| 永遠の感情 ーact・5ー |
| 藤岡は、今までの人生の中でも1・2を争う不機嫌だった。 久しぶりの一樹とのデート。 楽しい時間を過ごし、夕食を共に食べて甘い夜を迎えようとしていたその時・・・。 携帯電話が鳴ったのだ。 もちろん、相手は美夏。 『零。今から食事に付き合って欲しいの。』 「・・・断る。」 『今、一樹君と一緒にいるんですものねぇ』 ―――何故、知っているんだ。 藤岡は周囲に目線を配った。 だが、それらしい人物や視線を感じることはない。 「知っているなら、邪魔をするな。」 『零。私、フランス料理のコースを食べたいの』 「婚約者と食べればいいだろう・・・」 『・・・無粋なことを云う人ね。』 不機嫌になった相手の声に、藤岡も不機嫌な声で答える。 「お互い様じゃないのか?もう切るぞ」 『一樹君の、携帯の番号って・・・090−○○××−****よね?』 「・・・・・!!」 美夏から発せられたナンバー。 それは、一樹の携帯のナンバーだった。 ―――何故・・・・知っているんだ・・・。 『来て・・・くれるわよね?零』 「・・・・・・・・・何処だ」 『シノ・インターナショナルホテルの最上階』 そこには、日本で有数のフランス料理店が入っていた。 「俺は、スーツを着ていない」 『コチラで用意するわ。今どこにいるの?車をやるから・・・』 結局、美夏の思いのままに・・・一樹とはその場で別れ、美夏のディナーをお供する事となった。 だが、その間中藤岡の頭の中には1つの疑問がずっと回っていた。 ―――何故・・・あれほどまでに、一樹の個人情報が漏れているんだ・・・?!
「―――藤岡」 振り返ると、ソコには――― 「見崎先輩、何か用ですか」 不機嫌と苛立ちを交えた声で、藤岡は見崎の声に答えた。 「この前のいってた仕事の件、いつあいてる?」 藤岡の不機嫌さなどお構いなしに、見崎は自分の用件を述べる。 「急ですね。」 藤岡の言葉に、見崎は苦笑した。 「ああ、ウチはいつも急なんだ。何処かの誰かサンは、“思いついたら即・行動”の典型的な人だから」 何処かの誰かサン=友永の事を指してるのは、藤岡には明白だった。 「そうして部だけでモノ足らず、会社もあの人が振り回してるんですか」 相変わらずの傍若無人ぶりに、藤岡はあきれる他なかった。 科学部時代。 いいかげん、友永は部を振り回してくれた。 そのおかげで科学部の地位名誉は飛躍的に上がったのだが、その時期の部のメンバー達は、全員疲れ果てたのも事実である。 「判りました。開いてる日をメモっておきますよ。手が借りたくなったら携帯ならして下さい。」 藤岡はそういうと、頭の中にあるスケジュールを思い出しながらメモに自分のあいている日を書いていく。 「ギャラは頂きますよ」 メモを受け取りながら、見崎は大きく肯いた。 「もちろん。ウチは歩合制だがな―――」 「そちらの方が、やりがいがあります。」 「お前らしいな」 見崎はひとしきり笑うと、ふと真面目な表情で藤岡をジッと見た。 「昨日、見たぞ。シノ・インターナショナルで・・・」 すこし云い淀みながら、見崎は話を振ってきた。 「―――」 「あの、女性は・・・この前にコンパの時の人だよな?」 「―――」 藤岡は、何も答えない。 見崎は溜息を吐いて、核心をついた。 「付き合ってるのか?」 「俺が付き合っている人間は、一人です」 「・・・・・・」 「他に用がないのなら、俺は急ぎますので―――」 背を向けて立ち去ろうとする藤岡に、見崎は慌てて声を投げた。 「一樹君を泣かせるのは、許さないぞ―――」 その言葉に、藤岡は振り返る。 ゾッとするような鋭い視線で、見崎を見据えた。 「・・・ありえません」 「藤岡・・・」 「元FC会長サマのコトバ。有り難く受け取っておきますよ」 そのまま、藤岡はその場を立ち去った。 もう一度かけられた声に振り向くことなく―――
