| 50000HIT記念第1弾 |
| 藤岡氏の屈辱 |
その作戦は、秘密裏に進められていた――― 「藤岡には、ばれていないね。」 「もちろん。そんな事になったら絶対妨害に合うからな。」 「当日までは、僕たちだけの秘密だよ。」 2人の男は、ニヤリと口の端に笑みを浮かべた。 「コレで今年の『男装女装コンテスト』こそ、我が松華が優勝だよ」 「部費UPの件は、判ってるよな?」 「ああ。企業との取引も、OKが出るように理事会まで話は詰めてるよ。」 ―――利害が一致した“生徒会長”と“科学部部長”のタッグは最強だった・・・。
「触らないで下さい―――」 「ふっ、藤岡ぁ・・・」 「触るな、と云ってるだろう!」 藤岡は、ひつこく自分の肩を掴んでくる男の腕を振り払った。 ―――いい加減にして欲しいものだ。 この学校に入学してからというもの、藤岡は男に告白されるのが日常茶飯事になりつつある。 男ばかりの生活で何を栃狂うのか・・・。 しかも、必ずと云っていいほど自分より体格のいい男がほとんどである。 自分にどういう欲望をもたれているか、考えるだけでも吐き気がする。 妙に日本人離れしたハッキリクッキリスッキリした容貌は、昔から人に好かれるらしい。 小学生の頃から飽きるほどもてたし、掃いて捨てるほど告白なるモノもされた。 特に手取り足取り全てをリードしてくれる年上にもてたので、性体験などはむちゃくちゃ早かった。 だが興味を持って喜んで答えていたのは最初の頃だけで、中学の頃になると既に飽きていた。 あとは性欲処理の為、後を引かない相手と付き合ったりしていたのだったが・・・。 だが、この高校に入ってからはどうだ。 少なくとも藤岡は、男に云い寄られたことはなかったのに――― 入学と同時に、バレー部主将とか云う男に押し倒されたのを皮切りに・・・。 来るわ、来るわ――― 云い寄られ。 押し倒され。 お願いされ。 懇願され。 科学部に入部して、ガードが入ったおかげでマシにはなったのだが、それでも先ほどのようなことが度々あるのだ。 それでなくても愛想の悪かった藤岡が、どんどん愛想が悪くなり鉄仮面をかぶるのも仕方のない事かもしれなかった。 それまで藤岡は、一応付き合うのは一人だけと限定していたのだが 云い寄る男どもに見せつけるかのように、告白してきた女の子達を来る者拒まず、去る者追わずになってしまった。 別に、男同士の恋愛に口を挟む気はないが――― 頼むから、自分にだけは云い寄るのはやめてくれ。 この学校に入ってからの、藤岡のささやかな願いだった。
「おっ、藤岡。来たか」 科学部の部室をあけると、パソコンの前に座っていた2年の見崎が、こちらを向いた。 「この前の実験。後はデーターを処理して整理するだけだぞ。」 入学してからすぐ見崎とはじめた研究の終わりがようやく見えてきた所だった。 なかなか面白い研究であり、優秀な見崎と組むのは藤岡には多大な勉強にもなった。 「そうですか、楽しみですね」 データーを処理していた見崎のパソコンを覗き込む。 「明日で学園祭も終わりだし、まぁ、来週中には仕上げたいな。」 そう、昨日からこの松華学園は学園祭だった。 イベント事に興味のない藤岡は、登校しても専らこのように部室に入り浸るだけだったが・・・。 「明日は、合同祭でしたよね。今年の会場はウチでしたか。」 「そ。だから明日は五月蝿くなるなぁ・・・。」 松華学園と兄弟校である梗華学園・梅花女子学園は、同じ沿線上にあり毎年学園祭の最終日は合同でするのだ。 合同の日は、その会場に訪れる人数も数倍に膨れ上がり、のんびり部室で茶を飲んでいるという環境ではなくなってしまう。 「鬱陶しいですね。」 「まぁ、なぁ―――」 「ところで、部長は?」 「・・・友永先輩か?あの人なら、嬉しがってそこら辺のイベント事にまわってるんじゃないか?」 ―――あの人は、こういうお祭り騒ぎが大好きだからな・・・。 あきれた口調をする見崎だが、友永のことを語る顔にはどうしても笑みが浮かぶ。 普段から友永に振り回されっ放しで、しかしそれに素直に甘んじるというか、それさえも嬉しそうにしている見崎の姿は、“スキ”と云う気持ちや“恋愛”について理解できない藤岡には、不思議なモノだった。
