「嫌!!嫌だっ零!!」
激しく抵抗する一樹に、藤岡は小さく舌打ちすると、一樹の両手首を一樹のネクタイで縛り上げた。
そして、ほとんど抵抗できなくなった一樹の服を全て剥いでいく。
「零っ―――」
信じられない行為に、一樹は非難と悲しみで藤岡を見た。
しかし、一樹のココロは藤岡には届かない。
「やめっ・・・!!」
「五月蠅い!」
そう云い放つと、藤岡は一樹の喉に噛みつくようにキスを何度も落とした。
まるで自分のモノを誇示するように、藤岡は一樹の躰中に赤い跡を残していく・・・。
「痛い・・・痛いよ・・・零」
愛撫とは云えない藤岡の行為に、一樹は弱々しく訴えた。
「あんな・・・あんな女の跡なんて・・・全部取り払ってやる―――」
低く唸るような藤岡の声に、一樹は初めて藤岡と自分の認識が少し違っていることを知るのだった。
「ちょ・・・待って!零―――ぁっ」
太股を抱え上げられ、内側に歯を立てられる。
躰中に走った快感に、一樹は思わず目を瞑った。
「れっ・・・んぁ―――」
吸われた内股から起こる微妙な快感に、一樹の躰が震える。
藤岡は無言で、何も潤していない一樹の蕾に人差し指を差し込んだ。
「痛っ・・・・零ッ―――」
流石に潤していない所に強引に指を入れられると、痛い。
一樹は涙目で藤岡を見るが、藤岡は一樹を見てはくれなかった。
それが、一樹には悲しかった―――
潤っていない所で指は思うように動かせなかったのか、藤岡は一度抜くとベットサイドに置いていた潤滑剤で手と一樹の蕾を潤しもう一度指を差し入れる。
「あっ―――」
躰の奥から沸き上がった快感に、一樹の背筋がグッと反った。
それを見て藤岡は早々に指を抜き、自分のベルトを外し、ジーンズをずらすと、既に高ぶっていた自身を一樹の蕾にあてがう。
「やっ・・・零―――」
臀部に藤岡の熱いモノを感じ、一樹は抵抗を諦め少し力を抜く。
慣れた感覚を思い出したのか、一樹の躰は快感を待って震え出した。
一樹の力が抜けたのを感じた藤岡は、自然に口元の右端をクッと上tげ―――
太股を抱えた腕に力を入れ、一樹の蕾を一気に貫いた。
「うくっ―――」
強引に突きいれられた痛みの為、噛んだ一樹の唇の端から血がにじんだ。
しかし、藤岡は容赦なく一樹を責め立てていく。
「いっ、あっ・・・ああっ・・・あっあっ・・・」
激しい揺さぶりに、噛み締める口の間から声が漏れる。
藤岡は一樹の両足を抱え上げ、一心に激しい抽送を繰り返す。
濡れた音と、激しい息遣い。
それはまるで獣の交わりのようで―――
「あぁっ・・・やぁっやっ・・・!!」
痛みを与える存在から快楽を与えるモノへと変わった藤岡自身を、一樹の内壁は誘い込むように蠢きだし始めた。
その内壁の動きは敏感に藤岡を感じられ、一樹は思わず甘い声を上げた。
躰中がうっすらと赤く染まり、目元が潤む。
半開きの口からは、もうとまることない甘い喘ぎ声が繰り返された。
一樹のコトなど関係ないように激情のまま動いていた藤岡が、その姿を見ながら唸るように吐き捨てた。
「あの女・・・こんな一樹を見たのか・・・俺の、俺だけの一樹を―――」
「れっ―――」
―――俺だけの一樹
甘美な響き。
一樹は一瞬、その言葉に陶酔した。
そして、その言葉から先ほど感じた藤岡の誤解を知る。
「違っ・・・零・・・茉莉耶サンとは―――」
「あの女の名前を、お前の口から聞きたくない・・・!!」
藤岡は一樹の口を塞ぐため、自分のを重ね合わせた。
「んっふっ・・・」
藤岡の差し込まれた舌を、一樹は今度は向かえ入れる。
藤岡の激しい行動。
激情。
燃えるような瞳。
それの意味が判ったから・・・。
