SHINE−夏・演劇祭ラプソディー
後編




「滅びやがれ、両家ともぉぉ―――!!
ロミオを庇って刺された胸を押さえながら、呪詛のコトバを吐き死に行くマーキューシオ。
交錯する、心と心。
思いと想い。
親友マーキューシオを殺された怒りに、ロミオはジュリエットの従兄弟であるティボルトを追う。
交えられる剣と剣。
怒りと挑発・・・・。
ティボルトを刺し殺し、我に返るロミオ。
愛するジュリエットの、我が妻ジュリエットの、従兄弟を殺してしまった。
真っ赤な手を見て、ショックと絶望に呆然と立ちつくすロミオ―――
ロミオの従兄弟であるベンヴォーリオは、速く逃げろとロミオをせかす。
今度この街で両家の争いを起こしたモノは、即刻死刑だと先日大公の達しあったばかりなのだ。
ロミオは混乱のままにその場から逃げ出した。

そんなロミオの身に起こったことを知らないジュリエットは、愛する夫が初めて自分の寝屋訪れるのをウットリと待つ。
愛する、愛する我が夫ロミオ―――
はやく、ここへ来て
―――?
私の胸に・・・・。

大公の前で訴える親たち
「ティボルトを殺したロミオに死を―――!!」
「ティボルトはロミオの親友を殺したのだ―――ロミオは親友の敵を討っただけなのです!!
両家の親たちの願いを前に、冷静な声で審判を下す大公
「ロミオはこの街から追放する。戻ってきた時点で死刑―――」
両家の親から、絶望の嘆きが漏れた・・・。


真っ赤な手を見つめ―――
混乱しながら走るロミオは空に向かって叫んだ。

「俺は運命の慰み者だ―――!!!


◇◇◇


1幕終了の合図に、真剣に見入っていた観客達は一息つく。

「涼―――、何ボッとしてるの?
舞台から視線を外さない涼に、雅也は声をかける。
―――10回」
「はぁ?」
「智紀の野郎・・・遙の唇に・・・頬に・・・・手に・・・・10回はキスした―――
ブツブツと智紀に呪詛の言葉を吐く涼に、雅也は盛大な溜息を吐いた。
「劇なんだから、仕方ないだろう?」
「でもっ!!!!許せね――――――
目がマジである。
雅也は肩をすくめつつ
「別に、舌入れてるわけじゃないんだから。唇合わせるくらい演技なんだしイイだろ―――?」
「ばっか野郎!!!舌入れてたら、今からでも雅也殺しに行く―――」
遙のとろけるような甘い舌。
他のヤツなんかに―――。
涼がまた違う世界に入ってしまったことを知った雅也は、自分の失言に天を仰ぐ。

「涼、行くよ―――」
雅也は時計を確認し、自分の世界に入り込んでいる涼に声をかけた。
「何処に・・・」
今頃
―――。
休憩時間はまだあるが、今から何処に行こうというのだ。
涼の疑問に雅也はニッコリ笑って
「ひ・み・つ―――」
と、答えた。



◇◇◇


2幕は逃げ込んだ神父の元で、自分の処分を聞いて自殺を図ろうとするロミオ場面から始まる。
説得する神父。
そこへ、ジュリエットの乳母がやってくる。
「我が妻ジュリエットは―――」
ジュリエットは泣き暮らしている旨をロミオに伝える乳母。
神父は進言する
「今夜ジュリエット慰めるのだ。そして、夜明けと共にこの街から去れ。追々私が上手く大公様に進言して、お前をこの街に戻れるようにするから
―――」

ジュリエットはさめざめと自室で泣いていた―――。

―――うわっ、緊張してきたな・・・。
遙の心臓はバクバク云っていた。

籐華の演劇祭は、男子校の弊害か伝統的にラブシーンは濃厚なのである。
これからする初夜のシーンでは、結構客に魅せるラブシーンを行わなければならない。
このシーンの練習だけは、型合わせだけでキッチリとはしなかった。
遙も智紀のことが嫌いなのではないが、やはり・・・自分には好きな涼がいる身で何度も濃厚なラブシーンの練習を智紀相手でするのは辛かったし
智紀も、『何度もすると涼に殺されるから・・・本番だけで』と云っていたのだ。

