| 永遠の感情 ーact・2ー |
新学期が始まって数週間。 藤岡も、大学生活と一人暮らしに慣れつつあった。
やはり、家庭教師をもう少し増やすべきか・・・・・ 生活費のやりくりを考えながら、藤岡は少し溜息を吐いた。 生活費に関しては、親から援助して貰う気は全くなかった。 家賃、食費、光熱水費などを考えても、今している週3日の家庭教師だけでは食べていけない。 貯金を少しずつ食いつぶしていくのもいいが、何かの時のためになるべく置いておきたい気持ちがあった。 それとも、高校の時少し手伝っていた叔父の事務所へ行くか・・・・ 歓迎されるのは判っているが、こき使われるのは目に見えていた。 ―――せめて、土日は開けておきたい。 藤岡は「今までみたいに逢えなくなるのは判ってる。でも、なるべく逢えるようにしよう。放課後とかでもいいから・・・オレ、赤門の所まで逢いに行くし・・・」と、健気にも云ってくれる恋人の事を想って、もう一度溜息を吐いた。 「なんか、暗いな〜藤岡」 かけられた声に振り返った藤岡は、声の主を見て露骨に嫌な顔をした。 「なんだ?その顔は―――」 「そうだそうだ。センパイに向かって。」 ニコニコと近付いてくる男二人に、藤岡はイヤイヤ答えた。 「見ての通りですよ、友永先輩、見崎先輩―――」 「ほぉ、そんな生意気な口を利くのか。我が籐華学園科学部の後輩は。」 ニヤニヤと笑う友永に、心の底から『ついてない・・・』と藤岡は天を仰いだ。 藤岡が1年時の科学部部長・・・友永清 藤岡が2年時の科学部部長・・・見崎美鳥 どちらも、一筋縄ではいかない人物だった。
「いやー、探してたんだよ、お前を」 肩を抱いて、腕を掴んで連れてこられた学食。 「未だに連んでるんですか、先輩方は・・・」 藤岡の嫌みも、この二人には殆ど通じない。 「オレら会社作ってな、それでイロイロとしてるんだ。お前も参加しろよ」 突然話が飛ぶ。 友永の相変わらずな技だ。 藤岡もそれには慣れているので、素で切り返す。 「ギャラ次第ですね。確かに俺も、今金がいるから・・・」 「ソフト会社だ。オレ達二人じゃプログラマーが足りないんだ。」 「・・・それなら。別にいいですよ―――どんな内容ですか?」 「それについては、また事務所に招待するよ?」 3人で視線を合わし、ニヤリと笑いあった。 交渉成立である。 「今更、元科学部部長二人で連んで、何やってるんですか・・・ホントに」 「暇つぶしだよ、暇つぶし。T大で勉強するだけじゃ、脳が有り余っててな―――。友永先輩と久しぶりに喋ってて思いついたんだ。」 ―――なんですか、その脳が有り余るって 藤岡が暗に突っ込みを入れるが、関係なく会話は進む。 「で、藤岡。今日はコンパに行くぞ。」 「はぁ―――?」 またまた話が飛んだが、今度の飛び具合には藤岡も少々驚いた声を上げた。 「今日、O女子大コンパなんだ。」 O女子大とは、大変有名なお嬢様学校である。 「この前もしたんだけど、その時お前の名前が出てきてな〜。ほら、O女子って梅華女子出身者多いだろ?」 「で、オレらが科学部でお前は後輩だっていったら、絶対連れて来てって云われてさ」 「お断りです。」 キッパリと言い切って、藤岡はきびすを返す。 「ちょっ、待てって!!そんなあっさり」 「興味ないですから」 「お前と俺らの中だろ―――?」 「そんなもの知りません。」 この人達が組むと、ろくな事がないのだ・・・。 何度、高校1年の時煮え湯を飲まされただろう―――。 見崎もいい性格なのだが、友永はそれを上回る“いい性格”をしている。 