| 永遠の感情 ーact・4ー |
暗闇に浮かび上がる白い煙。 藤岡は、躰中に染みついた香水の匂いをすべて落とすためシャワーを浴びた後、ベットの端に座り煙草を吹かしていた。 ベットの中には、満足そうな表情で眠る女が一人。 ―――面白いモノだ。こんな感情でも、女はちゃんと抱けるのだから。 いままでも、愛して女を抱いてきたわけではない。 はっきりいって性欲処理の為だけだった。 だが、羽田野一樹という最愛の人間ができたのに、いつもよりは時間がかかったが激しく奉仕してきた美夏に、キチンと反応した自分。 ―――男はケダモノだな。 藤岡は声もなく笑った。 バイブレーションにしていた携帯電話がベットの端で震える。 藤岡は手を伸ばすと、落ち着いた声で出た。 「ああ、さっき留守電に入れたとおりだ。」 「わかったよ。あんたの条件を呑む。だから、今回のことは協力してくれ」 「よし。取引は成立だ。まずはさっき頼んでたことから調べてくれ。至急。」 「わかってるって。明日帰りそっちに寄るよ。ああ。じゃあ、またな。」 通話ボタンを切り、藤岡は隣へ視線を移す。 ベットには、今だ夢の中の美夏がいる。 藤岡はサッと立ち上がり、かけてあった服を全て着ると、無言でその部屋を出た。 エレベーターを待ちながら、もう一度携帯電話を取り出し、短縮機能で電話をかける。 「久しぶりだな、藤岡だ。今、時間あるか?ああ。少しお前達に頼みたいことがあるんだ―――」
藤岡から連絡がなかった次の日。 すぐに、彼からは連絡が入り、日曜日映画を見に行く約束ができて一樹は機嫌がよかった。 何の変わりもない学校生活が終わり、家へと足を向けたが少し足取りは遅い。 今日は、茉莉耶さんの来る日だ―――。 彼女の積極的なアプローチに、一樹は始終振り回されていた。 女の人の扱いなど知らない一樹を、彼女はからかっているのだろうか? ―――はぁ。今日もからかわれるのかなぁ。 自宅の玄関を開けると、目に入ってくるピンヒールの派手なミュール。 茉莉耶がもう来てるのだ。
「そう。その公式を入れればいいのよ。」 茉莉耶の教え方は上手く、判りやすい。 家庭教師としては、合格だった。 茉莉耶の指が、するりと一樹の首筋を撫でる。 ―――こうして、さり気なくセクハラをする以外は・・・。 毎回毎回、茉莉耶は一樹の頭、頬、首筋、胸元まで触ったり撫でたりする。 そのたび、慣れない一樹は心臓が壊れそうなくらいドキドキするのだ。 ―――疲れる。 茉莉耶が帰った後は、いつも疲れ果てる一樹であった。 「一樹君。今度の日曜遊びに行かない?」 「え?」 突然の申し出にキョトンとした一樹に、茉莉耶はニッコリと笑って顔を近付けてくる。 「せっかく仲良くなれたんだから。私一樹君とデートしたいの。ね?いいでしょ?」 否とは云わせない口調。 彼女は、このような誘いを今まで断られたことはなかったのだろう。 だが・・・。 「スイマセン。日曜日はちょっと約束が・・・。」 「もしかしてっ、デート?」 うそをつけない一樹は、頬を染める。 「ふーん、デートなんだ。彼女は、可愛い?綺麗?年上かしら?」 何も答えない一樹に、茉莉耶は質問を繰り返す。 「ま、いいわ。その彼女と飽きたら、いつでも私を誘って。一樹君のためなら、スケジュール絶対空けるから」 約束よ? と、無理矢理一樹の小指に自分の小指を絡ませ、「指切りげんまん」と茉莉耶は一方的な約束をしていったのだった。
「やっぱ、前評判通り面白かったな」 エンディングテーマとスクリーンの下から流れるキャストを見ながら、一樹は上機嫌で自分の隣に座っている恋人を見た。 日曜日。 約束通り2人は、以前から一樹が見たがっていたSF映画を見に来ていた。 「これから、どこに行く?」 嬉しそうな一樹の表情を見ながら、藤岡は一樹にしか見せない優しい表情で彼に問うた。 「んー。零と居れるならどこでもいいけど・・・」 嬉しいことを云う恋人の唇に、藤岡は自然に自分のそれを重ねる。 「零っ!こ・・・こんな所で」 真っ赤になった一樹に、藤岡は面白そうな顔で 「大丈夫だよ。まだ真っ暗だし、ほとんどの人間はエンディングロールを見ずに出ていってしまった。」 だから、もう一度―――。 近付いてきた唇を、一樹は今度は素直に受けた。
