元キリバン企画用小説
『視線で殺して、魂で縛れ!』番外編


ケンカの後は・・




「亨っ・・・!お前、いい加減にしろよっ―――!!」
先ほど水島の頬を殴った拳を震わせながら、英治は水島のことを睨み付けた。

「英治―――」
殴られた右頬は、少しずつ紅く染まりつつある。
しかしそんな事も全く気にする事もなく、水島も相手の睨みに負けじと英治をジッと見つめる。

「みんなの前で・・・あんな事を・・・」
思い出しても、許せない。

「英治、あいつは―――」
「黙れ!聞きたくない。お前はしばらく頭冷やせっ!!」
水島の言葉を遮ると、英治はそのまま水島を振りきり部屋を出た。

―――何処まで嫉妬深いんだ、あいつは!!


◇◆◇◆◇


コトの始まりは、週明けの月曜日。

「麻生先生っ。今度飲みに行きましょうよ〜」
声をかけてきたのは、今年一緒に入った音楽科の佐々木だった。
「いいですね。そういえば、佐々木先生と飲みに行ったコトなかったですね?」
英治と一緒にこの学校に赴任してきた同期は佐々木しかいなかったのに、二人で飲みに行ったことがなかった。
だから、せっかくだし飲みに行ってもいいかなぁ、などと英治は思った。
「うふふ、嬉しい。いつにします〜?」
松華学園ナンバー1の人気を誇る可愛い笑みを、佐々木は英治にむけた。
「そうですね・・・水曜日なら会議もないし・・・」
「じゃ、水曜日行きましょう?二人っきりで、ね?」
嬉しそうに小指を出す佐々木に、英治は苦笑しながら自分の小指を絡めた。




「だめ、許さない―――」
「許さないって・・・お前には、関係ないだろう?」
水曜日は飲みに行くから、家には来ないように英治は水島に告げた途端、不機嫌極まりない顔を水島は英治にむけた。
「あんな女と飲みに行くなんて―――絶対、ダメだ」
「だから・・・ダメなんて、何でお前が決めるんだよ」
英治は、話にならないと溜息を吐く。
「英治は、俺と付き合ってるんだろう?」
「そりゃあ―――」
―――そうだが、それとコレとは話が別だろう・・・?

「恋人がいるのに、英治は女と飲みに行くのか」
黙ってしまった英治に、グイグイと水島の顔が近付いてくる。
目が座っているのは、英治の気のせいではないだろう。
「英治は、俺よりあんな女を取るのか―――」

獰猛な目つき。
ぶっきらぼうな、言葉遣い。
だめだ、完全にアキラに戻ってる―――

「あんな女とか云うなよ・・・。佐々木先生は―――って、ちょっ・・・、亨・・・!!」

捕まれた、両頬。
近付いてくる、唇。

「こんな所で、よせっ―――んぅっ」

塞がれた、唇。
我が物顔で口腔内を蹂躙する、舌。

「んっ・・・くっ・・・」

流し込まれる唾液に、喉が鳴る。
まるで行為そのもののように、相手の舌が差し込まれ奥まで犯される。
絡め取られ、甘噛みされる自分の舌。
とろけるような快感に、英治の意識は白濁していく。

「英治・・・行かないよな・・・・」
「―――んっ」
キスの合間合間に、囁かれる甘い言葉。
「あんな女といるより―――俺と二人で過ごそう?」
「あ・・・ふっ―――あきら・・・」
流される。
そのまま、肯きそうになって―――英治はハタと我に返った。

「そんなので騙されるかぁ!!」
英治の腰を引き寄せ、エロティックに自らの腰を押しつけていた水島を、英治は突き飛ばす。
「そんな子供みたいな事ばかり、云ってるなよ・・・。こっちだって付き合いなんだからなっ!」
未練を断ち切るかのように、英治は振り返りもせず、その場を立ち去った。


◇◇◇


それからも、水島の「行くな」攻撃は続いたが、ココまで来たら英治も「意地でも行ってやる」と云う気持ちになる。
待ち合わせした場所を教えていなかったのも幸いしたのだが、水島の捜査網から上手く逃げ出し、水曜日佐々木と飲みに出かけた。
二人で飲みに行ったはずだったが、途中から「大学時代の友人です〜」という女性数人が加わり、女性パワーに押し込まれ英治には辟易した最悪な時間となったのだった。
そして、最終電車でフラフラと自分のアパートへ戻ると、玄関前に膝を抱えて座っている水島を発見した。
捨てられた子犬のような表情をした水島に英治は、ギュッと胸が押しつぶされ熱くなり―――
水島の事が可愛くて、愛しくて、どうしようもなくて・・・。
「亨、ゴメン―――」と、優しく抱きしめた。
胸に飛び込んできた水島を、そっと撫でながら
(少し悪かったな・・・)
と、反省した英治は・・・二人で甘い夜を過ごしたのだった。