―――えっと、最初抱きついて・・・・。

がタッ。
「ジュリエット―――
ロミオが窓から入ってくる

ジュリエットはロミオの旨に飛び込む。
「人殺し人殺し人殺し―――ああぁ、ロミオ」
―――ジュリエット」

香りが
この、コロンの香りは
―――

思わず遙はハッと顔を上げ自分を抱きしめている人間の顔を覗き込む。
目と目が合う

「りょ―――

遙の驚きの声はロミオの唇に飲み込まれ

「んっ―――ぁ」

マイク越しに漏れる遙の喘ぎ声に、観客達は生唾を飲んだ。


―――!!!
何故・・・・・
何故、涼がロミオの衣装を着て
何故、涼が俺にキスしてる
―――?


ロミオ――涼――は、ジュリエット――遙――の甘い舌を堪能し、その唇を首筋に移す。
「あぁ―――」
頸動脈に歯を立てられ、舞台と云うことも忘れ遙は思わず快感の声を上げた。
涼は遙を抱きかかえ、後方にあるベットにゆっくりと横たえる。

「ジュリエット、愛してる―――
―――遙、愛してる。

「ロミオ・・・・」
―――涼。

2人は見つめ合い、ジュリエットはロミオの首に自分の腕を巻き付ける。
ロミオはジュリエットの方に躰を倒しながら、その甘い唇をもう一度吸った。

―――暗転。

舞台セットの変わる音と共に、涼のコロンの匂いは遙から離れていく。
そして、最近嗅ぎ慣れた清涼な智紀のコロンの匂いに包まれた。


◇◇◇


「アレは、何だったんだよ―――」
「だから、俺だっていきなり雅也に連れてかれてさぁ」

演劇祭は無事終了し、遙の喘ぎ声に惑わされた審査員達と観客のおかげで、
Cクラスの「ロミオとジュリエット」が優勝した。

遙は「何日ぶりに逢うと思ってるの?今日はずっと遙といるからな!」と宣言した涼に負け、自分のアパートに彼を上げていた。

「けど・・・けど・・・あんな所で舌なんか入れなくても―――」
遙の声はどんどんフェードアウトしていく。
「だって、久しぶりに遙に触れたんだぜ―――?我慢きくかよ」
「そっ、そのせいで・・・僕はあんな声を―――」

今思い出しても、ハズカシイ。
思わず出てしまった、声。
あの後会う人会う人に「スゲー、キたぜ」「思わず股間押さえたモン、俺」とか散々揶揄われるし・・・・
表彰の時、理事長にまで「凄い演技でした」などと含みのある言葉を頂戴してしまったのだ。

もう・・・明日から学校行けない―――。


俯いてしまった遙に、涼はジワジワと距離を詰めながら問いかける。
「じゃあ、遙はあのシーン智紀としてもよかったの?」
「そ、それは―――」
「俺以外のヤツと、濃厚なラブシーンをするの?キスして喘ぐの?」
「りょ・・・涼以外のヤツに、あんなに感じるワケないだろ!!!」
思わず叫んだ遙の大胆な告白に、涼は嬉しさあまり自分の顔が口元が情けなく緩むのを感じた。
遙は遙で、自分の云ったことに盛大に顔を染め俯いた。

「だ―――!!!もう我慢できねぇぇぇぇぇ!!!」
涼はいきなり大声で叫ぶと、遙に抱きついた。
「りょ、涼?」
「遙―――遙が欲しい。遙を抱きたい。遙とヤリたい!!」
「涼!」
涼の爆弾発言に、遙は今までにないほどに顔を躰中を染める。
「遙は、俺とヤルの嫌?」
「そ・・・そんな事は・・・・」
涼の勢いに飲み込まれながら、遙は思わず答える。
「好きだ、愛してる。もう俺おかしくなりそう。遙としたい。ヤろう?ねっ、ヤらせて―――
そう云いながらも、固まってしまった遙を抱きベットに下ろすと、シャツのボタンを外していく。
「ちょ、ちょっと待て
―――涼!」
その手を掴むと、涼は激しく遙の唇を貪ってきた。
「んっ、んんっ―――!」
涼の手は遙のズボンにかかり、ベルトを外される。

