| SHINEシリーズ番外編。 700000hits記念 |
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そして、これからの事。 |
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「行って、来ます。・・・父さん、母さん」 二つの位牌と、家族3人で写った写真。 遙は、そっと手をあわせた。 「さ、行かないと・・・遅刻する」 4月。 新学期の始まりの日―――。
藤華学園の門から校舎へ続く道。 同じ華宮学園グループ桜華学園の桜並木にこそ敵わないが、そこには素晴らしい桜並木が続いている。 遙は、大きく息を吸った。 ―――戻って、これたんだ。 伯父である芙蓉遙士との、初めての対面。 母親の出生と、呪われた血。 藤華学園には、もう戻れないと・・・思っていた。 ―――涼の前に、もう二度と姿を現せないと思った。 涼の家―――東雲と、初めて知った遙の実家―――芙蓉は、なにかと対立してきたライバルといって過言ではない家同士。 そして、己の出生の事実。 涼を、穢してしまう。 遙は、とっさにそう思った。 遙にとって、涼は何物にも変えがたい輝ける人で。 誰も、彼を穢してはいけない存在。 だから、離れようと―――思った。 遙はそっと左腕の手首に目を移す。 そこには、大きな傷跡があった。 あの時の事は、あまり覚えていない。 だた、自分が汚らわしくて。 ただ、自分の存在が許せなくて。 消してしまいたかった。 今思うと、愚かな事だったと。 そう、思えるけれど―――。 閉じこもっていたといわれている、期間。 もちろん、遙に記憶はない。 今考えると、暖かい所でふわふわと漂っていた感じがする。 母親の胎内で、羊水に包まれているような・・・。 ずっと、そこでいたかった。 何もかも、忘れてしまって。そこで包まれていたかった。 けれど。 自分を呼ぶ、声がした。 『・・・遙。遙』 その声は、とても切なくて。 『愛してる。愛してる。・・・心の底から、愛している。どんな貴方でも、俺は愛している。愛し続ける―――』 その声は、とても熱くて。 どうしても、答えたくなった。 どうしても、彼に伝えたかった。 「俺も、愛している―――、涼」 ―――、と。 声は、掠れてしまって出なかったのだけれど。 意識が戻って。 初めに目に入ってきたのは、空から舞う白い、雪。 そして、彼の目から流れる、一筋の涙。 それは、とても綺麗だった―――。
「―――遙、さん」 物思いに耽っていた遙の背後からかかった声に、遙は現実世界へと引き戻された。 風に舞う桜の花びらに目を細めながら、振り返る。 「雅也君」 「お久しぶりです。ま、この前会いましたけど」 ―――涼に、邪魔されまくりでしたが。 雅也の言葉に、遙は苦笑した。 彼は、涼の親友で二階堂雅也。 遙が殻に閉じこもってしまってからも、雅也は何度も遙を訊ねてくれた人だ。 己の情報網を駆使して、過去の症例を集め、何が遙にとって良いかを調べつくしてくれた。 そして、遙が現実世界に戻り、リハビリをしている時も、もう1人の友人赤坂智紀と共に何度も見舞いに来てくれ、遙を心の底から笑わせてくれたのだった。 「桜、見てたんですか―――?」 「あ、―――うん」 桜を見ながら違う事を考えていた遙だったが、雅也の言葉に慌てて肯いていた。 「僕も、桜には思い出があります」 「桜に?」 遙の問いかけに、雅也は満開の桜の木の方を向きながら遠い目をした。 「唯一のあの人との思い出なんです。そう・・・桜の木の下で泣いている僕に、あの人は優しくキスをしてくれた」 あの人。 遙は涼から少しだけ聞いたことがあった。 『雅也はずっと探している人がいる。俺と知り合った頃には、探していたな・・・。だからあいつの情報網は凄い。それだけに時間と金と人材をかけているから』 切ない瞳。 だが、意思の強い瞳。 普段、穏やかな雰囲気をまとっている彼の、もう1つの顔。 「きっと、逢えるさ。雅也君が望むのなら―――そこまで望むのなら、きっと」 遙の言葉に、雅也は自嘲した笑みを向けた。 「あの人の為には、逢わない方がいいんですよ・・・。判っているけど、止められないんです。人として愚かな事だと判っているのに。犬畜生と同じ行為だと判っているのに―――」 吐き捨てるような言葉。 あまりに普段の彼とは違っていて、遙は驚きに目を見開いた。 「すみません、遙さん。驚かせてしまいましたね。今の話、忘れてください」 すぐにいつもの、穏やかな微笑みを、雅也は遙に見せた。 だが垣間見た表情に、遙は彼の中の渇望を見たような気がした。 「雅也君―――」 遙は彼の頬に手を伸ばす。 「全てを押さえ込んでは、駄目だよ。全てを否定しても、駄目だ。自分の気持ち・・・想いは抑えられないものなんだから。君は―――悪くない」 全てを押さえ込んで。 全てを否定して。 遙は、己を殺すしかなかった。己の存在を消す方法しか考えられなくなった。 だから―――。 遙の言葉に少し驚いた顔をした雅也だったが、その奥の意味理解して、遙の手に自分の手を重ねた。 「ありがとうございます。少し、弱気になっていたんです・・・。だから、誰かに聞いて欲しかったのかもしれない」 「ううん。俺でよければ―――」 いつも通りの雅也に、遙はホッと息を吐いた。 「ところで、遙さん。涼は? あいつが貴方を放ったらかしなんて・・・」 「ああ、今日はね・・・学校まで1人で歩きたいってお願いしたんだ。桜並木で待ち合わせしてるから、そろそろ―――」 「遙〜〜〜!!!」 遙の言葉は、前方から走ってきた涼によって遮られた。 「雅也、なに遙の手握ってるんだよ!!」 二人の元に走ってきた涼は、重なる二人の手を見た途端、激しく抗議した。 「ああ・・・」 「そうだね」 慌てて二人は手を離すが、涼の怒りは収まらない。 「なんだよ。二人で何を話してたんだよ」 「秘密」 「・・・秘密」 抗議する涼を置いて、遙と雅也は校舎へと向ったのだった。
遙は、再び藤華学園へと戻ってきた。 3学期、まったく学校へ通えなかったので、再び2年生をする事になったのだが。 それに関して、遙は全く不安がなかった。 涼、雅也、智紀達と同じ学年になれるのだから―――。 涼の家で正気を取り戻し学校へ復活した事は、遙の伯父―――芙蓉遙士へも、連絡は行っているはずだ。 彼は、再び―――遙に手を伸ばすであろう。 だが、遙はもう屈するつもりはなかった。 自分が1人ではない―――雅也、智紀。伯父の省三と敬二。そして、涼の両親達。 皆、暖かい目で・・・遙を見守ってくれている。助けを求めたら、手を差し伸べてくれる。 そして、涼。 涼が、いる。 『貴方が何者であろうとも、俺は貴方を愛している。愛し続ける―――』 彼の言葉に、遙は救われた。 そして、強くなれた。 だから、負けない。 「はーるか、行こう。クラス発表してるはずだぜ」 自分に向って満面の笑みを向けてくれる大切な人に、遙は自分も満面の笑みで答えたのだった。 |
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遙はこれからも、大変な人生。 それでも負けない、強い子になってくれればと・・・思います。 雅也の話は、サイトで発表する事はないと思います。 2003.4.19水貴伽世 拝 |
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