甘く絡められる舌に、藤岡の激しさも収まってきた。
次第に、一樹の感じるよう・・・一樹が感じられるように、と藤岡は動き始め、
結局、いつもの二人の甘い語らいとなりつつあった。
「あっふ・・・い・・・」
「ココ?それとも、こっち?」
「あっ・・・ん。ソコ・・・イイ・・・零―――」
藤岡は、知り尽くした一樹の感じる所を焦れったく突き上げる。
「んっ、もっと・・・ねっ・・・・」
焦れた一樹に腰を押しつけられ、藤岡の口元に笑みが浮かんだ。
「もっと・・・?どうして欲しい?」
「奥・・・」
「ん?」
判っているくせに聞いてくる、藤岡のいつもの手だ。
少し憎らしく思いながら、いつもの藤岡に戻っていることに一樹は安堵感を覚えた。
「もっと、深く・・・強く・・・零が、欲しい」
上擦った声で必死に訴える一樹に、藤岡も躰中が熱くなった。
ジリジリと抽送を再開しながら、一樹自身に手を伸ばす。
「あっ・・・あっダメ・・・はっ、くぅぅ―――」
自身を握られた途端、一樹は悶え、一弾と高い啼き声を上げる。
藤岡はソコを刺激しつつ、最後の求愛をするため、一弾と激しく動き出した。
「ひっ、あっあっ・・・ふっ、はぁっ・・・ああぁ―――」
「くっ―――」
一樹は藤岡の手に自分のモノを解き放つ。
少し遅れて、躰の奥に熱い藤岡のモノが叩きつけられたのを感じた。
躰の上に崩れ落ちてきた藤岡を感じながら、一樹はゆっくりと目を閉じた。
―――ここは・・・?
一樹はうっすらと目を開けると、白い背中が見えた。
零・・・?
そうか・・・。
何があったのかを思い出し、一樹は小さく息を吐き出した。
藤岡はベットに腰をかけ煙草を吸っていた。
のぼる煙を、一樹もぼうっと目で追う。
「一樹・・・?」
身じろぎした一樹に気が付いた藤岡が、振り返る。
「零・・・」
伸ばした手を捕まれ、赤くなった手首に口付けられた。
「零・・・茉莉耶サンとのコト―――」
「聞きたくない」
「違う・・・誤解だ・・・オレは茉莉耶サンとは、そんな関係になっていない。」
「―――え?」
驚いた顔をする藤岡に、一樹は静かにあの日のことを語り始めた。
藤岡のアパートで朝帰りの女性とすれ違った一樹は、フラフラと駅に向かって歩いていた時に茉莉耶と出会った。
「どうしたの・・・?顔色悪いよ」
「いえ・・・オレは・・・」
すぐに俯いてしまう一樹に、茉莉耶は不思議そうな顔をした。
「どうしたの?そんな顔して・・・。失恋でもした?」
冗談ぽく云う彼女の言葉に、一樹は思わず反応してしまった。
「もしかして・・・地雷踏んだ?」
おずおずと一樹を見る茉莉耶をフォローする気力は、その時の一樹にはなかった。
しばらく続いた沈黙を破ったのは、茉莉耶だった。
「映画見に行こう!今日は遊ぼう!パーとねっ!!」
「えっ・・・?」
一樹には全くそう云う気力がなかったのだが、強引な茉莉耶に一樹は一日中引き連れられる羽目になった。
そして有無を云わさず・・・夜、連れてこられたラブホテル。
誘う茉莉耶に、心も躰も傷ついた一樹は身を任せそうになった。
だけど、出来なかった。
「私、魅力ない?」
ベットの上で、茉莉耶は悲しそうな顔をした。
「違う・・・茉莉耶サンが魅力がないんじゃなくて・・・オレ、あの人と意外寝たくないんだ。もう・・・ゴメン」
ゴメン、茉莉耶サン・・・と誤り続ける一樹を、茉莉耶は優しく朝まで撫でてくれた。
「・・・最後の最後まで、あいつにやられたワケか」
茉莉耶の挑戦的な笑みを思い出して、藤岡は溜息を吐いた。
「零・・・零は、あの人とは・・・」
一樹の不安そうな声に、藤岡は美夏の言葉を思い出す。
