| プロローグ |
| カツンカツンカツン・・・・ 響き渡る、己の足音。 白く長い廊下。 ―――ここは? 忘れるわけがない。 月に一度、中学を卒業するまで訪れた場所。 ―――俺は、夢を見ている。 そう、コレは夢なのだ。 もう、あの時は過ぎてしまったのだから。 長い長い廊下の一番向こうの部屋。 揺れていた視界は、そこで止まる。 トントン 必ずノックする。 突然入ると、彼女は驚いてしまうから。 ―――忘れていた記憶。 忘れたいと心の奥で願っていた記憶。 そして彼と出会い、少しずつ取り戻している記憶。 それは、心が大丈夫だと認めたから? ゆっくりとその部屋に入る。 ベットは1つ。 横たわる、一人の女性。 その人は、いつものように目を閉じている。 その姿を見て、ホッと一息つき彼女に近付く。 白く白く、青白い肌。 細くて、折れてしまいそうな腕。 ―――そう、いつも俺は息を殺して、彼女をじっと見つめていた。 ゆっくりとあけられる瞼。 彼女の瞳に、自分がうつる。 俺を認めた彼女は、少し驚きそして美しい笑顔を俺に向ける………。 そして、呼ぶのだ――― 俺の顔を見て、俺ではない名を。 『――――――さん』
嫌な夢を見た。 遙が、誰かの手に連れて行かれる夢。 ―――俺は、“誰か”の事を、幼なじみのヤツのことだと思っていた。 だが。 遙を奪っていくのは、ヤツではなかった。 今まで、自分の直感や予感が外れたことは、一度もなかった。 では、誰が? 誰が、この俺から遙を奪おうというのだ? その答えは、出るわけもなく 俺は真実を知ることなく 遙は俺の前から姿を消した。 | ||
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