科学部にスカウトして、最初断った藤岡をいつの間にか入部させていたのも、この友永である。 他にも、藤岡には思い出したくないことが・・・・・・ 「そんな口聞いていていいのか―――藤岡?」 ニヤニヤと友永が藤岡の肩を抱いてきた。 「お前のチャイナドレス―――、綺麗だったよな・・・」 友永がウットリとした口調で藤岡の耳元に囁く。 「知ってたか?学園祭実行委員の中に、崎守先輩もいるんだぜ?」 見崎も可笑しそうに、口を添えた。 科学部部長・友永と、生徒会長・崎守は―――藤岡の屈辱的な思い出『女装コンテスト』で藤岡にチャイナドレスを着せて、出場させた張本人の二人である。 「また、脅すんですか―――友永先輩」 藤岡は、地を這ったような声を出した。 「別に脅してないよな―――見崎」 飄々と答える友永に、見崎は少し引きつった笑みを浮かべる。 ―――友永の卒業後、藤岡の性格がより一層複雑怪奇にひねくれたのを見崎は知っているからである。 「判りました、行きましょう。でも、今日は家庭教師のバイトがあるから、駄目ですよ。」 「途中参加でもいいぜ。何時に終わる?」 「8時ですけど・・・」 「全然OKだ。ちょっと待て、何時も行ってる店の地図描いてやるから」 そう云うと、友永はメモ帳を取り出し、壁に置くとせっせと地図を描きだした。 「見崎先輩、あいかわらず友永先輩に振り回されてますね」 シラッと藤岡が見崎にいうと、見崎は苦笑する。 「まあ・・・ね。でも憎めないんだよ。ほっとけないしな―――」 確かに友永には憎めない何かがある。 女装させられた藤岡が、本気で復讐をしなかったくらいに。 そして、友永より1学年下の見崎はいつも友永に振り回されていた。 見崎も振り回されるのを、嫌がるようなことはなかったが・・・。 「しかし、美少年好きの見崎先輩が女子大生とコンパですか?」 藤岡の嫌みに、見崎は肩をすくめる 「―――あの人をほっておけないだろ?」 二人の視線は、嬉々として鼻歌を歌いながら地図を描いている友永に向けられる。 「早く襲ってしまえばいいでしょ?力も体格も見崎先輩の方が上なんだから。もう何年になるんですか。」 友永先輩に惚れて―――。 藤岡の口調に、見崎はフッと諦めた顔をした。 「んなこと出来るかよ・・・。あの人ベタベタのノーマルで、女好きなんだぞ。」 「だから、襲えって云ってるんです。縛って泣いて暴れてでも無理矢理ヤっちゃって、写真でも撮って脅せばいいんですよ」 「お前―――鬼だな。」 見崎は大きく溜息を吐いた。 「・・・・可哀想に・・・一樹君。こんなケダモノに泣かされて・・・」 「一樹にそんな事しませんよ。俺が一樹を啼かせるのはベットの上で快感に噎び啼いてるときだけです」 藤岡のサラッとした台詞に、見崎はギョッとした顔になる。 「云わせたのは、見崎先輩ですからね」 「お前・・・キャラ変わったな―――」 しみじみと呟いた見崎に向かって、藤岡は艶やかな笑みを返した。
「美雪ちゃん。お疲れさま―――」 「センセイ、教えるの面白いからあっという間に終わっちゃってつまんないわ」 「俺も美雪ちゃんは教えがいのある生徒だよ―――?」 藤岡の目の前で笑っている少女は、藤岡の家庭教師の生徒で梅華女子学園1年に在籍する奥山美雪だ。 藤岡が家庭教師をしている生徒は3人いて、他二人は男子中学生だったが美雪だけ女子高生だった。 藤岡がワリのいい時給で探していたところ知り合いに、急に外部受験をすると云いだした娘のためにいい家庭教師を捜していた奥山氏を紹介されたのだ。 