせいじゃないか。
『こちらで手配しておきますので、今日はごゆっくりお休み下さい。それでは』
 淡々と用件だけを話して、電話は切れた。

 絶対、絶対、学校に行ってやる。
 ヤツの思い道理になんかなるモノか・・・!!
 そして、おもいっきり殴ってやる!!

◆◆◆

「お前の愛しの人、学校来てるじゃないか」
 男は窓際に肘をかけながら、視線を水島に向けた。
「あの人は・・・。休んでおけっていったのに・・・」
「おーおー、足取りが怪しいぞ〜。亨お前、マジにやったのか?」
「あたりまえだ。お前に貰ったクスリ、使った。」
「かわいそうな、麻生先生。悪魔に魅入られたねぇ。」
「あれは、俺のだ」
 キッパリと言い切った水島に、男はニヤニヤ、と下品な笑顔を向けた。
「おお、断言。あっ、麻生ちゃん、よろけた所を生徒にキャッチされてる。あーあー無防備な笑顔を向けちゃって―――」
「・・・・」
 男の言葉を最後まで聞かず、水島は部屋を飛び出した。
 もちろん、自分以外の人間に笑顔を向ける英治の元に行くために。

「マジで、マジなのか・・・信じられねぇ。あいつが何かに本気になるとはなぁ。」
 男は、胸ポケットから出した煙草を吸いながら、英治の腕を掴んで引きずっていく水島の姿を、目を細めて見ていた。



「離せ―――」

 ふらついて倒れそうになったところを、横に歩いていた生徒に抱きかかえられ、恥ずかしさから照れ笑いを浮かべ談笑していた英治の元に、無表情の水島が近寄ってきて、有無を言わさず腕を捕まえて、校舎の裏に連れてこられた。

「何なんだよ、離せよ、痛いだろう!!」
「―――休めといったはずです」
 低く、地を這ったような声。
 その声に英治は、ビクッと肩をゆらした。

「なのに、そんな状態で出勤してきて、他の男に抱きかかえられて無防備に笑うなんて・・・。貴方、今、どんなに妖しい瞳をしてるかしらないんですか。どれだけ貴方を狙ってる奴等がいるのか・・・」
 爆発したように一気に捲したてる水島に、呆気にとられて、英治は水島をマジマジと見つめた。

「―――ほら、その目。その瞳。それが、みんなを狂わせる・・・」

 そういうと水島は、英治の顔を両手で挟み込み、英治の唇を自分のそれで塞いだ。


「ん・・・んっ・・・!!」
 抗議するようにあげる英治の声は、水島には全く無視される。
 食いしばった英治の歯列を、水島の舌は丁寧に刺激する。
 焦れったくわき上がってくる快感に、少しゆるんだ歯列の隙間をついて、水島の舌は英治の口腔内に入ってきた。
「やぁ・・・!ぁ・・・・!」
 逃げまどう英治の舌を強引にからめ取り、歯裏を舌先でつつくと、英治の躰の力が一気に抜けた。
 水島を押しのけようとしていた英治の腕は、自分の躰を支えるために、その肩にしがみつく。
 震える英治の睫を見ながら、水島は満足そうに唇を離し、ペロッと舌で唇を撫でた。

 くそっ
 クソッ―――
 また、いいように遊ばれた!!

 水島のキスは巧みで、途中で英治の思考能力を奪ってしまう。
 それよりも、何よりもショックだったのが
 力一杯抵抗したのに、水島はビクともしなかったことだ。
 そんな自分の力が弱いとは思ったことはない。
 ケンカだってそれなりにしてきたし、力負けした事なんてなかった。
 なのに・・・・
 なのに・・・・
 水島には全くかなわなかったのだ。
 昨日は縛られてたからと、言い訳が出来たが、今日のことは出来ない。
 それが、英治にはショックだった・・・。

「貴方は、俺のモノだ。」
 水島は無表情でつぶやいた。
「何、勝手な事をいってやがる!!」
 英治は思いっきり拳を振り上げる。
 よけると思っていた。
 だが、英治の意に反して、水島は英治の拳をよけなかった。

 カッシャーン

 水島の眼鏡が飛ぶ。
 そして、向けられた獰猛な瞳に、英治は固った。

「貴方は、俺のモノだ。他のヤツに笑顔を向けるなんて、許さない。」

 もう一度そう告げると、水島は眼鏡を拾ってその場を去った。



 ズルズルッと英治はその場に座り込む。

 なんなんだよ、俺のモノって。
 オレはお前の人形なのかよ・・・。

 そう言いたかった。
 だが、あの瞳を向けられて何も云えなくなってしまった。
 あの瞳・・・
 ケンカをしていたときの、アキラと重なった。
 アキラはいつも、何かに飢えて、あんな瞳をしていた。


 ああ・・・・・・・。
 アキラ
 アキラ
 アキラはどうしてるんだろうか・・・・・。

  
続く・・・

次の更新予定は・・・カウンター7000を越えた日です。たぶん(笑)

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