『一樹君を泣かせるのは、許さないぞ―――』だと? その為に、今動いてるのだ。 一樹を傷つけない。 一樹を泣かせない。 その為に――― だが、実際はどうだ。 俺は一樹を悲しませることばかりしてるではないか。 あの女の云われるがままに―――。 これ以上の、屈辱は・・・ ―――まだ、ハヤイ。 理性が、藤岡を踏み止める。 マダだ。 証拠は、まだそろっていない。 耐えろ。 耐えなくては。 一樹に、手出しさせないためにも・・・。 普段思うがままに行動をとっている藤岡には、久しぶりのストレスである。 苛立ちをぶつけるため、壁を見据え拳をギュッと握った時――― 胸ポケットの携帯電話が震えだした。 藤岡はソレを取り出すと、耳元へ当てる。 「はい―――――――――。」 思いがけない相手の声に、藤岡は目を見開いた。 「お前は・・・水島か?」
眠れない夜を過ごした一樹は、顔色の優れないまま学校に登校した。 やはり、投げかけられている視線にビクビクしながらの登校だった。 ―――嫌だな。こんなに自分が弱かったなんて・・・。 席に着きながら、大きく溜息を吐いた。 零に相談してみようか・・・。 だが、その考えを一樹は即座に否定する。 零だって忙しいのに・・・いちいちこんな事で心配をかけれない。 対等にいたいのだ。 護られるだけの存在では、きっといつか飽きられてしまう。 信頼して背中を預けてくれるような関係。 ―――オレだって・・・オレだって零を護りたい。 だから 強く・・・強くならなくては。
何事もなく放課後を迎え、一樹は自分が委員長を務める図書室へと向かった。 途中、人気のない廊下で話し込んでいる元副会長の水島亨と社会科の麻生英治の隣を通る。 二人に会釈しながら、一樹の心の中は羨ましい気持ちでイッパイになった。 二人の関係は、去年の秋頃藤岡から聞いた。 驚いたと共に、一樹の中ではお互い男という世間一般では認められていない相手との恋愛をしている仲間として、心強い人間達と位置づけられ、感じていた。 もう一度、二人を盗み見る。 何かを云っている水島に対し、英治がやんわりと受け答え・・・そして声を立てずに二人で笑い合う。 一樹の目から見た二人は、お互いを尊重し合い理解し合っている大人のカップルだった。 ―――護られているだけの、自分とは違う・・・。 一樹はどうしてもソレを感じてしまう。 それは、同じ歳の水島が大人びている所為もあるのだろうが・・・。 オレは、零の事を何も知らないような気がする。 零の悩み。 零の苦しみ。 本当はソレを聞いて、一緒に悩んで苦しみたい。 零の悩みはオレの悩みだし。 零の苦しみは、オレの苦しみなのだから。 だが、零は全て先回りして自分で解決してしまうか、オレに判らないように隠してしまう。 愛されているのは判っている。 だが・・・ だが、それだけは足りないような気がするのだ。 ―――一樹の悩みは尽きなかった。
ふと、鞄の中から聞き慣れたメロディーラインが流れ出す。 ―――誰だ・・・? 鞄から携帯電話を取り出し、一樹は通話ボタンを押した。 妙な雑音。 「もしもし―――」 小さな・・・声。 「誰?」 聞き取れた・・・コトバ。 『――――――ズキ』 「誰っ?!」 知っている。 この声は、知っている。 頭の中で、警報が鳴り続ける。 ―――アイシテル 一樹は無意識に首を何度も振る。 雑音と共に、今度こそハッキリとした言葉が聞き取れた。 『――――――カ・・・ズキ』 全身に震えが走る。 途切れ途切れのコトバ。 自分の名前を呼ぶ、声。 ―――一樹、愛してる。 幾度もなく聞いた、コトバ。 それは・・・ 「ひぃっ―――」 ―――一樹も俺を愛してるよな。 俺だけを、愛してるな。 愛してる。 愛してる。 愛してる。 ―――オレモ、アイシテルヨ・・・ 「ひ・・・・・・・・・・・・・ろし・・・・・・・・・・」 一樹の目の前は真っ白になり・・・・・・・・そして、そのまま気を失った。 |
| あ・・・・・・・(汗) 蒼キャラ出演のような事になってきました。 一樹君、虐められまくり。 痛いですねぇ〜〜〜、話。 もてる男を彼氏に持つと、コレくらいは虐められるのか?(苦笑) ホントは、出したくないキャラもいたんですが・・・ね。 話の進行上・・・仕方なく。 水島亨&麻生英治を知らないあなた!(ネタバレだから、居ないことを祈っていますが) 『視線で殺して、魂で縛れ!』を読んで欲しいなぁ・・・(宣伝) |