―――が、しかし。
その次の日である。

騒がしく、何重にも生徒達の輪が出来ているのを廊下の端で発見し、慌ててその場に駆けつけた英治の目に入ってきたのは
泣きじゃくってる佐々木と、冷たい目をして小馬鹿にした顔で佐々木を見ていた水島であった。

「何をしているんだ―――」
生徒の輪を掻き分け近付いてきた英治に
「麻生先生〜」と、佐々木は飛びついてきた。

「なっ・・・。どうしたんですか―――」
「水島君が・・・水島君が・・・酷いんです―――」
わぁ〜と胸の中で泣き崩れる佐々木に困った視線を送り、そして、キッと英治は顔を上げて水島を睨み付けた。

「どういう事だ、水島―――」
というか、英治には判っていた。
昨日のことが気に入らなくて、佐々木を虐めていたのだろう。
水島との口げんかで勝てるのは、自分と秋良と藤岡ぐらいのモノである。

「ふんっ、別に麻生先生には関係ないですよ―――コレだから、女は嫌なんだ。すぐ泣いて人を悪者にすればいいと思ってる。」
「水島、何て事を―――その発言は、女性差別だぞ」
普段見慣れていない冷たい視線に、英治の躰にも緊張が走る。
「そうですね―――。その女と世の中の女性をひとまとめにするのには、女性にあまりにも失礼だったな」
「ひっ、ヒドイ〜〜〜」
胸の中で泣き続ける佐々木を持て余しながら、普段とは違って感情的になっている様子の水島に戸惑う。
「何が・・・あったんだ―――」
「別に―――。その公私混同・馬鹿としか云いようがない先生に、少し意見をしただけですよ。」
「だから、何を―――」
こんな状態の佐々木に聞くわけには行かず、どうしても水島に聞くしかない。
「先生には、関係―――あるか・・・な?」
水島は、英治と英治の胸の中にいる佐々木を見てニヤリと笑った。
英治はその笑いに、背筋がゾゾッとした。

―――この笑い方をするときは・・・何か嫌な予感がする・・・・・・・・。

「どうやら、ソコの先生は英治をモノにしたいらしい―――」

あえて、英治と名を呼ぶ水島。
それは―――

全て、挑発。
全て、独占欲。
挑発的な表情。
向ける視線は、一人の女。

「―――俺がいるのにね」
「亨!!」
英治はとっさに叫んでいた。

人前で・・・。
生徒達の前でそんな事を云うなんて!
何を考えているんだ―――。

英治は視線の端に入った秋良に、今だ泣き続ける佐々木を「お前慣れてるだろっ!」と預けると、水島の腕を掴み、囲っていた生徒達を退け、社会科準備室へと連れていった。

そして、ギリッと水島を睨み、左手に拳を作り思いっきり振り上げた―――

「亨っ・・・!お前、いい加減にしろよっ―――!!」


◇◆◇◆◇


水島は、殴られた頬にそっと手を当てた。
怒り狂って去っていった、恋人。
確かに、みんなの前でのあの発言は云いすぎたかも知れない・・・。
でも、
でも、あの女だけは、許せない―――

英治と同期で入った佐々木は、ここに来て半年で既に数十人の生徒達と浮き名を流していた。
教師のくせに、何て女だ・・・。
報告されるたびに、軽蔑し続けていた。
そんな時突然、自分の恋人がその女と二りっきりで飲みに行くと云う。

誰だって・・・反対するだろう―――?

ウワサなんて全く知らない彼は、俺の言葉なんて聞くはずもなく―――。
上手く撒かれた後は、いてもたってもいられなくて、彼もアパートで帰りを待ち続けた。

―――朝帰りだったら・・・。

嫌なことばかり考えた。
だから、帰ってきて抱きしめてくれた彼の温かさに、思わず涙が出そうになった。

大丈夫。
彼は、大丈夫。
あんな女に引っかかったりしない。
もう、このことは忘れようと思っていた。



次の日。
音楽に時間。あの女の授業。
授業後半頃、突然鳴り出した携帯電話。

「もしもし、あら・・・。今授業中なのよ、ちょっと待って」

授業中に携帯電話を取る非常識さ眉をひそめていた生徒達に、「ちょっと自習しておいて―――」と、女は生徒達を置いて準備室に行ってしまった。
しばらく経っても、戻ってこない。
仕方がないので、クラス委員の自分が様子を見に行く事になり、席を立った。
準備室のドアを開けると、聞こえてくる会話。

