| 永遠の感情 ーact・3ー |
「久しぶりね」 「ああ―――」 藤岡と美夏はそうそうにコンパから抜け出し、2人で静かなホテルのバーに来ていた。 「いつ以来かしら?確か貴方に一方的に『別れる』って云われた時以来だから・・・去年の7月かしらね」 「―――」 美夏は、一樹と付き合い始めるまで藤岡が付き合っていた彼女の一人である。 後を引かない割り切れる付き合いのできる人間を選んではいたが、藤岡は過去“来る者拒まず去る者追わず”の生活をしていた。 美夏は「梅華を卒業したら、すぐ婚約者と結婚なの。だから、それまでは楽しむつもりよ」 と彼女自身も割り切った付き合いの望んでいたので、藤岡との関係は非常にうまくいっていた。 藤岡が“唯一最愛の人”一樹と出会い、美夏を含む女性達と手を切ったときも一番あっさりと受け入れてくれ、すんなり別れたのだった。 「今更、何のようだ?昔話をするためにいちいち2人だけになったんじゃないんだろう?」 なかなか本題に入ろうとしない美夏に、藤岡は渋々話を振る。 「流石ね―――じゃあ、率直に云うわ。また私と付き合いましょう、零。」 ニコリと笑う美夏を見て、藤岡は露骨に眉をひそめる。 ある程度そう云われることを予想していたが、いくつか疑問も残る――― 「美夏。お前・・・婚約者との結婚は?」 「ああ、それね。私がごねて大学卒業するまで間って貰うことにしたの。だって、あんな面白みのない男と結婚するのなんて、なるべく先延ばしにしたいじゃない?というわけで、後4年の猶予が出来たワケ―――」 美夏はそう云いながら、普通の男なら一瞬で落ちてしまいそうなほど魅力的な笑みを浮かべ、カウンターに乗せていた藤岡の手に、自分の手を乗せてきた。 「ね、だから付き合いましょう―――?」 「―――断る」 藤岡は美夏の手をさり気なく払いのけ、そのままその手で前髪をかき上げた。 しかし美夏は悠然と微笑むと、自分のセカンドバックに藤岡に払いのけられた手を伸ばした。 そして、1枚の写真が藤岡の前に提示される。 「可愛い子よね・・・羽田野一樹君―――」 「・・・・・・」 「さすがよね、イイ趣味してるわ―――」 「・・・何が望みだ」 藤岡は低い絞り出すような声を呟いた。 その言葉に美夏はフフッっと笑いを漏らす。 「云ったでしょう?後4年間遊びたいの。心も躰もね?貴方と別れた後もそれなりに遊んだけど、貴方以上に躰の相性が合う人は居なかったの―――云ってる意味、判るわよね?」 「―――」 「別に一樹君と別れろって云ってるわけじゃないのよ?私が欲しいときに付き合ってって云ってるだけ。別にイイでしょう?それぐらい・・・」 「断る。一樹を裏切る気もないし、一樹以外を抱く気もない」 キッパリと断る藤岡に、美夏は少し驚いた顔をした。 「藤岡零の言葉とは思えないわね。私と付き合ってた頃でも、常時4〜5人は他の女もいたくせに・・・。でも、そんな言葉を聞いたからといって私が諦めるとでも?」 美夏はそう云いきると、セカンドバックから携帯電話を取り出し、何処かへかけ出した。 しばらく相手と話をし、携帯を耳元へあてながら、藤岡の方へ向き直る。 「零。一樹君の部屋のカーテンって、深い緑色なのね―――」 「っ!!」 「部屋の電気はまだついてるそうよ・・・?勉強かしら?勉強机は窓際にあるしね―――」 美夏の言葉に、藤岡の顔に動揺と緊張の色が走る――― 「美夏、一樹に何かしたら許さない」 藤岡の言葉に、美夏は携帯を切ると、見つめ返す。 「貴方次第よ、零―――。私の条件を呑んでくれるなら、ね。」 「―――少し、考えさせてくれ」 「ダメよ。少しでも貴方にスキを与えたら、噛み返されるのはわかってるもの。伊達に零との付き合いは長くないのよ、私」 美夏の言葉に藤岡は唇を噛む。 確かに伊達に付き合いは長くない。行動を読まれるほどに――― 「さ、行きましょう?部屋は取ってあるの。対抗策を考え出される前に、既成事実を作ってしまわなくっちゃね」 美夏はカードキーを藤岡の前でヒラヒラと振る。 「貴方に選択権はないの、零。弱みを作ってしまうなんて、馬鹿ね?でも、作ったのならそれを利用しない手はないモノねぇ・・・」 弱み 確かに弱みだろう。 大事なモノなど自分以外なかった頃は、このように脅され揺すられることなど起こるわけはなかった。 だが、大切なのだ。 傷つけるわけにはいかない。 それが、自分の責任なら特に――― 誓ったのだ。 護ると。 全身全霊で護ると――― 藤岡は無言で立ち上がると、美夏の後を追った。 ―――ゴメン、一樹。