女子高生ということで、少し迷ったのだが、背に腹は代えられないという事で、藤岡は請け負った。 救いだったのが、美雪が今時の高校生にしては格好は大人しく素直で、すぐ妹のように藤岡に懐いてくれた事。 そして、藤岡が女子高生を受け持つことで1番警戒していた、あからさまに云い寄ってくるという事がない事だった。 「センセイ、今日も夜ご飯食べて行ってくれるよね?」 「ゴメン。今日はこの後用事が入ってるんだ」 「え―――やだぁ。美雪楽しみにしてたのにぃ」 美雪の部屋を出て、玄関に向かう間も美雪は藤岡の腕にじゃれついて駄々をこねた。 本気で困っていた藤岡に、美雪の母親が助け船を出す。 「美雪ちゃん、そんな我が儘云ってたら、センセイ来週から来てくれないわよ?」 「それはもっと嫌・・・・・・」 「ゴメンネ、美雪ちゃん。また来週」 ニッコリ笑って、藤岡は美雪の頭を撫でで奥山家を出た。 出た途端、今まで笑みを作っていた藤岡の口元がキュッと締まる。 ―――仕事だから、我が儘を云う美雪がどれだけ鬱陶しくても、いくらでも笑ってやれるのだ。
「藤岡―――こっちこっち。」 手を振る友永を見つけ、藤岡はヤレヤレと近寄っていった。 キャー藤岡さん、と店内に黄色い声が飛ぶ。 座席に近付くと、友永や見崎を合わせ数名の男達とその3倍以上の女達がいた。 ―――どうやって・・・・・・早く帰るかだな。 友永の座席の方に近付くと、藤岡は積極的な女の子「ココに座って下さい」と手を引かれた。 瞬間数十人の女達の間に緊張が走る。 藤岡は丁寧にその子に断りを入れ、友永の隣の座席に着いた。 自分に向けられる獲物を狙う女達の目に、藤岡はいきなりウンザリ気味になるのだった。 「さってと、やっぱ紹介だよね―――。野郎からだよな?」 友永が仕切りだして、藤岡にとっては楽しくもない飲み会(コンパ)が始まった。 やがて藤岡の番が回ってきて、藤岡は軽く「藤岡零です。T大の1年生です」と紹介した。 それだけで、女達は色めき立つ―――。 友永と見崎以外の男達は興ざめした顔にをした。 そして、女達の紹介が始まると、それはもっと露骨になった。 女達は藤岡だけを見て、藤岡だけにアピールするのである。 拷問のような時間だ・・・・。 藤岡は内心、友永をかなり恨んだ。 ―――最後の女が立ち上がる。 藤岡もみんなと同じようにその人間に視線を向けて、目を見張った。 「高崎美夏です。O女子大文学部の1年生です―――久しぶりね、零。」 「―――美夏」 美夏の発言にその場にいた女達も男達も、えっ?と云う表情になり二人を交互に見た。 美夏は艶やかに微笑み、藤岡をジッと見つめ・・・ 藤岡はこの場に来たことを、心の底から後悔したのだった―――。
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| ふっふっふ・・・・ ちょっと、そう云う(?)雰囲気になってきました。 さて、彼女は・・・藤岡氏のなんなんでしょうか? 一樹君・・・全く出てきませんでしたね。 藤岡に散々啼かされて、腰を引きずって高校に行ってるんですよ。 たぶん、ね。 さて、この続きかけるのかなぁ水貴・・・(溜息) 藤岡の大学の事をちょっと修正を・・・ 知らない関東の大学のことを書くモンじゃないわ・・・(溜息) だれか、T大に通ってる人(知ってる人)・・・ 勉強不足の水貴に、貴方の大学の事を(教養%&専門課程の事や、単位の取り方とか・・・)教えて下さい。 たぶんこの後も・・・いるだろうから。 でもなるべく、書かないようにしようっと。うん。 |