「―――そう、若い男とは遊ぶだけ遊んだし〜。高校生とは遊ぶのはいいけど、結婚相手はねぇ。」
何を言ってるんだ、この女。

「いいでしょ?麻生先生。貴方、気に入ってたもんね〜。でも、ダメ。アレはあたしが目を付けてるんだからぁ―――」
麻生・・・・英治の事?

「顔もいいし、性格もいいし、優しいし。結婚しても、遊べそうじゃない?あの人相手ならぁ〜。うふふ、GETするわよ。もち、結婚よぉ〜」

結婚・・・。
英治と―――?
この女は、何を云ってるんだ。
結婚。
自分は絶対出来ない、女の最終兵器。
この女は、英治を手に入れようとしている。
ただ、手頃な相手として―――。

許せない。
タダ単純に、そう思った。



「あら、水島君―――」
背後に水島が居ることに全く気が付いてなかった佐々木は、慌てて笑みを作ると水島に近付いてきた。
媚びを売った表情。
吐き気がする。

「あまりの非常識さに、笑うしかありませんね―――」
一刀両断の水島の言葉に、佐々木の浮かべていた笑みが一瞬で氷る。
「ちょっと、どういう意味・・・・」
他人に避難されたこともない女は、自分の非など全く気付くはずもなく、水島を睨み上げた。
それを軽く受け流し、更に罵倒するため水島が口を開こうした時

授業終了のチャイムの音。

仕方なく、音楽室に戻る。
丁度、目があった秋良の顔を見て、水島は少し冷静さを取り戻した。
―――こんな女、真正面から構っていてもしょうがないな。

水島は的確且つ迅速に、佐々木を排除する方法を考えながら、礼を済ませ音楽室から出た。
「水島君、ちょっと待ちなさいよ―――」
後ろからかかった、厳しい声。
プライドを傷つけられた女の復讐。
せっかく他人の前で恥をかくことは許してやろうと思っていたのに・・・馬鹿な女。
水島は、悠然と振り返った。

「なんですか、佐々木先生―――」
「さっきの事、どういう意味か、ちゃんと説明しなさいよね?!」
隣に立っていた秋良が、俺がどういう反応をするのか、と面白そうな顔をする。
もちろん、売られた喧嘩は買ってやる。

「先ほど云ったとおりですよ、非常識も極まりない。」
「何ですって―――」
キーンと廊下に響きわたる声。
逆切れした女の、醜い顔。
何事か、と生徒達が足を止める。
「授業中に携帯電話を取るだけでも非常識なのに、授業を中断して控え室でおしゃべりですか?」
「そ、そんなの―――!!」
言い訳できない佐々木に、水島は畳みかける。
「しかもその内容は、自分が玩んだ男達の事の自慢。非常に馬鹿馬鹿しい内容だ。頭の程度がしれますね」
「ひ、ヒドイ―――」
じわりと潤む瞳。
勝てないことを判断した女の、常套手段―――

―――それで同情が引けるとでも?
嘲笑を口元に浮かべ、水島が相手を見やった・・・その時。

「何をしているんだ―――」
聞き間違えるはずもない、大切な人の声。
困惑した表情で人波を掻き分けてくる彼に、水島が見惚れてた時

「麻生先生〜〜」
女は英治の胸に飛び込んだ。
ビックリした表情で、佐々木を受けとめる英治。
そして、それを見ていた水島は、キレた―――。


◇◆◇◆◇


「馬鹿だなぁ、お前―――」
その声に水島が振り返ると、英治が出ていった扉の所に秋良が立っていた。
「あんな女、軽く交わしておけばいいのに」
「フェミニストとは思えない発言だな―――」
自分でも馬鹿だと思ってる。
子供だとも。
あんな女の為に英治を本気で怒らせるなんて、本末転倒だった。

けれど、
目の前で
何の抵抗もなく、
英治の胸に飛び込んでいった女を、許せなかった。

「俺は女好きだが、イイ女を選んでるからな。」
秋良はニヤリと笑った。
「確かに、あの人はイイ女だな―――」
秋良のパトロンでもある美しい女性の顔を思い出しながら、水島は皮肉った。
「ふっ、お互い年上好きなことで」
水島の挑発など秋良は全く意にかえさず、軽く受け流す。
「で、佐々木に対して、何をそんなに怒ってるんだ、お前」
この叔父相手に黙っているなど出来るはずもない事を知っている水島は、ボソボソと月曜日から今日までの事・佐々木の携帯でも会話などを秋良に云った。

