Under a blue sky



 亨はドアを閉め。大きなため息を吐いた。



 ―――あんな風にするつもりはなかったのに。

 気を失ってしまった恋人を、むさぼり尽くした。
 「苦しい」と、彼は何度も俺に訴えていたのに。

 飢えていた。
 そう、彼に飢えていた。
 触れられないことが、こんなに苦しいものだとは知らなかった。
 彼に触れることで、俺は安心しようとしていたのかもしれない。

―――彼に愛されていると。

 昨日の夜は、普通だったのに。
 久しぶりに彼に触れて、彼を抱くことが出来て・・・ただ、ただ嬉しくて・・・.

 なのに、今日の朝彼に触れた途端。
 彼の吐息が俺の首筋にかかった途端。
 彼の心臓の音が、この躰に伝わった途端。

 何も見えなくなった。
 彼しか見えなくなった。
 己の欲望を彼の奥に穿ち、一つに繋がらないといられなくなった。

 獣のように腰を動かし、気を失った彼の奥に全てを放ち、それでも・・・・それでも足りなくて。

 気がついた時は、部屋は独特のニオイに包まれ、ベットは二人の放ったモノでどろどろで、そして彼は完全に意識を飛ばしていた。



 亨は空を見上げ、もう一度溜息を吐いた。





 彼のアパートを出て、コンビニに向かう。
 これ以上、あの部屋にいたら彼をヤリ殺してしまいそうだったから。

 太陽は真上まで昇っている。
 
―――英治を失ったら・・・

 ふと頭に浮かび、ゾッとする。
 数ヶ月触れることが出来なかっただけで、ああなってしまった自分。
 自分の英治に対する依存度が、恐い。

 きっと、英治は俺を失っても、生きていけるだろう。
 だが、俺は・・・・・・

―――生きていけない。

 いつか、この想いは己を・・・二人を滅ぼすかもしれない。




◇◇◇




 コンビニで軽く買い物をし、英治のアパートに戻る。
 ドアを開けると、ベットの上に腰掛けている英治が目に入った。

 「英治・・・・」

 朝からの自分の非道な行動を思い出す。
 彼の罵倒の言葉を待ち受け、思わず俯いた。

 「おいで、亨―――」

 彼の声は、優しいモノだった。
 怒っていないと感じ、ホッと躰の力を抜く。
 コンビニの袋を置き、そっと彼の隣に座った。

 「なんて顔、してるんだ。」
 「英治?」
 「泣きそうな顔してる」
 「なっ・・・」

 クスクス笑う英治に反論するために彼を見返すと、頬をそっと両手で包まれる。

 「不安にさせて、悪かったな」
 「え・・・?」
 「お前がずっと不安を抱えていたことは判っていたんだがな・・・。そろそろ大丈夫だと思っていたんだ。」
 「えいじ・・・・」

 英治は両手を首にまわすと、頬に唇を寄せた。

 「いつになったら、お前の心の闇を解放できるんだろう。お前の不安を解き放つことができるんだろう。」
 「・・・?」
英治の云うことの意味が分からない。

 「愛しているよ、亨。俺からお前を離すことはないし、お前から去ることなど決してない―――。」

 しばらくの間、英治は無言で俺を抱きしめ続けた。






 食事後、「いい天気だし、散歩に行こう」という英治に連れられ、二人で近くの公園まで歩いた。

 「躰・・・・・・大丈夫?」
 朝、かなり無茶をさせたのだ。
 英治の躰への負担は大きいはず。

 「無理だったら、散歩に行こうなんて云わない」
 
 微笑んだ彼に、思わず見とれた。
 少し顔色の悪い彼は、なぜか扇情的で・・・・。

 ぞくぞく、する。
 頭の中に、響く。

 欲しい。
 彼が、欲しい。
 今すぐに。

 「えい、じ。」

 彼の腕をつかんで、公園の端にある木の陰へ強引に連れて行く。

 「ちょ、亨、なんだよ・・・」
 
 慌てる彼の耳元に、フッと息を吹きかける。
 ビクリと方を揺らした彼の耳朶を噛む。

 「英治、欲しい。」

 こんな所で。
 しかも、真上には太陽が輝いている時間。
 それでも、今すぐ。

 「おい、待て!亨・・・」

 慌てる、彼の声。
 聞こえない。
 聞かない。

 「んっ・・・」
 首筋に舌を這わせる。
 紅い痕。
 そう、自分が付けた所有の刻印。

 「あ、あき・・・!」

 強引に彼の躰をひっくり返す。
 彼は、思わず木に手をついた。

 背後から彼を抱きしめ、シャツの中に手を伸ばす。
 胸の所で引っかかった突起物を軽く摘む。

 「んっ・・・馬鹿・・・離せ。」
 口調とは反対に、漏れる吐息は熱い。

 「英治」
 
 彼の下腹部にそっと片手を伸ばす。

 ソコに触れると、彼の背が反り返った。

 欲しい。
 今。
 すぐここで。

 ベルトに手をかけ、強引にそのパンツを下着ごと降ろす。
 ソコに来て、彼も俺の本気に気付いたのか、手をふりほどこうと暴れ出した。

 「ふっ、ざけんなよ。亨!ココ、何処だと思っているんだ。」
 「公園。」

 彼の手を阻止し、直接彼のモノを握りこむ。

 「ぅっ」
 小さく呻いて、彼の抵抗が止まる。
 素早く己の指を唾液で濡らすと、奥に息づいている彼の蕾にその指で触れた。

 周りを焦れったく指で撫でて行く。
 誘い込むようにひくつく蕾。
 ヌプリと1本差し込むと、中の熱い襞は亨の指を嬉しそうに銜え込む。

 「欲しそうだね。1本じゃ物足りない?」
 「・・・・この、馬鹿っ!」

 残りの2本も一気に突っ込む。
 昨日の夜から犯し続けられているソコは、簡単にその指を呑み込んだ。

 「大丈夫そうだね、挿れる、よ?」
 「この・・・この・・・ケダモノが・・・・・・・!!!」

 そう。
 俺は獣だ。
 英治だけに牙を剥く、獣。


 こうして俺は青い空の元、英治の躰を貪り尽くしたのだった。



End

読んだらわかると思いますが、
In the inside of the room』の続きです。
『In〜』が英治バージョンならば、今回のは亨バージョン。
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