『水貴サン家の秘密の小部屋』1234記念(笑)
―――嫉妬と理性のBorderLine
「視線で殺して魂で縛れ!」番外編
前編




水島亨は、生徒会室からその光景を見た瞬間、大声で叫びすぐにでも飛び出していきたい衝動を、理性で必死に殺していた。



『誰にも触らせるな。誰も近寄せるなって、お前・・・・それは無理だよ。オレだって仮にも教師なんだか
ら、生徒とはそれなりに接触を持つことだってあるんだよ」

―――でも、英治・・・・

『オレが愛してるのは、お前だけだって、亨・・・。こんな事云わせんなよ』

―――だけど、英治・・・。


それはあまりにも過剰なスキンシップじゃないのか??


◇◇◇


今、水島の目の前で繰り広げられている光景―――
それは、水島の最愛の恋人“麻生英治”が、英治に妙に懐いてる生徒達(もちろん水島はチェック済み)と運動場の端で3on3をしていた。
飛び散る汗。
ぶつかり合う肌と肌。

―――それだけなら、水島も必死に耐えるハズだった。

夏が近付き、どんどんと気温が上がっている昨今。
3on3という激しいスポーツをすると、すぐに人間は体温も上がり息苦しくなってくるモノである。
例に漏れず、英治もすぐ息が上がりネクタイを取り、男子校の気軽さからカッターシャツも脱いでしまい、下着代わりで着ているTシャツ1枚になっているのだ。
汗をかき、シャツはべったりと英治の肌に張り付いている。
シャツは透き通り、英治の白い肌が・・・・

「あぁあぁ・・・」
水島は右手に持っているコーヒーカップをギュッと握りこんだ。

耐えろ。
この前、英治と約束したばかりじゃないか・・・・
学校では普通の生徒と教師の態度でいようって。
今、俺が飛び出していったら・・・、その約束を反故したことになる。



「亨。お前何カップ握りしめて震えてるんだよ?」
水島の出すオーラが怖くて、他の生徒会メンバーは誰も水島に近付くことができなかったのだが、唯一水島を恐れていない男が悠々と生徒会室に入ってきた。

「怜一、遅いぞ」
水島の不機嫌極まりない声が飛ぶ。
「ンな事云ったってな。何で昼休みまで・・・・って。なんか今日この部屋スゲー空気冷たいんだけど?」
「気のせいだ」
原因である水島は、あっさりと秋良の嫌みをはねのける。
「ん?おおー、麻生先生若いね〜バスケットやってるじゃん」
秋良は水島の顔を覗き込みニヤニヤと笑った。
「・・・・・」
水島は秋良を無言でにらみ返すと、すぐ英治達の方に視線を戻す。

その時―――
「あっ」
「あぁ・・・・・・・!!」

水島と秋良の目の前で、英治は、すでに制服のカッターシャツを脱いでいる生徒数人に促されるまま(当然会話は聞こえてこないが)、汗でびっしょりになったTシャツをおもむろに脱ぎ捨てたのだった。

「・・・亨?」
全身(もちろん嫉妬の為)震わせて自分を律している水島を、秋良は恐る恐るみた。
だが、水島の葛藤をあざ笑うかのように・・・
次の瞬間―――
その中の一人の生徒が、英治の背後からじゃれつくように抱きついたのだった。

ガッシャーン。
生徒会室の床に、コーヒーと割れたカップの破片が散らばった。

「・・・・・用事ができた。悪いが後はよろしく頼む」
地を這ったような水島の声が静かな生徒会室に響く。
割ったコーヒーカップの後かたづけもせずに、水島は窓際から出入り口に歩いていった。
「ちょっと待て、亨」
振り返った水島のキツイ視線を全く気にした様子もなく受けとめた秋良は、足を止めた水島に近付き2、3言囁いて右手に何かを渡し、肩を叩いた。


◇◆◇◆◇


視線の端に水島の姿を捕らえたとき、英治はしまったと思った。

昼休み。
生徒達に誘われるがまま、バスケをし、暑いからカッターシャツを脱いだ。

「センセーもTシャツ脱ぎなよ〜。暑いだろ?」
「別に男同士だし恥ずかしがることねーよな。オレらも脱いでるし〜それともセンセー脱いだら凄いのか?」
そう云われると、確かに―――男同士で恥ずかしがることナイよな、と英治は自分を納得させた。
暑くてシャツがベタベタ張り付いてるのも気持ち悪いし・・・・。

脳裏に水島のことがよぎったが、すぐに“別にTシャツを脱ぐくらいで、亨を気にする必要はない”と自分に云い聞かせ、汗で濡れきったTシャツも脱いだ。
結局バスケは英治が入ったチームが勝ち
「先生なかなかやるじゃん」
「やったぜ、センセー」
と云ってじゃれついてくる生徒に苦笑しながらも、そのままにさせていたのだが・・・・。

「あれ・・・水島?」
英治の後ろから抱きついていた生徒が、水島の存在に気付いた。
「悪いね、ちょっと麻生先生を貸してもらえるかな―――?」
その言葉に英治は方をビクッと震わせた。

怒ってる―――。
声が・・・とてつもなく・・・。

「えー。麻生先生に用ならここで済ませろよ〜。もう1試合するんだぜ、これから。」
「そうだよ、勝ち逃げなんてさせるかよ」
英治の敵チームだった生徒達が口を挟む。

―――だが

「生徒会の用事なんだよ。遊びじゃないんだ」
口調は丁寧だが、凍るような視線を向けられ、英治も含めソコにいたモノはみんな固まる。

「さ、先生。行きますよ?」
口元はニッコリ笑ってるが、目が笑ってない。

ううっ、い・・・行きたくない―――。

しかしその言葉を口にすることはできず、英治はすごすごとカッターシャツを着ると、水島の後に従った。


◇◇◇


「せ・・・生徒会室じゃなかったのか?」
水島が生徒会室とは反対の方向に歩いていくのに、英治は疑問の声を上げた。


―――が、黙殺される。

そして、右腕をギュッと痛いくらい捕まれ、どんどんと校舎の奥へと連れて行かれた。

―――保健室?