「おうっ!見崎。藤岡は?」 「帰りましたよ・・・。」 学園祭2日目も無事終了し、片付けなどもほとんど終わった頃に科学部部長は部室に帰ってきた。 「はぁぁ〜腹一杯だ。」 今日も食ったぜ、と食べたモノ1つずつ上げて感想を述べながら満足そうに友永は笑う。 「よく、そんなにも食べましたね・・・」 ほとんどの飲食関係の出店を網羅している友永の言葉に、見崎は驚きを隠し得ない。 「みんな、食ってイケって呼び止めてくれたんだ」 屈託のない友永の笑みに、見崎の表情は固まる。 ―――また餌付けされてきたのか。 見崎は、相変わらず人気のある自分の想い人を見ながら、切ない溜息を吐いた。 「で、藤岡は気付いてないな―――」 最終打ち合わせは終わったんだ、と友永は見崎に顔を寄せて囁いた。 「ええ、全く。」 「よしっ、今年こそ優勝はいただきだぜっ!」 「負けず嫌いなんだから・・・」 去年、梗華学園の男子生徒に女装部門及び総合部門で負けた屈辱を、実はかなり聞かされていた。 「な、何を。俺は、科学部の部費アップのためにだな・・・」 「ただの、イベント好きなくせに。言い訳しなくていいですよ。」 「むう―――」 口を尖らせる友永を、やはり見崎は複雑な気持ちで見つめた。 「じゃあ、俺は時間ぎりぎりに藤岡を連れていけばいいんですね?」 「おお!後の説得は、俺と崎守でするさ。」 藤岡に似合いそうなチャイナドレスも用意したしな――― 友永は、イタズラ小僧のような笑い方をした。
「これは、どういう事でしょうかね―――先輩方?」 際だった美貌の人間が本当に無表情になると、こんなに迫力のあるモノだったのか――― 見崎は、表情の消え去り周りの人間を氷らせそうなほど、冷たく冴えた瞳をした藤岡を客観的にジッと見た。 見崎の隣に立っている藤岡の視線は、前方のニコニコッと人の良い笑いをしている生徒会長の崎守とチャイナドレスをもって満面の笑みを浮かべている友永に注がれていた。 「会長命令と部長命令だよ、藤岡君。女装してコンテストに出るんだ」 ニコニコとした顔つきとは裏腹な、絶対的命令口調。 崎守は、穏和な顔付きに生徒や先生達は騙されているが、実は学校の裏組織も仕切っている。 先生は元より理事関係の弱みなども握っていて、彼に頭の上がらない人間は両手両足以上にいるらしい。 「お断ります―――」 藤岡の表情は変わらない。 「―――断れないの、藤岡。ホントは判ってるんだろう?悪あがきはそろそろよしなよ。時間もないし、ね?」 まるで邪気のない表情だが、やはり命令口調。 友永は、科学部部長という事で文化部部長会のTOPを仕切ってるだけでなく、運動部部長会のTOPも影から仕切っていた。 藤岡は、ギリッと唇を噛んだ。 たぶん・・・藤岡に逃げ道は全くないんだろう。 見崎は他人事のような目つきで見ていた。 「藤岡、コレ何か判る?」 友永が出してきたのは、MOと数枚の紙。 「それは―――」 「あっ、それは!」 藤岡の横にいた、見崎が叫んだ。 「それっ、実験結果のデーターじゃないですか!なんで、友永先輩が持ってるんですっ!」 「ちょっと拝借した」 「や、やめて下さい―――」 友永が何をしようとしているか、瞬時に理解した見崎は真っ青になった。 「部長。仮にも貴方は部長でしょう?部の貴重な研究を、私的な事で無にするつもりですか?」 藤岡も、友永の行動を読み牽制する。 しかし、友永に2人の声が届くわけもなく 「別に―――俺やったのじゃないし。俺としては、藤岡がコンテストに出てくれる方が大事」 ―――ほらほらっMO折っちゃおうかなぁ〜。 という、自分勝手なというか自己中心的な言葉が友永から出た。 ―――ホントこの人は・・・! ―――この、宇宙人がっ! 見崎は、眉間を押さえ溜息を吐き。 藤岡は、天を仰いだ。 「そろそろ、決断したみたいだね?藤岡君。衣装もメイクしてくれる子達もスタンバってるから。」 のんびりとした崎守の声が、間に入り―――藤岡は・・・ギリッと唇を噛み締めながら、崎守の後に続いた。 「二方とも、この貸しはキッチリかえして貰いますからね―――」 通された部屋で、「俺が用意したのー」と友永からチャイナドレスを手渡された藤岡は、地を這うような声で吐き捨てた。 見崎は、犠牲になった藤岡に同情しつつも「あいつもタダじゃ起きあがらないなぁ」と苦笑した。
云われるがままチャイナドレスを着せられ、梅華女子の生徒に狂喜乱舞のなかメイクアップされた藤岡は、妖艶な美女となり会場を感嘆と溜息の嵐とした。 当然の如く藤岡は優勝し、松華学園に“男装女装コンテスト・女装部門”&総合優勝のトロフィーをもたらしたのだった。 そして、崎守と友永の卒業と共に二人が仕切っていた学校の裏組織・情報を藤岡が全て継ぐことで、藤岡はキッチリと二人から“貸し”を返して貰うことになるのである。
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| カウンター50000hitsです。 うおおおっ、早かったなぁ。しみじみ。 コレも皆様のおかげと思っています。ううっ。 というわけで、50000hits記念第1弾(笑) 色気も素っ気もない話です(爆) というか、一樹出てこないし・・・(一樹、現在中学三年生) ま、時々話に出てきていた藤岡高校一年生屈辱の女装編でした。 あはは。 友永が濃すぎて、見崎も藤岡も食ってしまった。 友永は、藤岡がかなわない数少ない人間ですね。 |
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