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Drinker・Drinker?!


<Side・H−1>

ここ数日。
何があったのかは知らないが、あいつは落ち込んでいた。
たぶん実家とのことだろう、と俺は憶測したが、お互い実家の事は云わないのが両者の暗黙の了解となっていたので、俺は突っ込んで聞くことはなかった。

憂いているあいつも綺麗なのだが、やはり俺の云った事を冷たく返すいつものあいつの方が俺は好きだった。
普段のあいつなら眉を寄せて嫌がる事を俺が云っても、今のあいつは『ああ―――』とか『うん・・・』としか、答えないのだ。

らしくない。
全くもって、らしくない。

『馬鹿か、お前は。』とか『殺すぞ―――』とか云われる方が、何倍もマシだ―――と、「マゾか俺は・・・」なんて自問自答しながらも、俺はそう思わずにはいられないのだった。

で、そんなあいつを元気付けるために俺は色々考えた結果
「酒盛りをするのがイイ!」という考えに至り、寮生活では普段手に入れる事など出来ないはずの―――

ビール
日本酒
ワイン
ブランデー
ウイスキー
など、各種とりどりの酒を、色々なツテを使って用意させた。

あとは、あいつが部屋帰ってくるのを待つのみ―――


◇◆◇◆◇


<Side・N−1>

「なんだ、コレは―――」
俺が部屋に戻ると、ソコには、酒・酒・酒―――
日本酒
ワイン
ウイスキー
ブランデー
ビール
が、所狭しと並べられていた。

「宴会、しようぜ?」
ニヤリと犬歯を見せ、ヤツは俺に向かって笑った。

全国模試でTOPクラスの成績を取ったのが、あの義母には気に入らなかったらしい。
普段無視している俺に、電話をかけてきた。
直線的な、嫌み。
遠回しの、母への罵倒。
延々と数時間、聞かされ続けた。
俺は、何故か近頃義母の声を聞くと、気分が憂鬱になる事が多かった。
何処かで、ココロが悲鳴を上げているのかもしれない。

もう嫌だ。
もう、あの家には関わりたくない。
自由に生きたい―――、と。

母の墓前で誓った復讐。
ソレさえも、投げ出したくなる。
あの家の名前を聞かないところへ・・・・
何処か自由な国へ、行きたいと。

並べられた、酒を見やった。

ヤツは、俺が少しおかしい事に気付いてるのかもしれない。
そのフォローが、今回の突然の「酒盛り」
フッと笑みがこぼれる。
ヤツとは、深い付き合いになってから半年。
決して長いとは云えない付き合いだ。
なのに俺の心を一番敏感に捕らえて、何も云わずこうしてくれる。
こんなヤツは、今までいなかった。

―――なんて、居心地がいいんだろう・・・。

「いいな、飲もうぜ―――」
俺は上機嫌で、ヤツの提案に乗った。

―――酒を飲んで酔ったことはないが、こうして飲み明かしたい日というのもあるんだな。



俺は勢い良くワイン1本をあけ、日本酒の瓶に手をかけた。
「ピッチ、はええな―――」
そう云いながら、ヤツだって数本のビールを空にし、ウィスキーの瓶も空にしている。
日本酒を二人で飲み干して、ブランデーに手をかけながら、もう1本ワインをあけ、ビールを飲みだした頃から、少し気分がふわふわしてきた。

―――コレが、酔うって云うのか?

妙に、嬉しくなってきた。
ヤツが隣で俺を見ている。
少し、甘えたくなった。
ヤツの広い膝に、寝たいな・・・・。

「なぁ―――」
肩に抱きついてみる。
ヤツの目が目一杯に開かれた。
ふふっ、面白い。
よしっ、じゃぁ次は―――
当初の目的通り、膝の上に頭をのせてみた。
温かい。
思ったより、いい感じだ。

「気持ちいい〜〜〜〜」
顔が緩むのが、止められない。


◇◆◇◆◇


<Side・H−2>

な・・・何が起こってるんだ。
指で、自分の頬をつねってみる。

―――痛い。
ということは、夢ではないと云う事で・・・・。

俺の胡座をかいている太股に頬を擦り寄せて、「ん〜〜」とか云ってるのは、本当の本当に俺の知っているあいつなのか?!