水島は、保健室の前で立ち止まり、ドアを開けた。
「さあ、入って下さい。」
「・・・誰かケガをしたのか?」
「入って下さい」
「うん・・・・・・・・・」
英治が保健室の中に入ると、水島は英治の背中を力一杯押した。
「うわっ」
不意打ちだったので、英治はそのまま前のめりに倒れ込む。
「ナニするんだよ!!」
あまりの仕打ちにムッとしながら振り返る。

ガチャ

だが水島は英治を見向きもせず、保健室のドアに鍵をかけた。

「・・・・・・・亨?」
英治はどんどん怖くなってきて、何も口を開かない水島に向かって恐る恐る声をかける。
すると水島はゆっくりと振り返って、メガネの奥から冷たい視線で英治を見下ろした。

「脱ぎなさい」
「―――え?」
「脱ぐんです、麻生先生。聞こえませんか?」
「あ、亨―――」
「脱げって云ってるだろう!!」
突然の怒鳴り声。
英治が水島と付き合いだして、いや、出会ってから聞いたこともない・・・声。
ワケが判らず英治は、震えながらおずおずとカッターシャツに手をかけた。

上目遣いで水島を見ながら、ベルトにも手をかける。
水島は無表情でジッと英治を見つめていた。

どうして・・・
どうして・・・こんな・・・。

自然に目に涙が浮かんでくるが、必死に耐える。
その姿を見た水島は皮肉な笑みを浮かべながら、ゆっくりと英治の背後へ回った。

「やめ・・・」
背後から脇腹を撫でられ、ゾクゾクッとし震える。
「生徒とのスキンシップですよ・・・。嫌がるはずありませんよね、先生?」

やはり・・・
やはり、先ほどのことを怒ってるのだ―――

「そ、そんなスキンシップ・・・」
「してないとでも云うんですか?裸で抱き合ってたじゃないですか」

そんな事してない―――
その叫びは水島の指に、舌に、飲み込まれる。

「あっ―――」
ペロリと、水島の舌が英治のうなじを這う。
与えられる快感になれてしまった躰は、すぐに反応した。
キュッと胸の突起物を摘まれ、ジィンとした痛みと躰の底から熱くなる悦楽が広がる。
「先生は、生徒とのスキンシップでこんなになっちゃうんだ―――?」
散々弄られ、赤く尖ってしまっ突起物を嘲笑した口調で揶揄われる。
「イヤラシイ先生ですね―――!!」
「うぁっ―――
腰を捕まれ、横にあったベットに俯せに押し倒される。
腰を抱えられ、高く上げた格好になった。
それは凄く羞恥心の煽る格好で―――

「や、いやだっ」

英治が起きあがろうとすると「―――動くな」と云う鋭い声が飛んだ。
それでも、恐怖が羞恥心を上回り起きあがろうとする。

バシッ
「なっ」
バシッバシッ
「痛っ・・・」
「動くなと云ったはずですよ・・・?先生」
その声は相変わらず、凍るように冷たかった。

ヒリヒリと叩かれた臀部が痛む。

―――オレ・・・亨に叩かれたのか・・・?
そのショックに小刻みに震えが来る。
無理矢理犯されていた頃だって、水島は英治の躰を大切に扱ってくれた。
こんなに・・・
理由も何も云わないで、理不尽に、手を挙げるなんて・・・。

英治の瞳から、無意識にポロリと涙がこぼれた。

「俺だって手を挙げたいわけじゃないんだよ、先生?でも、云うこと聞いてくれないとね・・・?」
残酷な口調。
「紅くなってるのも・・・そそるね」
そう云いながら、水島はうっすらと紅く染まった英治の双丘に手を伸ばした。

「綺麗なピンク色だよ・・・先生?」
そう云いながら、水島は英治の双丘を割り、顔を近付ける。
水島の熱い息が英治の蕾にかかった。

「くっ・・・あっ・・・・」
ピチャピチャ
静かな部屋に響く、イヤラシイ音。
英治はシーツを掴みながら必死に耐える。

こんなので
こんなので
感じたくない―――

だが、気持ちと反して、英治の躰はどんどん熱くなってくる。
躰の奥底から沸き上がる熱が“モノ足りない・・・”と英治に訴えかける。

「ヒクヒクしてるよ?先生・・・誘ってるの?」
クックックと忍び笑いを漏らしながら、水島は指を英治の蕾に差し込んだ。

「うぁ・・・くぅ―――」
水島は、乱暴に英治の中で指をかき回す。

痛みとそれを上回る快感。
無意識に出ていこうとする彼の指を締め付ける己の内壁。

こんな事をする彼に、腹が立ち・・・
憎くて・・・
それでも、愛しかった。

英治のココロの葛藤を知ってか知らずか、水島は英治自身に全く愛撫もせず、いつもなら止めどもなく繰り返されるキスさえもせず

一気に高ぶった己自身、を英治の蕾に突き入れた。

「うあぁぁぁぁぁ―――」


・・・・後編に続く



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