カーテン越しから洩れる明るい日差しに、英治はうっすらと目を開けた。
―――いい、天気だなぁ。
うん、と伸びをすると異物にぶつかる。
視線を上げると、ソコにはうっすらと髭の生えた顎がある。
―――あ・・・・そっか、昨日・・・・・
寝ぼけて上手く機能していなかった英治の思考は、そこで一気に覚醒した。
自分の頭の下と、腰に撒かれている腕。
耳元に聞こえてくる、小さな寝息と、鼓動。
素肌に感じるシーツと、暖かい肌の感触。
ベットの中で抱きしめられている、今の自分。
『英治・・・すげぇ、いい』
自分を抱きしめる男の熱い吐息を思わず思い出して、英治は真っ赤になった。
久し、ぶりだったのだ。
受験日も間近となり、英治は恋人に“禁止令”を出した。
英治のアパートに尋ねることも、そして二人で愛をかわすことも。
『受験なんて、どうだっていい。どうせ俺がいい大学にいったって、喜ぶのはあの女だ』
母親のことをそんな風に云う恋人に、英治は時には優しくそして厳しく説得したのだ。
結局・・・・・・・
『俺は、お前を養う気はないからな』
という、言葉が効いたらしく“英治に釣り合うため、いい大学に行って超一流の会社に就職する”という目標を恋人はもったらしい。
ソレも、英治が彼に伝えたかったコトとは違ったのだが・・・・とりあえず、大学受験の為まともに勉強しだした恋人を見て、『ま、その気になってくれただけでもヨシとするか・・・』というコトになったのである。
恋人の腕の中でモゾモゾとしていた英治を、抱きしめていた腕が、グイッと彼を引き寄せた。
「起きたのか?」
英治の言葉に、彼の恋人は額にキスを落として答えた。
「今日はどうする?」
今日は休日。
1日、この恋人の為に・・・・自分の為でもあるが、時間を過ごすつもりである。
恋人の返事は、髪の毛へのキス。
唇は鼻の頭、頬、耳朶、項へと移っていく。
「こら、亨・・・・・返事は?」
微妙なくすぐったさに、英治は首を振って抵抗する。
すると恋人は、耳朶を甘噛みしながら暑い吐息を吐いた。
「英治を・・・・・・食べたい」
既に熱くなった腰を押しつけられ、フッっと英治の力が抜ける。
その隙を逃すはずのない飢えた獣は、鎖骨に歯を立てたのだった。
「あ、馬鹿・・・・」
シーツに顔を埋もれさせた英治が、抗議の声を上げた。
その腰は高く抱え上げられ、他人には決して晒すことのない場所を恋人の目の前に晒している。
「英治、まだ解れてるね。昨日俺をずっと挿れていたせい?」
指を英治の蕾に挿れ、蠢かす。濡れた音が部屋に響いた。
「ふっ、ふざ・・・・・・けたことを・・・・・」
恥ずかしいことを聞く恋人に、英治は羞恥の為、藻掻き暴れる。
しかし恋人の腕にしっかりと固定されている英治の躰は微動だにせず、それは無駄な労力となっただけだった。
「物欲しそうに、ひくついてる・・・・・・。俺が欲しいの?」
「やっ・・・」
晒された蕾に、熱い息が吹きかけられる。
それだけで、英治の躰は一気に熱く火照り始めた。
「俺はいつだって、英治が欲しい。ずっと、ずっと英治のココに挿れたくて挿れたくて、何度も英治を想って抜いたよ。」
恋人の言葉に、その内容に、煽られる。
「昨日のじゃ、足りない。全然足りない。この1ヶ月近くの俺の餓えを・・・・教えてあげるよ?英治」
「あ、きら」
蕾にあてられた熱い塊を感じ、英治は息を呑んだ。
「ん・・・・!」
グイッと押しつけられ、熱い楔がドンドン自分の中に入ってくる感覚を、シーツを掴み、耐える。
圧迫感と、僅かな痛み。
ソレを上回る、焦れったいほどの疼きと快感。
恋人のソレを包み込むように、逃がさないように蠢く自分の内部を感じ、英治の体温は上昇する、
「あぅ・・・」