「涼―――!!」
バシッ
遙は涼の頬を思いっきり殴った。


「遙・・・・・・」
「涼、コレなら強姦と変わらない。俺を強姦する気か―――?」
「違っ―――」
涼の瞳は遙の言葉にショックで見開かれ―――

―――なんか、僕が悪者みたいじゃないか・・・・・

シュンと俯いてしまった涼を見て、遙は軽く溜息を吐いた。
別に、涼に抱かれる
――自分が涼を抱くのは想像つかないので――のが、嫌なワケじゃない。
好きな人に抱かれる。何時かそうなることは漠然と判っていた。
欲望もある―――。
だが、決心が付いていなかったし・・・こんな風にされるのは、嫌だった。

「涼
―――」
ビクッっと涼の肩が揺れる。
甘えたで、傲慢で、我が儘で、そして僕を心から愛してくれる
可愛い可愛い、涼。
心から愛しい・・・・・。

「痛いのは、嫌だよ―――」
「遙
―――!!」
「ちゃんと、優しくしてくれなきゃ、嫌だよ
―――」
僕は初めてなんだから・・・。

頬を染め、俯きながら目だけ見上げてくる遙の表情に、涼は胸がいっぱいになる。
「遙、遙―――愛してる・・・愛してる・・・・・・!!
「涼―――僕も・・・」
そして、自分に体重をあずけてきた涼を遙は優しく抱きしめた。
◇◇◇


「涼、その満足そうな顔は何だ―――」
「聞くなよ、智紀。遙さんが今日休みなんだから・・・・何があったかは一目瞭然だろ?」
締まりのない――油断するとニヤニヤとしてしまう――口を押さえながら、涼は友人達を睨み付ける。

「下世話だぞ、お前ら―――」
「なーに云ってるんだよ。つい昨日まで「遙がいないと・・・」なんて泣き言ばっかり僕に云ってたくせに・・・。」
「遙さんに無茶したんじゃないだろうな
ぁ?お前けっこう禁欲時間長かったモンな―――」
涼が遙に一目惚れしたのが4月。
そして、今は9月。
その間、女の“お”の字も近付けてなかった。
毎日のように女を抱いていた涼を知ってる智紀としては、この友人の禁欲生活には拍手を送りたいぐらいなのだが―――。
「どうやって、遙さんを落としたんだよ?昨日オレらと別れたとき、遙さんカンカンだったじゃないか
―――?」
怒りながら帰っていく遙を、涼が必死に追いかけたのだ。
「いつもの涼の手だろ?クサイ言葉で口説き落としたんじゃないの?」
雅也が肩をすくめながら推測する。

―――泣き落とした」

「へっ?」
「泣き落とし―――」

「遙が欲しくてたまらなくなって・・・・・『ヤらせて』ってさ」
照れながらボソボソッと答えた涼に、雅也と智紀は視線を交わし・・・・

―――爆笑した。





「遙にメシを作ってやるんだ―――俺の所為で動けないからなぁ」と、結局のろけながら学校を早退していく友人を見送りながら―――

「ホント、あいつ変わったな―――」
「うん、アレが涼とは思えないね・・・」
「だが、オレは今の涼の方が好きだぜ」
「僕もだよ―――」

雅也と智紀は今までとは別人のような彼に、今まで以上に魅せられているのを感じた。


終わり

甘!!
何?この砂を吐きそうな、甘々さは!!
というわけで、無事夏編終わりです。
え?
2人のHシーンを期待した??
ふっふっふ。
SHINEだけは、水貴の最後の良心(?)最後の壁!!なのです。
これだけは、ライトに行くつもりですので―――あまり露骨な描写(爆)はしない(予定)です。
がっかりしたそこの貴方・・・。
もう、ダーメダーメのダメダメ人間ですよ?(爆)

というわけで、次は「SHINE−秋・親友と恋人−」をお待ち下さい。

***ロミジュリについて***
舞台という事で、原作ではなく、以前水貴が見に行った舞台とか映画とかを参考にして書いてます。
というわけで、原作と台詞が違う!!とかあっても目を瞑っておいて下さいませ。

    

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