二人ともザルだったから、酒の量も半端じゃない位用意した。
今日のあいつはピッチが早く、ワインをほとんど一気のみ状態であけると日本酒の一升瓶もほぼあいつが飲み干した。
ブランデーも半分ほど飲み、500mlのビールを浴びるように飲みだした頃から、あいつの目元がほんのり染まってきたのだ。
普段キツイ目で、しっかり前を見据えることしかない瞳が、トロンと潤みコチラをジッと見ている。
―――ど、どうしたんだ・・・?
見たこともない様子のあいつをマジマジと見返していると、いきなりあいつはニコニコニコッとこちらに笑いかけ「なぁ―――」と俺の肩にしなだれかかって来るではないかっ!

―――て、天変地異の前触れかっ!!

あいつのこんな無防備な笑顔を見たのは、ハッキリいって初めてで・・・。
こうして、俺にしなだれかかってくるのも、もちろん初めてで・・・。
らしくもなく、激しく動揺してる俺に、あいつは―――

「気持ちいい〜〜〜」
と、可愛いとしか云えない笑顔で俺の膝に寝ころんできたのだっ!!!



「おい、大丈夫か・・・?」
動揺して、声が震えてるのは仕方ないことだと俺は思う。
なのに、あいつは―――
「ん〜〜〜」
と、俺に向かって両手を伸ばしてくる。

―――な・・・何を俺に求めてるんだっ。

焦って動かない俺に、あいつは焦れたように
「んっ!」と、胸元を掴み自分の方に数回引き、もう一度両手を広げた。

―――だ・・・抱き上げろ・・・って事かぁ?

俺は、あいつの背中と俺の膝の間に腕を入れ、あいつをグイッと抱き寄せる。
するとあいつは満足そうに、俺の胸の中に収まった。
そしてあいつは俺の膝の上に乗り、俺の肩に顔をコテッと置くと、「ふふっ」と忍び笑いをしながら、しきりに俺の髪の毛を弄ってはニコニコしている。
普段口元の端をクイッと上げてシニカルな笑いしかしないあいつが、今日は満面笑顔のバーゲンセールだ。
耳元にかかる息も、熱くて荒い。
俺の下半身が熱くなって来るのも、これは自然の摂理だというモノだっ!

俺が悶々と考え事をしていたのが、どうやらあいつは気に入らなかったらしい。
頬を膨らませ(コレが、無茶苦茶可愛い!!)、俺の頬を両手で包み込み、グイッと自分の方へ向かせると「何考えてるんだよっ」と口を尖らせた。
その可愛さに、胸をバクバクさせながらも「悪りぃ、悪りぃ」と軽く答えてやる。
すると・・・

「俺の事だけ、考えてないとダメ。」
―――へっ?!
「お前は、俺のことだけ見てないとヤダ。」
―――はぁ?!

俺はやっぱり、夢を見てるんだろうか。
それとも、狐に化かされてるとか・・・・。

目の前には、頬を膨らまして紅くなりながら怒ってるらしき(可愛くて、どうしても怒ってるように俺には見えない)あいつが居る。
あいつに対して、こんなに後手後手に回る日が来ようとは―――

「な、なぁ、お前さぁ―――」
意を決して、俺が云いかけると

「キス―――」
「―――――――――は?」
「キスしてっ!なぁ〜〜」
あいつはそう云うと、うっすら口を開いて紅い舌を俺の前にちらつかせる。

「は・や・く―――」

―――う・・・
うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!


◇◆◇◆◇


<Side・N−2>

「は・や・く―――」

俺は目を閉じて、口を開く。
ヤツの熱い口付けが、欲しい。
するとヤツは、グイッと俺を自分に抱き込み、噛みつくようなキスを仕掛けてきた。

「んっ・・・ふっ―――」
舌をねじ込まれ、強引に絡められる。
負けじと、俺も積極的に絡めてやった。

気持ちいい。
躰の奥から、何か疼いてくる。

ヤツは、俺の唇から耳朶の方へと舌を這わす。
「あっ、ん―――」
声が自然と出る。
何だか押さえるのも面倒だし、出るままに任せる事にする。

「―――ぎさ・・・」
ヤツが耳元に、熱い息を吹きかける。
「ん―――?」
「気持ちいいか・・・?」
何を当たり前なことを聞いてるんだ―――
「イイ・・・気持ちいいよ」
でも、気分がいいので答えてやる。