脈打つ恋人の楔がリアルに内部に響き、英治はおもわず声を上げた。
「スゴイよ、英治。最高・・・・。あんたのココ、俺を搾り取るみたいに動いてる」
「や、云うな・・・・・」
恥ずかしくて悶える英治を、恋人は煽り続ける。
彼の手は英治の乳首を虐め、既に張りつめている英治自身を扱う。
英治の先端から溢れ出る液体で、男の手はぐっしょりと濡れていった。
「あ、やっっ・・・!!」
英治の感じるところを、男の楔が擦った瞬間、男の手の中にあった英治がはじけた。
キュウっと英治の内部が男を締め付ける。
「くぅ―――」
英治は恋人の低く呻く声を聞きながら、身体の奥に男の放った熱いモノを感じた。
「・・・・・も、抜けよ。ケダモノ」
朝、起き抜けにあんな激しいことをされたのだ。
腕1本、動かす力など残っていない。
―――昨日散々したくせに・・・・・なんなんだよ、アレは。
心の奥で、毒づく。
「―――やだ」
珍しく反抗的な恋人に、英治はその腕の中で暴れた。
「もう、ダメだって。昨日から何回ヤッてると思ってるんだ・・・限界だよ。」
「やだよ。」
そういうと、英治の恋人は軽く腰を動かした。
「んふっ・・・」
鼻から抜けるような声が、英治から漏れる。
グチュリと、繋がった部分は恥ずかしい音を立てる。
「あきら・・・・!」
怒りの声を出す。
この声を聞くと、普通恋人は素直にいうことを聞いたのだが・・・・
「やめない」
そう、一言云うと、英治の腰を抱え上げ胡座をかいた自分の上に彼を乗せた。
「ああ・・・・・!」
一気に深くなった繋がりに、英治は悲鳴を上げる。
感じすぎて、辛い。
英治の瞳から、ぽろぽろ涙がこぼれ落ちる。
それでも、恋人は彼から躰を離すことを許さなかった。
「あっ、あっ・・・ああぁ・・・・」
下から突き上げられると共に、洩れる声。
先ほど奥に放たれた男の体液が、英治の中で暴れる男の動きを助けている。
その液体は英治の中から逆流してきて、二人が繋がってる部分をから恋人の叢、そしてシーツを濡らしていく。
恋人の腰が揺れるたび、グチュ・・・グチュと濡れた音が響く。
「苦しい、亨・・・・・」
何か助けを求めるように伸ばした手を、グッと捕まれそのまま口に持って行かれる。
指先から根本までを舐め上げられ、これ以上とない官能の火を付けられる。
「も、許して・・・・亨、亨・・・・」
「英治・・・・・」
触られると痛いほどに感じきっている突起物を、更に虐められる。
「おかしくなる・・・・おかしく・・・・」
「おかしくなれよ。もっと、おかしく・・・・・」
首筋を痛いほど吸われ、肩に歯を立てられる。
何もかも、グチャグチャで・・・・・・感覚さえもう、ない。
ただ、恋人の熱い楔だけを感じる。
「はぅ・・・・」
グイッっと最奥を疲れた瞬間、英治の目の前は真っ白になり・・・・真っ暗になった。
目が覚めたとき、恋人はベットの中にはいなかった。
何だったんだ・・・・・。
躰中が悲鳴を上げている。
窓の外を見ると、すで日は真上まで昇っていた。
・・・・・もう、昼過ぎか。
英治は、軽く溜息を吐いた。
―――昨晩は・・・・久しぶりだったとあってお互い燃えたが、今朝の亨はなんというか・・・・
獣だった・・・・・よな。
はっきりいって、途中から恐くなったぐらいに。
あんな風な亨は、出会った頃を思い出す。
苛立ちを隠しきれずに、全てに牙を剥いていた“アキラ”
英治を追いつめ、自分をもっと追いつめていた”水島”
―――なにがそう、彼を追いつめたのだろうか。
「やっぱり・・・・1ヶ月お預けが・・・・まずかったのか?」
答えは出ないまま、英治は恋人の帰りを待つことにしたのだった。
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