あぁ、今日1日ずっと腰が痛かったよ・・・。 一樹は帰り道、痛む腰をさすりながらコッソリと溜息を吐いた。 昨日初めて藤岡の新居に訪れ、は思い出すのもハズカシイくらい2人で乱れた。 真新しいシーツの上で。 シャワーを浴びながら。 料理を作りながら。 藤岡は際限なく一樹を求め、一樹も藤岡の求めに全て答えた。 昨日の零は、何だか凄かったな・・・ もう動けない・・・と一樹がベットに沈んでしまい、横で優しく背中を撫でてくれる藤岡に思わず「どうしたの?今日は」きいてしまったくらいに。 藤岡は「しばらく触れられなかったから・・・飢えてたんだろう、きっと」と、一樹の耳朶を噛みながら答えてきた。 それだけで、熟れきっていた一樹の躰はあつくなって・・・ 「うわぁっ」 思わず思い出して、一樹は道ばたで真っ赤になる。 ―――何を考えてるんだ、オレは。こんな所でヨクジョウして・・・ 家の玄関を開けると、見たことのない若い女の人のミュールがあった。 誰か、客か・・・? 不思議に思いながら「ただいま」と靴を脱ぎ、自分の部屋に向かう。 すると途中にあるリビングから、一樹の母親が飛び出してきた。 「もう何してたの?一樹。先生が来て下さってるのよ」 「先生―――あぁ」 一樹も遂に受験生だ。 というわけで、週2回の予備校通いと週1回の家庭教師に来て貰うことになった。 最初は藤岡が全て面倒を見てくれると云うことになっていたのだが、藤岡は給料は受け取れないと拒否をするし、一樹自身もお金を間に挟む関係にはなりたくなかった。だけど、タダで見て貰うというのも藤岡に全面的に甘えている形になってしまうので、嫌だった。 というわけで、予備校と家庭教師を雇うことにしたのだった。 藤岡は、最後まで「そんなの全然気にしなくていいのに・・・」と云ってくれたのだが、一樹はけじめの無い付き合いはしたくなかった。 今は藤岡に一方的に甘やかされて、守られて・・・。 そんな関係ではいけないと、何処かでずっと思っていた。 対等に、付き合いたい。 相棒になりたい。 藤岡はいつも「一樹は俺が守る」と云ってくれるが、一樹も藤岡を「護り」たいのだ。 だから、いつまでも甘えてられない・・・。
家庭教師に来てくれたのはO女子大の理学部の女の人だった。 一樹の苦手な理系を見てくれることになった。 「うふふっ、私もラッキーだわ。こんな可愛い生徒さんを持てるなんて」 「せ、先生・・・」 「名前で呼んでっていってるでしょう?茉莉耶って。」 そう云うと、一樹の家庭教師――――は一樹の肩に手を這わせた。 一樹はドギマギして慌てて身をよじるが、茉莉耶は動じずそのまま首筋に指を這わした。 「せ!先生!!」 慌てて身を離し叫ぶ。 「な・ま・え・・・は?」 「ま・・・茉莉耶サン・・・」 「そう、OKよ」 時間が終わるまで、一樹は茉莉耶にドギマギされっぱなしだった。 中学校から男子校育ちの一樹は、あまり女の人に免疫がないのだ。 ―――な、なんだったんだろう・・・? 茉莉耶を見送りながら、一樹は心身共に疲れ果てていた。 耳元で囁かれたり、指を絡めてきたり、そのたび一樹は面白いくらい反応したのだった。 溜息を吐きながら自分の部屋に戻る。 机の上の携帯電話を見て、一樹は思わず微笑んだ。 ―――夜、電話するから・・・・。 今日の朝見送ってくれた藤岡の言葉を思い出す。 だが、その夜・・・ 一樹の携帯電話が鳴ることはなかった。
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| 藤岡さん、遂に浮気(爆) 過去の女&年上の女の登場に、連ドラのようになってきたのかな? W不倫・・・なんちゃって。 因みに、美夏<みか>茉莉耶<まりか>って読みます。 でもこの後、とある人とのチャット中の会話の影響で(貴方よ!マスター!!) 連ドラじゃなくて違う方向へ向かいそうになってます。 まあ、そっちの方が書きやすいし〜。 どっちにしても、2人の危機には違いない〜。 |