100000hits記念企画
「藤岡&一樹」シリーズ番外編 |
隣人。
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忙しなく始まった、新しい生活。
3月ギリギリにどうにか決まった大学。
地方から慌てて出てきて、必死で探して見つけたアパート。
大学からは少し遠いが、仕方がない。
「高い。高い。」と母と文句を云いながら、買い集めた家財道具に囲まれ俺は、東京での生活をスタートさせた。
慌ただしかったせいか、余裕がなかったせいか、俺が隣人の顔をを知ったのは、学校に通いだしてから3日目だった。
「くっそ・・・やばいって。一限間にあわねぇ・・・」
どうしても、1人で起きることに慣れない俺は、(高校時代は母に起こして貰っていた・・・)その日も、無意識に目覚ましを止めてしまったらしい。
目覚めると、一限が始まる時間まで、30分を切っていた。
食パンを生のまま囓りながら、そこら辺に落ちてある服を着て、慌てて家を飛び出す。
鍵を閉めていると、階段の方から足音が聞こえてきた。
―――お、朝帰りか?全くいいご身分だぜ・・・。
俺はその“いいご身分”の人間を見てやろうと、鍵を閉め足音の方向へ振り返った。
と・・・。
その途端、固まった。
俺のその時の衝撃を、なんと表現したらいいんだろうか。
一気に口の中が乾いた。
手に汗がにじんでくる。
そう、俺は瞬間に緊張したのだ。
―――何故か・・・。
それは、俺の目の前に現れた人間が凄かったから・・・。
―――何が凄いか。
とにかく、顔。
醸し出す、雰囲気。
綺麗・・・というのは簡単だが、そうとしか云いようのない美貌。
男なのに・・・。
―――そう、ソイツは男だった・・・・・・。
だけど俺は、瞬きもできないほど見とれた。
今まで俺が出会った“美人”と呼ばれていた全ての人間と比べても、ソイツの美貌には敵わなかった。
それほどに、目の前の男の容姿は完璧だった。
固まってしまった俺の隣を、ソイツは「どうも・・・」と通り抜けていき、俺の部屋の隣のドアの前に立ち止まった。
も、もしや・・・隣に住んでるのか・・・。
ガチャガチャと、ソイツは鍵を開け部屋に入っていってしまった。
俺は隣人を知った日、1限目を遅刻した。
隣人の名字は藤岡・・・と云うらしい。(表札を見た)
どうやら、天下のT大生という事も知った。(さり気なく、後をつけた)
どうも、あの日から藤岡某の事ばかり俺は考えているらしい。
男なのに・・・男なのに・・・と、自問自答するがダメだ。
あの顔が、俺の頭の中でグルグル回り、夢まで見てしまう始末だ。
一度言葉を交わしてみたいが、そんな機会などあるわけもなく・・・悶々としていたある日。
トントントン。
玄関の戸が叩かれた。
出ていくと、それは宅配便業者。
「すいません、お隣の荷物預かってもらえませんかぁ〜」
めんどくさいから断ろうと思った瞬間
「お隣の藤岡さんのお荷物なんですけど・・・」
「預かります」
と、答えていた。
宅配業者の男はぺこぺこ通れに礼を云い、藤岡某宅に不在者通知(俺が預かってる胸を明記した)を入れて、去っていった。
預かった荷物の伝票を見る。
“藤岡零”
零・・・。
零って云う名前なのか。
何処かクールな人を寄せ付けない美貌は、零という名前が似合っているような気がする。
隣人の名前を知ることが出来て、俺は上機嫌になった。
ふと、送り主の名を見てみる。
“藤岡拓巳”
親・・・かな?
商品名“イチゴ”となっている。
確かに『とよのかイチゴ』の箱だ。
親が一人暮らしの息子にイチゴを送ってくるなんて珍しいよなぁ。
俺は、藤岡零の事をアレコレと想像したのだった。
その日の夜。
トントントン。
ドアの叩く音に、ゴロゴロしていた俺は飛び起きた。
き、来た・・・。
絶対藤岡零だ。
思わず鏡の前に走り、寝癖を直して玄関に足を向けた。
ドアを開けると、目の前に息を呑むほどの美貌の主がいた。
「スイマセン。荷物預かって貰ってるみたいで・・・」
「あ、はい。」
声が上擦っている。
俺は慌てて冷蔵庫に向かい、荷物を取り出す。
「あ、あのコレ・・・」
『とよのかイチゴ』の箱を渡すと、藤岡零は一瞬顔をしかめた。
その表情を見逃す俺ではない。
「あの・・・なにか・・・俺・・・」
俺の言葉にハッとしたのか、藤岡零は苦笑しながら
「いえ、違うんです。一人暮らしの俺に、こんなモノ送ってくる叔父のイタズラにちょっと、ね」
苦笑した顔に、思わず見とれてしまう。
「あの、これよかったら食べてくれませんか?」
そう云うと、藤岡零は俺の目の前でその小包を開け、中にあったイチゴ4パックのうち1つを差し出した。
「え?そんな・・・」
そんなつもりで預かったわけじゃ・・・。
そう云うと、藤岡零はゆっくり首を振って微笑んだ。
「俺ダケじゃ、食べきれないし。腐らせるより貰って貰う方が俺も助かるんです。どうか貰ってやって下さい」
