亨はドアを閉め。大きなため息を吐いた。
―――あんな風にするつもりはなかったのに。
気を失ってしまった恋人を、むさぼり尽くした。
「苦しい」と、彼は何度も俺に訴えていたのに。
飢えていた。
そう、彼に飢えていた。
触れられないことが、こんなに苦しいものだとは知らなかった。
彼に触れることで、俺は安心しようとしていたのかもしれない。
―――彼に愛されていると。
昨日の夜は、普通だったのに。
久しぶりに彼に触れて、彼を抱くことが出来て・・・ただ、ただ嬉しくて・・・.
なのに、今日の朝彼に触れた途端。
彼の吐息が俺の首筋にかかった途端。
彼の心臓の音が、この躰に伝わった途端。
何も見えなくなった。
彼しか見えなくなった。
己の欲望を彼の奥に穿ち、一つに繋がらないといられなくなった。
獣のように腰を動かし、気を失った彼の奥に全てを放ち、それでも・・・・それでも足りなくて。
気がついた時は、部屋は独特のニオイに包まれ、ベットは二人の放ったモノでどろどろで、そして彼は完全に意識を飛ばしていた。
亨は空を見上げ、もう一度溜息を吐いた。
彼のアパートを出て、コンビニに向かう。
これ以上、あの部屋にいたら彼をヤリ殺してしまいそうだったから。
太陽は真上まで昇っている。
―――英治を失ったら・・・
ふと頭に浮かび、ゾッとする。
数ヶ月触れることが出来なかっただけで、ああなってしまった自分。
自分の英治に対する依存度が、恐い。
きっと、英治は俺を失っても、生きていけるだろう。
だが、俺は・・・・・・
―――生きていけない。
いつか、この想いは己を・・・二人を滅ぼすかもしれない。
コンビニで軽く買い物をし、英治のアパートに戻る。
ドアを開けると、ベットの上に腰掛けている英治が目に入った。
「英治・・・・」
朝からの自分の非道な行動を思い出す。
彼の罵倒の言葉を待ち受け、思わず俯いた。
「おいで、亨―――」
彼の声は、優しいモノだった。
怒っていないと感じ、ホッと躰の力を抜く。
コンビニの袋を置き、そっと彼の隣に座った。
「なんて顔、してるんだ。」
「英治?」
「泣きそうな顔してる」
「なっ・・・」
クスクス笑う英治に反論するために彼を見返すと、頬をそっと両手で包まれる。
「不安にさせて、悪かったな」
「え・・・?」
「お前がずっと不安を抱えていたことは判っていたんだがな・・・。そろそろ大丈夫だと思っていたんだ。」
「えいじ・・・・」
英治は両手を首にまわすと、頬に唇を寄せた。
「いつになったら、お前の心の闇を解放できるんだろう。お前の不安を解き放つことができるんだろう。」
「・・・?」
英治の云うことの意味が分からない。
「愛しているよ、亨。俺からお前を離すことはないし、お前から去ることなど決してない―――。」
しばらくの間、英治は無言で俺を抱きしめ続けた。
食事後、「いい天気だし、散歩に行こう」という英治に連れられ、二人で近くの公園まで歩いた。
「躰・・・・・・大丈夫?」
朝、かなり無茶をさせたのだ。
英治の躰への負担は大きいはず。
「無理だったら、散歩に行こうなんて云わない」
微笑んだ彼に、思わず見とれた。
少し顔色の悪い彼は、なぜか扇情的で・・・・。
ぞくぞく、する。
頭の中に、響く。
欲しい。
彼が、欲しい。
今すぐに。
「えい、じ。」
彼の腕をつかんで、公園の端にある木の陰へ強引に連れて行く。
「ちょ、亨、なんだよ・・・」
慌てる彼の耳元に、フッと息を吹きかける。
ビクリと方を揺らした彼の耳朶を噛む。
「英治、欲しい。」
こんな所で。
しかも、真上には太陽が輝いている時間。
それでも、今すぐ。
「おい、待て!亨・・・」
慌てる、彼の声。
聞こえない。
聞かない。
「んっ・・・」
首筋に舌を這わせる。
紅い痕。
そう、自分が付けた所有の刻印。
「あ、あき・・・!」
強引に彼の躰をひっくり返す。
彼は、思わず木に手をついた。
背後から彼を抱きしめ、シャツの中に手を伸ばす。
胸の所で引っかかった突起物を軽く摘む。
「んっ・・・馬鹿・・・離せ。」
口調とは反対に、漏れる吐息は熱い。
「英治」
彼の下腹部にそっと片手を伸ばす。
ソコに触れると、彼の背が反り返った。
欲しい。
今。
すぐここで。
ベルトに手をかけ、強引にそのパンツを下着ごと降ろす。
ソコに来て、彼も俺の本気に気付いたのか、手をふりほどこうと暴れ出した。
「ふっ、ざけんなよ。亨!ココ、何処だと思っているんだ。」
「公園。」
彼の手を阻止し、直接彼のモノを握りこむ。
「ぅっ」
小さく呻いて、彼の抵抗が止まる。
素早く己の指を唾液で濡らすと、奥に息づいている彼の蕾にその指で触れた。
周りを焦れったく指で撫でて行く。
誘い込むようにひくつく蕾。
ヌプリと1本差し込むと、中の熱い襞は亨の指を嬉しそうに銜え込む。
「欲しそうだね。1本じゃ物足りない?」
「・・・・この、馬鹿っ!」
残りの2本も一気に突っ込む。
昨日の夜から犯し続けられているソコは、簡単にその指を呑み込んだ。
「大丈夫そうだね、挿れる、よ?」
「この・・・この・・・ケダモノが・・・・・・・!!!」
そう。
俺は獣だ。
英治だけに牙を剥く、獣。
こうして俺は青い空の元、英治の躰を貪り尽くしたのだった。
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