「どうして、それを麻生先生に云わないんだ?」
「こんな事を、あの人の耳に入れたくなかった。何事も一生懸命なのに『同期の教師はホントは生徒達に手をつけまくって遊んでいる』なんて云ったら、悩むだろう・・・・」
水島の発言に、秋良は肩をすくめながら
「お前ら、お互いを思いやりすぎ。云わなきゃ、判んない事だってあるんだからな・・・・。ま、いいや。今回は俺がフォローしてやるから、とっとと仲直りしておけよ。お前が落ち込むと生徒会の仕事がはかどらないから」
秋良は云うだけ云って、出ていってしまった。

「あの人が傷ついたり、悩んだりするのが判ってるような事を、あえて云えるわけないだろ―――」
水島は一人残った部屋で、英治に殴られた右頬を押さえながら溜息を吐いた。


◇◇◇


―――はぁぁぁぁ
今日何度目の溜息だろうか。
英治は大きな溜息を、吐いた。

怒りにまかせて水島を殴り、何か云おうとした水島を無視して準備室を出た時点から、英治は後悔していた。

亨の言い分だって聞けば良かった。
あいつが、あんな風に云うくらいだから、きっと何かあったんだ。
何か云おうとしてたのに・・・。
傷つけてしまった―――。

そうどっぷり落ち込んでいた所に、秋良がひょっこり英治の目の前に現れた。
そして、秋良の口から事の真相を聞き、またまた落ち込んだ。

亨はオレの事を考えて・・・
オレの事を庇って
オレが馬鹿にされたと怒って
そうだ、いつだってあいつはオレの事ばかり考えてくれていたのに
オレはそれを「タダの嫉妬だ」と決めつけてあいつの言葉を何も聞かなかった・・・・・・。

はぁぁぁぁぁ。
とにかく、謝らなくては―――


英治は水島を捜したのだが、どうも行き違いになり、会えなかった。
放課後、仕事を終え携帯電話を鳴らしてみるがやはり相手は出ない。

―――怒ってるのか・・・な、やっぱり。

英治はしょんぼりしながら、自分のアパートへトボトボと足を向ける。
アパートが見えてきて、自分の部屋の前に人が立っていることを確認した英治は、矢も楯もたまらず走り出した。


◇◇◇


「亨ッ!!」
大好きな人の声に、ジッと地面を見ていた水島は顔を上げた。
「英治―――」
自分の胸の中に飛び込んできた大切な人を、驚きながらも受けとめる。
「ゴメン、亨―――」
「英治・・・」
「秋良から、聞いた。俺には、お前だけだから―――あんな他人が云ってる事なんて、気にするな」

ギュッと胸が締め付けられる。
この人は、どうしていつも自分の欲しい言葉を一歩先にくれるんだろう。

「俺も・・・ちゃんと英治にいえば良かった・・・」
「部屋、入ろう。な―――?」
水島を促し、英治はドアを開けた。



「英治―――」
後ろから、ギュッと抱きしめられる。
振り返ると、少し紅くなった水島の右頬が英治の目に入った。
「ゴメン、痛かっただろう・・・」
スマなさそうに、頬に伸ばされた英治の手を、水島は掴んだ。
そのまま、顔を近付けて唇を貪る。
歯列を舌で刺激し、自然とあいた隙間に、舌を滑り込ませる。
「うんっ―――んっ。」
侵入してきた水島の舌を、英治は迎え入れ自分の舌を絡ませる。
口の端から流れ落ちる唾液など全く気にせず、二人は長い時間仲直りのキスを堪能した。

「喧嘩慣れしてるから、コレくらいどって事ナイ―――けど・・・」
「けど―――?」
水島のメガネの奥の瞳が獰猛に光が灯る。
「悪いと思ってるのなら、ちょっと俺の我が儘聞いて貰おうかな―――」
「うわっ」
水島は屈み英治の腰と膝裏に手を回すと、抱き上げた。
「ちょ、うわっ、降ろせよ、亨。お前、重いだろうっ」
水島の突飛な行動に、横抱きされベットの方まで運ばれている英治は慌てる。
「暴れたら、危ないよ―――」
水島は楽しそうに云う。
どうやら、ベットまで下ろす気はないようだ。
英治は自分の身の為にも、水島の背に腕を廻す他なかった。
英治と水島の背は、ほぼ同じである。
そんな英治を水島は難なく抱え上げたのだから、英治は驚かずにいられなかった。

