| 永遠の感情 ーエピローグー |
この事件は結局、数人の関係者の胸の内に秘められる事となった。 藤岡や英治は、事の所在をハッキリとさせるべきだと強く云ったのだが、一樹が止めたのだ。 「彼らの気持ち―――判ってしまう所が、オレにもあるから・・・」 被害者である肝心の一樹が止めたことで、藤岡も、英治も、その他の人間も、それ以上何も云うことは出来なかった。 藤岡は、美雪の家庭教師を辞め 大津は、科学部を早期引退した。 「君に謝るつもりはない―――」 翌日、学校ですれ違ったとき、大津は一樹に云い放った。 「やり方は、卑怯だったのは認める。だけど、僕の君に対する気持ちは変わらない。」 ―――藤岡先輩には似合わないと云う・・・ 一樹は、ギラギラと睨み付けてくる大津の瞳を真正面から受けとめる。 「オレは別に、大津にも、他の誰にも認めて貰わなくても構わない。零自身が認めてくれれば、それでいい―――」 一樹の言葉に、大津は唇をクッと噛み締めた。 「男―――男同士など―――」 一樹の堂々と、ある意味開き直った言葉を聞いた大津の肩が、フルフルと震えだした。 「じゃあ、大津の零に対しての感情は、何なんだ?」 憧れ。 羨望。 そして、執着。 「―――言葉では、表せることなど出来るモノではない。お前みたいな汚らわしい感情などではない!」 一樹は、怒りの為顔を真っ赤にして怒鳴る大津を見ながら、彼を哀れに思ってしまった。 大津の感情は、恋だ。 大津を冷静な目で見れば見るほど、そう取ることが出来る。 なのに、彼は決して藤岡に対しての“恋心”を認めることは出来ないのだろう。 彼の高すぎるプライドが邪魔するのか。 彼の高すぎる常識が拒み続けるのか。 ―――あそこまで執着するほどの恋心を認めることが出来ないなんて。 だが、一樹には大津に何も云えることはなかった。 なぜなら、その恋の彼は勝者であり、大津は敗者であるのだから。 「僕が科学部を辞めたのだって、藤岡先輩に迷惑をかけてしまったからだ。決して君にしたことが原因じゃないんだ。」 大津はそう一樹に言い捨てると、その場を去っていった。 そして、一樹の中にはむなしさだけが残っていた。
「あぅ・・・んっ」 一樹は、必死に青いシーツを握りしめた。 沸き上がる悦楽に、手放してしまいそうな自我を保つためだ。 「一樹・・・」 藤岡の低い声も、掠れている。 それさえも、一樹を煽った。 学生達の住む、ワンルームマンション。 藤岡の部屋。 青いシーツのセミダブルのベット。 「はっ・・・ダメだよ・・・零・・・」 一時期は、もうこうして藤岡に抱かれることは、もうナイのだと思った。 このベットにこうして二人で愛を確かめ合うことは・・・・もうナイのだと。 「どうして?一樹、ココが好きなんだろう?ほら・・・こんなに―――」 藤岡の手は、高ぶって藤岡の腹筋を押していた一樹自身に添えられる。 そっと先端に触れてみると、先走りですでに濡れていたソコから、ピチャリ・・・と淫靡な音が漏れた。 「や・・・あっ・・・あ・・・」 敏感な部分を藤岡の親指で擦られ、一樹の目の前は真っ白にスパークする。 普段より異状に感じていた一樹は、それだけで耐えていたモノを放ってしまった。 そして放ってしまったと同時に、ギュッと収縮した内壁は、藤岡自身を搾り取るように蠢く。 「くぅっ・・・」 耐えようと藤岡は唇を噛み締めたが、誘い込むような一樹の内部の動きに、耐えられなくなり自分の熱を解放したのだった。