「あっ・・・」

胸元を探られ、またまた声が出た。
ヤツは、摘んだりこねたりしながら俺の首筋に吸い付いている。
「うんっ・・・イッ・・・」

何だか、躰中がジンジンする。
疼くような、でも何か物足りない―――。

「ひろっ―――」
相変わらず、首筋を吸い付いているヤツの髪の毛を引っ張ってやる。
「もっとぉ・・・・」
もっと、刺激が欲しい―――
「もっと、何だ?」
意地悪く、ヤツは俺の顔を覗き込んできた。
悔しい・・・。
でも、欲しい気持ちの方が強くて

「指だけじゃ・・・嫌だっ・・・もっと―――」
「もっと?」
ヤツは、ニヤリと犬歯を見せて、俺に笑いかける。
「・・・・舐めてっ!噛んでくれっ」
「了解―――」
ヤツは俺の胸元に顔を落とすと、既に尖っていたソレを舌で玩びだした。

「あうっ・・・ん・・・」
気持ちいい―――
「イイか?」
ヤツは歯を立てながら、上目遣いで聞いてくる。
―――イイに決まってるだろ
「物足りないって顔してるぜ―――」
お前も、そのオヤジみたいなエロイ顔、止めろよ・・・
「舐めるのは、ココだけでいいのか?」
ペロリと、もう一度紅く熟れきった俺の胸をヤツは舐めた。
何だ、その嬉しそうな顔。
「ココだけでいいんなら、コレで止めるぜ?」

・・・・・
足りない―――

俺は、既に熱くなってきた下腹部をヤツに押しつけてやる。
「もう、勃ってるじゃん」
ジーンズの上から、ヤツは多分半立ちしている俺を撫でた。
ゾクゾクゾクッ、と躰中に電気が走る。

もっと・・・・
して欲しい―――

「どうして欲しい?お前が云うこと全部してやるぜ・・・」
「あっ・・・」

「触って欲しい?」
欲しい・・・。
コクンッ、と俺は素直に肯く。

「舐めて欲しい?」
欲しい・・・。
コクコクッ、またまた肯く。

「了解―――」
そう云うと、ヤツは俺のジーンズと下着を下ろし、ゆっくと俺を扱った。

「あんっ―――」
気持ちいい。
今までとは全く違う―――。

ヤツは淫靡な笑みを浮かべつつ、俺を扱いながら俺の顔中にキスを落とす。
「イッ・・・ソコ・・・イイッ・・・!!」
「ココ、お前好きだもんな」
ヤツはそう云うと、親指でグイグイッと俺の先端を擦り上げる。
「ヤッ、ダメ―――」
自然に背筋が弓なりになった。
おかしくなる・・・。

「トロトロだぜ・・・イッパイ出てきた。」
「もうっ、云うなよ―――」
「ほらっ、ヒクヒクしてる・・・俺の手、ビショビショだぜ」
ヤツは手を俺の目の前に持ってきた。
その指は、俺から出た透明なモノで、濡れていて・・・

「や、見せるなぁ!馬鹿ッ!!」
恥ずかしくて、目の前がぼやけてくる。
でも、気持ちよくてヤツの手に自分を擦りつけてしまった。
ハズカシイ―――

「悪かった、泣くなよ・・・ゴメンッって―――」
ヤツは慌てて、俺にキスをしてきた。
そして、目尻から流れ出したモノを舐め採っていく。

「イジ・・ワル・・・・」
思わず、泣き言を云って責めてしまう―――

「俺が悪かった。お前が恥ずかしがってる姿が可愛かったんだって・・・」
「可愛い、って云われても嬉しくない・・・」
「可愛い、可愛いよ。俺の―――」
「ああ、んっ・・・!!」
ヤツの声は、俺自身を呑み込みかき消えてしまった。