優しくベットの上に下ろされ、そのまま水島は英治に覆い被さる。
抱きしめられる心地よさに、英治はウットリと目を閉じた。
水島の舌が、英治の耳朶を玩ぶ。
「亨―――」
「英治、今日は挑戦してみようか?」
優しい声に、うっすらと目を開ける。
眼鏡を取り、欲望の炎を燃やした瞳と目が合う。
「何、に・・・?」
「記録」
嬉しそうに笑う顔は、普段の彼が見せない年相応の笑顔。
「記録―――?」
「そう、一晩何回やれるか―――ね?」
水島は満面の笑みで英治にそう云うと、白い英治の首筋に唇を落とした。
「何回って―――あっ」
英治の抗議は、甘い悲鳴に飲み込まれた。



「もっ、ダメ・・・」
「俺、まだ3回目だよ―――英治」
「イヤ、もっ・・・許して―――」
座位で揺すぶられている英治は、声も掠れている。

ベットの横あるゴミ箱には、使用済みのコンドーム。
真新しかったシーツは、グチャグチャのドロドロだ。

「ひっ、イイ―――あぁっ」
既に体力が尽きかけている英治は、下から自分を揺する上げる水島に、縋り付くことしかできない。
「ダメ、まだイっちゃダメ。今度は一緒にイこう―――?」
イきそうで、打ち震えてる英治自身を根本部分で押さえ込み、そのまま押し倒す。
腰を掴み、最後の求愛をするため上下前後に水島は激しく動いた。
英治のイイ所を、突き上げる。
「あっ、ああっ・・・あふっ―――」
より一層高い声で啼き出した、英治の全身が震え出す。
「イ・・・イク・・・アァァ―――」
英治は水島の腹に、すでにサラサラになった少量の体液を叩きつけた。
「くぅっ―――」
英治の内壁は快感に震える痙攣あわせてぎギュウギュウと水島を締め付け、水島を頂点まで高めたのだった。

ゼイゼイゼイ。
英治は、脱力して天井を仰いだまま全く動かない。
もう少し心地イイ英治の中で水島は居たかったのだが、英治が苦しそうなのでゆっくりと抜き取る。
「んんっ―――」
その微妙な感触に、英治の喉が鳴った。
「英治、最高。次はどの体位でイク?」
嬉しそうに英治の耳元で囁く水島に向かって英治は「化け物・・・」と掠れた声で言い返した。
「ンな事いったって、まだ3回しかしてないし―――。まぁ、英治は俺より2回多かったっけ?」
「し・・・知るかっ」
挿入される前に熱い水島の口腔内で、次に水島の指で前と後ろを玩ばれて、英治は自分だけ出したのだ。
その分が、水島より多かった。
そしてその多い分、英治は“もう、お腹いっぱい。お願いだから許して頂戴”のグロッキー状態だ。
だが、若い水島にそれだけで足りるはずはなく―――

嬉しそうに頬にキスを落としながら、水島は英治の躰を裏返した。
「まて―――ちょっ・・・!」
「ゴム無くなったから、生でイイ?」
そう云いながら、英治の腰を抱え上げトロトロに溶けきってしまっている蕾に、一気に固くなった水島自身を挿れたのだった。
「鬼ぃっ――――――」
「4回目、スタート」
「イッ・・・あっ、あぁ―――」
英治の啼き声は、朝まで途切れることはなかった。




ギシギシ云う躰に叱咤しながら、英治は半泣きでベットから立ち上がった。
満足そうに寝息を立てている恋人に、殺意を覚えるのはこんな時だと思う。
シャワーを浴び、背広を着ているところで、水島は起きてきた。
「英治・・・今日は休みだろう?」
驚いた声を上げている水島を英治は一瞥する。
「勉強会。頼まれたんだ―――」
「はぁ?誰に―――?」
「岩田と里中」
「ダメだ―――!!」
水島はその名前に即座に反応する。
その名は、水島の“英治の前から排除リスト”筆頭の人間である。
「なに云ってるんだよ、生徒だぞ。お前何考えてるんだ―――」
「ダメッたらダメッたら、ダメ!!!!」
「亨、いい加減にしろよ―――」

こうして、二人の云い合いは学校に行くまで(もちろん水島は、英治についていった)続いた―――。



HappyEnd?





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