俺はというと・・・
藤岡零の微笑みに見惚れて、気付いたらそのイチゴを手にしていた。
「じゃ、ありがとうございました。」
藤岡零は会釈してドアから出ていった。
「まっ・・・!!」
見惚れていて遅れてしまった俺の呼び止めは間に合わず、藤岡零は行ってしまった。
―――俺のココロに、大きな大きなモノを残していって・・・・。
はぁぁ。
俺は、最近溜息が多くなった。
それも、全て隣人のせいだ。
美しく気高い、彼。
彼のことを思うと、やはり溜息が出てしまう。
―――こんな事を友人に云っても、爆笑されるだけだろうなぁ。
そうは思うが、止められないこの気持ち。
そう、俺は気付いてしまった。
俺は男なのに・・・
隣の男、藤岡零に惚れていると。
考えるのは彼のことばかり・・・。
そのせいで、高校時代ずっと付き合っていた彼女には「全然電話もしてくれない。冷たい。東京に行って私のこと忘れたんだわ!」と振られてしまった。
それでも、彼の事を考えるのは止められない。
気が付けば、彼が帰ってくるのを毎日待っている自分が居る。
時間は不規則だが、彼はバイクで帰ってくる。
バイクの音が聞こえると、そっとカーテンの裾から彼の姿を見つめるのが、俺の日課となりつつあった。
このままでは、ダメだ。
そう思うのだけど・・・。
近付きたい。
もっと、近付きたい。
しかし、どうも接点がなくて・・・あれ以来、すれ違った時の会釈以外交わしていないのだ。
そして俺は、手の中に握りしめたモノを見る。
2枚の映画のチケット。
今日、新聞屋のオヤジに「彼女と行っといで」と貰ったモノだ。
彼女と云われ、浮かんだのは藤岡零の顔。
誘う・・・
彼を、誘ってみようか。
どうやって?
・・・・・・・・・・・・・・・
この前の、イチゴのお礼!
そうだ、イチゴのお礼に「コレ貰ったんです。良かったら明日の休み・・・、一緒に見に行きせんか?」と誘ってみたらどうだろう?
不自然じゃない・・・よな?
そうだ。
そうしたら、もっともっと会話を交わせるかも知れない。
そして・・・もっともっと深く―――。
俺は、にやける顔を押さえることが出来なくなった。
そうと決まれば、彼が帰ってくるのを待つのみだ。
と、ちょうどその時・・・バイクの排気音。
藤岡零だ。
俺は思わずいつもの習性で、窓に飛びつく。
窓から駐輪場が見えるのだ。
やっぱりそうだ。
彼はバイクから降りて、それを駐輪場になおしているところだった。
ドキドキドキドキ。
心臓が早鐘を打つ。
ギュッと手の中のチケットを握りしめた。
と、その時―――。
藤岡零の側に、誰かが立っている事に気付いた。
え?
藤岡零の側に立っていた人間は、彼にヘルメットを渡している。
という事は、彼のタンデムシートに乗ってきた?
心臓がギュッと締め付けられる思いがした。
いや、ただの友達だろう・・・。
だって、男だし―――
しかし、その俺の願いは裏切られることになった。
藤岡零は、満面の笑みでヘルメットを渡した男の腰を引き寄ると、耳元に何事か呟いて男の顎をクイッと上げると
―――キスをした。
うぎゃああぁぁぁぁぁぁ―――
俺は、大声を上げた。
心の中でだが。
そして、キスが終わった後の藤岡零のとろけそうな微笑を見て・・・
―――俺は失恋を悟った。
「短い、恋だったな。」
ビリビリビリ。
「あんな、顔見たらな―――」
ビリビリビリ。
手の中でどんどん小さくなるチケットを見ながら、グイッと溢れてくる涙を拭う。
ガラリッ、と窓を開けると、もう花の散ってしまった桜の木がある。
それに向かって、彼は自分の想いとともに細かくちぎられた紙切れを投げた。
ヒラヒラヒラ、と舞う紙吹雪を見ながら、ズズズッと鼻をすする。
「でも、好きだったんだ―――」
先ほどの、藤岡零の微笑を思い出す。
あんな顔、きっと俺は一生見ることは出来ないんだろう。
ツーンと鼻の奥が痛くなる。
目の奥がジーンと熱くなる。
きっと、明日からはいつもの俺に戻れるはず。
でも、今日は仕方がない。
冷蔵庫のビールを取り出すと、一気に煽る。
―――さて、明日の休日は何をしようか・・・。
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あ、コレ、ギャクでし(苦笑)
ふと思いついて、勢いで書いてしまいました。
一応(イレギュラーだけど)藤岡&一樹の番外編。
藤岡の隣人・名無しの彼が主人公。
いやぁ〜、こういうのもアリ?かなぁと(笑)
可哀想な彼は、隣で藤岡と一樹がHしてるのを涙しながら聞くのよ(爆)
あ、ソコの人ソコの人、石を投げないように。
と云うわけで、10万hits記念の『それぞれの休日』も、全てUPして・・・ちょっとホッ。
コレからも、マイペースで更新していきますので、見捨てないで付き合っていただけると嬉しいです。 |
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