―――私『朝帰りの現場を見られるなんて、恥ずかしいわ―――』って、彼に云ったわ・・・
美夏、よけいなコトを・・・。
「零・・・」
不安そうな一樹の声に、藤岡は深く溜息を吐いた。
「隠さないで欲しい・・・。」
辛そうな声。
それを出させたのが、結局自分なのだと藤岡は反省する。
―――本当のことを、云うべき、だな。
美夏との仲をこれ以上誤解されるのは、一番不本意な形――あの二人の女の思い通り―――だからだ。
「お前を守ろうと思ってした行動だが、裏目に出たらしい。あの女は、お前と付き合う前に付き合っていた女の1人だ」
何となく判ってはいたが、藤岡の言葉に一樹は少なからずショックを受ける。
「もちろん、一樹と付き合い出す時に手を切っていたんだが・・・この前偶然・・・いや、きっとアレは必然だな。あの女・・・と会って、お前を盾にもう一度付き合えと脅された」
「なっ・・・」
思っても見ない言葉に、一樹は絶句する。
「あの女が云うように、俺にとってお前以上に大切なモノなどない。初めて持った弱みだ。だから、あの女を邪険に扱えなかった。あの女の弱みを握るまでは―――。あの日も、勝手にアパートの鍵を作られて、朝帰りした俺をあいつが待ちかまえていたところだった。流石に俺も怒って追い出した所を、一樹が見ていたわけだ。」
「そ・・・そんな―――」
「お前の家庭教師の茉莉耶も、あの女の仲間だったんだ。それでお前の情報を、逐一あの女は知って俺を脅していたんだが・・・。きっと、俺のアパートから落ち込んで帰る一樹を判っていたあの女が、茉莉耶を呼び出して一樹と接触させたんだな。」
「茉莉耶サンが・・・?」
「ああ、だがもう大丈夫だ。すべてケリは付けた」
一樹が気にすることはない。
ニコリと笑う藤岡に、一樹は「違う・・・」と訴えた。
「一樹・・・?」
「零、違うんだ。オレは・・・守って欲しいわけじゃない。」
不思議そうな顔をする藤岡に、一樹は必死に言い募った。
「オレ・・・守ってもらうだけの弱い人間じゃない。オレだって、零を守りたいんだ!零がピンチの時は・・・オレが―――」
呆然としている藤岡に、一樹はギュッと抱きつく。
「今回のことだって・・・云ってくれれば、きっと二人で解決できた。零だけが苦しむことはなかったんだ・・・だって、二人のことで脅されてるなら、二人の問題じゃないか」
一樹の言葉に、藤岡は冷水を浴びせかけられた気分になった。
一樹は大切で大切で大切で・・・
守って守って守り通さなければならない、存在。
いつの間にか、いや、最初に一樹の涙を見たときから、慟哭を見たときから決めつけていた。
だが、一樹も男。
自分が守って守って守り通すダケの女のような存在ではなく、一緒に肩を並べ共に戦ってくれる存在なのだ。
―――なんと愚かな。
なんという、思い上がり。
「そうだ・・・な。一樹は、俺の隣に立って、一緒に生きていく人間なんだから・・・」
藤岡のひとつひとつ呟くような声に、意味に、一樹のココロは歓喜で満たされていく。
「そうだよっ、オレだって、零を守れる―――」
「ああ―――」
お互いが、お互いを守る。
お互いが、お互いを支える。
それが、コレからの二人の関係となるのだから―――
「コレからは、お互いのコトを考えての隠し事でもするのはやめよう。二人で話し、二人で解決していけばいいのだから。」
「そうだよっ、零―――」
一樹の言葉に藤岡は肯き、そして一樹を見やった。
「じゃあ、一樹。その、躰中の痣。右足の捻挫。寝不足で出来たクマ。理由を話してくれるな―――?」
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