根本から先端まで舌を這わされて、余りの快感に目の前が真っ白になる。
キュッキュ、と手で袋を扱われ、くびれと先端を思いっきり吸われて―――

「ヤッ、ダメっ!イ・・・イクッ―――」
「いっちまえ。全部飲んでやるよっ!」
促されるように、喉の奥まで飲み込まれて締め付けられ・・・・

「ああ・・・うんっ・・・あぁっ―――」


◇◆◇◆◇


<Side・H−3>

ゴクリッ
俺の中に放たれた、あいつの熱いモノを俺は飲み込んだ。
ウットリとした表情を浮かべているあいつに、俺はそのまま口付ける。
普段、あいつのを飲んだ後のキスは必ず拒まれるのに、今日のあいつは嬉々として受け入れた。

先ほどから、目の前で繰り広げられているあいつの痴態。
コレは、本当の本当に現実なのか?
未だに夢にしか思えない。

だが・・・

「―――たかぁ、ねっ・・・」
(鬱陶しい―――)

「もっとぉ・・・・」
(これ以上、触るな・・・)

いい―――
夢でもイイ!!
きっとコレは、普段足蹴にされ続けて来た、俺へのプレゼントなのだ!!



「ここから、どうして欲しい―――?」
俺は、あいつの下半身を玩びながら、意地悪く問いかけてみる。

悔しそうな、あいつの表情。
快楽と理性の葛藤。

―――こんなに、そそる表情をするなんて・・・。

そして今のあいつは、快楽を選ぶのが手に取るように、俺には判る。

「どうしたい?」
「んっ・・・ひろっ・・・・」

あいつの根本をいたぶりながら、聞いてみる。
俺の予想通り、あいつは涙目で見上げ・・・

「しっ、しろよっ・・・!いつもみたいに・・・これでっ!!」
そう云いながら、あいつは俺の下腹部に手を伸ばし、柔らかく握ってくる。

「挿れろよっ・・・!!なぁ―――」
顔を真っ赤にして、それでも必死に俺に言い募ってくるあいつ・・・・。

最高――――――

周りに人がいたら、握手して回りたい気分だ。
誰彼ともなく、感謝して「ありがとうっ、みんな!」と叫んでしまいたい。

「いいぜ、お前の望むようにしてやる―――」
俺の言葉に、嬉しそうにはにかんで俺の肩顔を埋めてきたあいつは・・・・

イっちまいそう―――。
白飯、3杯は軽い。

そんな頭の中の考えなど俺はお首にも出さず、潤滑剤を取り出すと性急にあいつの蕾を潤いにかかった。

「うふっ・・・あっ・・・・」
指を差し入れ、固く閉ざしたソコに潤滑剤を滑り込ませていく。
ソコはどんどん溶けていき、俺を迎え入れるためにヒクヒクと蠢き出す。

「なぁ、ヒクヒクしてるぜ・・・。俺を誘ってる―――」
普段なら殴り飛ばされ、3日は口を利いてくれないだろう言葉を口にしてみる。
するとあいつは、首筋までパッと朱色に染め「馬鹿―――」と小声で俺に呟いた。

かっ・・・可愛すぎるって―――
犯罪的な可愛さに、俺はクラクラしていると

「も・・・大丈夫だよっ・・・挿れろよっ・・・」
と、腰を押しつけてくるではないか!!!

ぐはっ―――
そのまま突入しそうになって、必死に理性を押さえる。

「どの、体位がいい?前?バック?それとももっとすげぇのスル?お前の思うままだぜ―――」
こういうの、一度云ってみたかった。
感無量。
あいつの反応が気になるので、ジッと待ってみる。
一瞬絶句したあいつは、うーと低く唸ると
「正常位・・・」
と、ポツリと答えた。

OKと、俺は答えあいつの足を抱え上げる。
潤滑剤が滴り落ちる蕾に、俺の猛ったモノをグッと押しつけ、ゆっくりと挿入していく。
「あっ・・・んっ・・・」
あいつは、少し苦しそうに喘いだ。
その表情さえも、色っぽい。
男のくせに、俺を熱く滾らせるのはコイツだけだ・・・。

あいつの奥深くまで挿入してしまうと、あいつは艶やかに妖艶な笑みを浮かべ
「お前の顔が見れるから、コレが一番スキ―――」
と、俺の肩に爪を立てた。

は・・・鼻血が―――


◇◆◇◆◇


<SideN−3>

「あっ・・・あ・・・んぅっ―――」
コレは、誰の声だ。

「・・・ぎさ、イイか?」
「んっ・・・イイ―――」
俺の声―――?