横に倒れ込んだ藤岡の胸元に、一樹はそっとすり寄る。 藤岡は、寄せられた一樹の背を抱き寄せ、優しく髪を梳いた。 一樹も、藤岡の背に手を回す。 藤岡の背にまわされた指先の感触に、一樹はギュッと胸が締め付けられた。 ―――滑らかだったはずの藤岡の背中の肌は、ひきつった火傷の痕がいくつも残されていた。 「そんな顔、するな」 一樹の表情を見た藤岡は、優しく一樹の手をたぐり寄せ、ソコにあるうっすらと残った傷跡にキスをした。 「一樹がアレを頭から被っていた事を想像すると、ゾッとする。俺の背中なんて一樹しか見ないんだから、一樹が嫌じゃなかったら俺は全然気にならない。」 「零は零だよっ!傷があったって関係ない」 慌てて必死に訴える一樹を藤岡は抱き寄せ、頬にキスを落とす。 「一樹の手の傷も、躰中の傷も全て―――ちゃんと手を切りきれていなかった、本気で相手せず軽くかわしていた、管理不足だった―――俺の責任だ。」 美夏も美雪も大津も、一樹に危害を加えた原因は―――藤岡だった。 その事実は、藤岡の心に深い影を落としていた。 大人の付き合いだと思っていた美夏との関係の、お互いの認識の違い。 子供のミーハーだと思っていた美雪の、自己中心的な思い。 大勢いる中の後輩の一人だと思っていた大津の、異様なまでの藤岡に対する執着。 すべてそつなくこなし、他人を操ってきたと思っていた藤岡の奢りでもあった。 そして、その奢りが、一番大切な人間を苦しめる結果となってしまったのだ。 「零、オレは全然大丈夫なんだよ」 黙ってしまった藤岡に、一樹は微笑んだ。 「今回のことは、ケンカなんだ。零を賭けたケンカ。零を手に入れたオレへ売られたケンカだったんだよ。だから、オレも負けるわけにはいかなかったんだ。負けそうになった時もあったけど、最後は頑張っただろう?零を取られるわけにはいかないから。」 力強く、藤岡に笑いかける一樹。 この笑顔に、藤岡は惹かれたのだ。 決して女々しくはない、力強い彼の笑顔に――― 「一樹・・・」 溢れ出る想い。 次々と生まれてくる、愛しい気持ち。 「零は、オレを守ってくれるけど、オレも零を守るんだよ。零を傷つけようとする人間は、オレは許さないし。零を奪おうとする人間には、オレは立ち向かっていく。」 「愛している、一樹。」 「零―――」 彼を好きになって良かった、と藤岡は思った。 本当の自分を理解してくれようとする彼。 完璧な自分を求めない彼。 ありのままの自分を愛してくれる彼。 自分を守ってくれるといってくれる彼。 信頼して背中を預けることの出来る彼。 一樹に出会う事が出来て、よかった―――
藤岡の瞳から流れた一筋の涙を、一樹は呆然と見つめていた。 彼の流す涙は、あまりにも美しく神聖すぎて――― 彼の流す涙を、初めて見た。 全てに置いて完璧であろうとする彼が、きっと初めて他人に見せたモノ ―――弱さの象徴。 愛しさが、溢れてくる。 最初であったとき、彼は完璧な人間だと思っていた。 そして、完璧な人間であった。 そんな彼に、惹かれたのも事実。 だけど、端々から滲み出る“彼らしさ”、もっと惹かれたのはいつ頃だろう。 完璧な彼も好きだけど、人間らしい彼の方が、もっと好きだった。 こうしてプライドの高い彼が、自分の弱さを見せてくれると云う事。 それは―――二人の距離がもっともっと縮まった事。 自分を信頼し、背中を任せてくれたと云うこと。 涙が出そうなくらい、嬉しい。 好き。 愛している。 この気持ちは、生まれてしまえばずっと永遠にそれが続いていくモノだと思っていた。 ハッピーエンドの後は、エンドレスにその幸せが続いていくモノだと。 だけど――― 好き。 愛している。 毎日。 毎夜。 毎時。 毎分。 毎秒。 息を付く間に、瞬きする瞬間に―――それは、次々と生まれてくる。 そして生まれ続ける“好き”と“愛してる”は次々と連なっていき、ソレが永遠と続いていくのだ。 それが、永遠の感情――― 「零、愛してるよ・・・」 |
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EndlessLover・・・ |
| ・・・・・クサイ。 いや、いいんですけど。 いろいろ言い訳してますので 後書き・言い訳・オマケ話を続いて読んでいただけると・・・。 |