昼休み。
籐華学園裏庭―――。
「どうする?」
苛ついたように、一人の男が仲間達に云い募った。
そこにいた、6人の男は顔を見合わせる。
「どうって・・・・・・なぁ」
「まともに、あいつにかかっていったって、ヤられるだけだぜ。」
「馬鹿みたいに、強いらしいからな」
いい案が浮かばない男達は、黙りこくった。
「何でもいい、あいつを傷つけられるモノなら―――」
吸っていた煙草を、壁に投げつけ、男はギラギラした目を仲間に向けた。
その時、男のうちの一人が「あっ」と声を上げた。
「なぁ・・・・例のヤツ、使えるんじゃないか―――?」
「ああ、桜庭だったっけ?あいつが妙に入れ込んでるヤツ」
「見たけど、いまいち、パッとしないヤツだよな―――」
「なんでもいい。そいつを、使おうぜ」
「ああ、その桜庭ってヤツを痛めつければ、少しはあいつを傷つける事が出来るだろう」
「どうする」
男達の視線は、一人の男に向かう。
今まで黙っていた、リーダー格のその男は、煙草に火をつけ、ニヤリと顔を歪めた。
「よし―――東雲の名前を使ってココへ呼び出すんだ」
影でその話を聞いていた2人は震えていた―――。
「どうしよう・・・」
「どうしたら―――」
遙は、由宇と別れ涼と共に屋上へ行くと、心配した智紀と雅也に繰り返し「よかった−」を連発された。
それだけ、自分は心配されていたんだ―――と、遙は不謹慎だが嬉しくなった。
涼は、どうして由宇がそのようなマネをしたのか、全て話し、その場に手をついて遙に謝った。
「やめろよ、涼。顔を上げろよ―――」
困惑した遙に、智紀と雅也は、冷たい声をかける。
「いいんですよ、先輩」
「そうっすよ。清水先輩のことに関しては、涼が悪い―――」
「『使えるから』って、切っておかないから、こういう事になるんだ。」
涼は、2人の友人から、辛辣な言葉を浴びせかけられたが、すべて事実だったので何も言い返せないまま俯いた。
「涼―――」
「・・・・・・・」
「顔を上げて」
「・・・遙」
「僕は、キミに怒ってもいないし、恨んでもイナイ。キミにそんな態度をされると、どうすればいいか判らなくて困る―――」
顔を上げた涼は、困った顔をして微笑んでる遙に―――グッときた。
「遙―――!!!」
ガバッ
起きあがった涼は、遙にしがみつく。
「うわっ、涼〜」
「おお、ケダモノ―――」
「本能のままに動いてるね―――」
そのまま涼は、遙の邪魔なメガネを取っ払い、顔中にキスを落としていた。
「くすぐったいってば・・・涼、やめろよ・・・2人が見てるし―――」
遙はジタバタするが、如何せん体格の差と体力の差はどうすることも出来ず、そのまま押さえ込まれている。
「あんなの、関係ない。石だと思っとけ」
チュッチュッ
遙の首筋に顔を埋めながら、涼は囁くように云った。
「オレ達は石ですから、気にしないで下さい―――」
智紀はニコニコ手を振っている。
エスカレートした涼の唇はどんどん下へ向かっていく―――
「涼・・・・・・もう、やめ―――あぁっ」
鎖骨を吸われた時、遙があげた艶っぽい声に、涼は一瞬理性を失いそうにになる。
「うわ、今思いっきり下半身にキた―――」
「ちょっと、今のはクルねぇ―――」
外野も勝手なことを言っていた。
遙は自分の甘い声に、羞恥で真っ赤になった―――。
―――誰か、コイツらを止めてくれ・・・・!!
泣きそうになりながら、本気でそう祈ったとき、天の救いのように予鈴がなった。
「お、俺は教室行くからな・・・!」
いつの間にか外されたネクタイと、くつろげられた胸元を慌てて直しつつ、蹌踉け,躓きながら、遙はその場を走り去った。
「惜しかったね〜」
「実に惜しかったなぁ」
「あそこでマジに押し倒してたら、本当にケダモノの称号をあげたのに」
「―――俺・・・マジで押し倒すつもりだった。」
途中までは冗談だったが、あんな声聞かされたら―――。
「ケダモノだね・・・・・・」
「まじ、ケダモノだぁ―――」
「遙の声マジでやばかった―――」と、頭を抱え蹲まってしまった涼に、一緒になってちゃかしていた友人2人は、溜息を吐いた―――。
授業の始まる前の教室。
桜庭遙の席は空席のまま。
それを気にする、2人の生徒―――。
「桜庭―――、戻ってこないなぁ」
「もしかしてホントに、あの時の・・・・・・」
「どうする―――」
「どうしようか―――」
オレ達に、桜庭を助けられるとは思えない―――。
「し、東雲に云ったら・・・」
「そうだ、東雲に云おう―――!!」
東雲なら―――。
涼は教室に戻って、午後からの授業が始まるのをのんびりと待っていた。
「東雲―――客。」
クラスメイトの声に涼は顔を上げる。
扉の所に知らない顔の人間が2人立っていた―――。
―――誰だ?
家の立場上、昔から一度話した事のある人間の顔を覚える自信はある。
すなわち、初めて言葉を交わす人間だ。
「何―――?」
教室の前まで行くと、少し怯えた顔をした2人の前にたった。
「し、東雲。桜庭といつ別れた―――?」
「―――?」
「昼休み、いつもと一緒で、屋上で昼ご飯食べてたんだよな―――?」
「ああ、それが・・・・・?」
「で、いつ・・・」
「予鈴がなったとき、あいつは教室に戻ったが―――」
涼の声を聞いて、2人は泣きそうな顔になった。
「やっぱ、やばいよ―――」
「どうしよう―――」
2人の様子がおかしな事に、涼はイヤな予感がした。
「遙・・・・・・遙がどうかしたのか―――」
クソッ―――
もし、あいつに何かあったら、そいつら全員ぶっ殺してやる!!!
涼は、自分を訪ねてきた2人から、裏庭で聞いた会話を聞かされて、教室を飛び出した。
全力疾走で、裏庭に向かう―――。
遙
遙・・・
遙―――。
初めて出来た、大切な存在。
それが、自分の所為で傷つくなんて―――。
教えられた場所にたどり着いた、涼の目に飛び込んできたのは―――。
割れたメガネ。
殴られた痕―――。
引き裂かれたシャツ―――。
数人の男に、押さえつけられて唇を噛み締めながら、黙って涙を流す・・・・・・・・。
―――遙の姿だった。
「貴様ら――――――」
涼は唸り声を上げると、男達に飛びかかっていった。
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