結局、お台場にでも行って海でも見ようか。という事になり、2人はユリカモメに乗り込んだ。 席に座らず、ドアにもたれ2人で景色を見ながら話し込んでいた時 「センセイ―――藤岡センセイ」 振り返るとそこには・・・ 「美雪ちゃん・・・?」 「やっぱりセンセイだ〜。こんな所で会うなんて・・・」 藤岡の家庭教師先の生徒奥山美雪が、連れの女の子2人とコチラに近付いてきた。 藤岡は内心ヤレヤレ、と思いつつ 「一樹。この子は家庭教師先の生徒さんで、奥山美雪ちゃん」 展開にイマイチついて行ってない一樹に、藤岡は聞かせるように紹介する。 「美雪ちゃん。彼は―――」 「知ってます。羽田野一樹さん・・・ですよね?」 美雪は一樹の顔を覗き込むように云った。 「そう・・・だけど、どうして―――?」 オレのこと知ってるんだろう、という顔をした一樹に 「藤岡センセイは有名だけど、羽田野さんも有名人なんですよ?人気あるんです、近隣の学校では」 ね―――。と、美雪が後ろの2人に話を振ると2人は赤くした顔で何度も肯いた。 「センセイ用事あるから今日遊べないって云ってたけど、羽田野さんとのお出かけだったんだ?」 「ああ―――」 藤岡は先日、家庭教師に行ったときに「日曜日一緒にお出かけしてっ」という美雪の頼みを断ったことを思い出した。 「ねっ、センセイ。今からお台場行くの?美雪達も今から行くから一緒しようよ」 ねだる美雪は、世間一般の男どもから見ると、放っておけない可愛さだった。 だが、いい加減女の子達にそう云う態度を取られ慣れている藤岡には、鬱陶しいモノしかなく――― 藤岡の隣で、微妙に表情を強ばらせた一樹の方が、藤岡には気になる存在だった。 「悪いね、俺達は今からお台場に行くんじゃないんだよ。それに遊びに行くわけでもないんだ」 藤岡は、誰の目から見ても魅惑的な顔を作り彼女たちに微笑んで、丁度着いた駅で一樹を連れて降りた。 「零、お台場に行くんじゃなかったっけ?」 キョトン、とした顔の一樹に、藤岡は悠然と微笑んで 「2人だけの時間を、邪魔されたくないだろう?」と、一樹を赤面させる台詞を平然と吐いたのだった。
週明け。 授業も終わり、一樹は自宅への道のりを一人で歩いていた。 ―――昨日楽しかったな。 久しぶりに会えた藤岡は、相変わらず優しく綺麗だった。 夕食を藤岡の家で食べようかと話していた時、急に藤岡の携帯が鳴り「急用が出来た」と、藤岡と別れるまでは。 ―――仕方ないよな。零だって大学とかの付き合いあるんだし・・・いつまでもオレが独占できるワケじゃない。 落ち込みつつある自分の気持ちを、明るい気持ちで一樹は振り払った。 ―――ゾクッ 一樹は、サッとその場で振り向いた。 ―――誰もいない・・・でも。 絶対に誰かがいた。そして自分を見ていた。 過去に自分の身に起こった事件以来、こういう視線には敏感になっていた。 「うっ」 思わずこみ上げてきたモノに、一樹は口元を押さえた。 自宅までの急ぎ足で帰る。 玄関で靴を脱ぎ捨て、一樹は洗面所で全てを吐いた。 どうやら昼食はほぼ消化されてたらしく、胃液しか出てこない。 ―――嫌だな。もう、忘れたと思ってたのに。 思い浮かぶのは、かつての恋人の狂気の顔。 一樹は、口を濯いでタオルで拭うと、母親のいるリビングへと向かった。 「一樹、手紙届いてたわよ?」 テレビを見ながら振り向いた母親は、テーブルの上に置いてある封筒を指さした。 「サンキュ」 封筒には、宛先もなく切手も貼っていない。 一樹は少し変に思いながら、封筒の端を破った。 「―――っ」 チクリとした痛み。 ブックリと、指先に浮き上がってくる紅い体液。 一樹は、おずおずと封筒を見てみると、縫い針がセロハンテープで貼ってあった。 要するに、封筒を破ると刺さる仕組みになっていたらしい。 ―――誰が、こんな……。 封筒の中から、手紙を取り出す。 ゴクリッ 一樹が、意を決して見た手紙の内容は――― 『藤岡零に、近付くな』
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| さ、やっと事件が・・・。 ・・・・・・・ ・・・あれ? 昼ドラじゃなかったっけ?確か。 どうやら、『○曜サスペンス劇場』のノリになってきました(笑) あはははっ。 いままでは、プロローグみたいなモノだったみたい。 今から、ようやく動き出すって感じかな。 藤岡は、相変わらず女の敵みたいな事ほざいてるし・・・ コレでファンは減ったかしらん?うふふっ。 |