高い声。
甘い声。
本当にコレ、自分の声?

「ひっ・・・あぁ・・・」

でも、そんな事、どうでもイイ。
気持ちいい。
ヤツから与えられる快楽が―――
そう、そこ。
もっと、深く―――

「もっと・・・もっと―――」
「もっと、奥か?」
「うん、そう―――」

ヤツの熱い楔が、俺の奥へ奥へと突き進む。
突かれて、擦れて、最高にイイ。
力を入れると、ヤツの形が判って、もっともっとイイ。
ヤツが、苦しそうな、でも最高に気持ちよさそうな顔をするのが、一番イイ。

「あぁ!!」
ヤツが腰をグラインドして、先ほどまで突いてたのと違う場所を突いた瞬間、俺の躰が跳ねた。
目の前に、火花が散る。

「ココ、だなっ」
息の上がったヤツが、俺が反応した場所をグイグイ突いてくる。

あぁ―――
もう、何も考えられない。

「ダメッ、ダメだっ・・・」
「イイんだろっ。もう、ドロドロだぜ―――」
そう云うと、ヤツは限界に打ち震えている俺に手を伸ばし、軽く扱ってきた。

「やぅ、触ったら・・・イッ・・・」
「イけよ、イっちまえ―――、俺も・・・」
掠れたヤツの声が、腰にズン、ときた。
ヤツは抽送のスピードを上げ、俺を一気に高みへと放り投げる。
俺は何も考えられない頭で、必死にヤツに縋り付き肩に噛みつく。

「ヤッ・・・あぁ・・・イイ・・・イクゥ―――」
「くぅっ、―――」

腹に、自分の放った熱いモノを感じる。
そして少し後、俺の奥にヤツが熱いソレを放った。
「あぅ―――」
最後の一滴まで吸い取るように、自分の内壁が収縮してるのが判る。
俺の上に乗っていたヤツの躰が弛緩し、俺の上に覆い被さってきた。

「最高―――」
ヤツは、俺の耳朶をはみながら、低い声で囁く。
「うん・・・」
俺も、俺も最高に感じた。
俺を抱き寄せたヤツをジッとみると、ヤツは「くぅー」と唸っている。
不思議に思い、首を傾げてると
「・・・お前、なんて、なんて可愛いんだよっ。」
そのまま、ヤツ唇を受ける。

可愛い?
そんな事、云われたの初めてかもしれない。
『なんて、可愛くない子なのかしらっ!』
そう云われたことはあったけど・・・。
ソレを云ったのは・・・誰?
頭に靄がかかっていて、思い出せない。

「俺、可愛いか―――?」
唇を離したヤツに、聞いてみる。
少し驚いた顔をしたヤツが、もう一度俺をギュッと抱きしめた。
「可愛い。可愛い・・・。俺の、俺の―――」
「んんっ・・・」

まだ俺の中にいたヤツが、ぐんぐん大きくなったのを感じ、俺は思わず声を出した。

「このまま、抜かずの2回目いこうぜ」
ヤツが、嬉しそうに云う。
俺は、ヤツのその顔が可愛くて嬉しくなった。
「いいだろ?」
「ん。俺も、もう1回、したい―――」
そう云うと、ヤツの顔がパッと輝き
「最高―――!!!」
そう叫んで、もう一度快楽を追うため激しく動き出す。

俺はすぐに目の前が真っ白になり、快楽の海に放り出されたのだった。


◇◆◇◆◇


<エピローグ>

―――頭が痛い。

超不機嫌状態で、渚は目覚めた。
そのまま起きあがろうとしたが、起きあがることは出来なかった。
腰に撒かれた、腕の所為で。

「博隆・・・・?俺、昨日は―――」
ふと見やると、自分は地面に寝てるではないか。
しかも、真っ裸で。
そして周りに散らばった衣服と、空き缶空き瓶などを見て―――

「―――!!!!!」

叫び出さなかったのが、奇跡だ。

走馬燈のように、自分の昨日の痴態が頭の中を駆けめぐる。
一言一句、一挙手一投足・・・全て。

―――うそ・・・だろう?

羞恥を通り越した、何とも表現できない感情が渚の中で渦巻く。
渚は、しばらく呆然と宙をながめていた。
そして、次に押し寄せた感情。
それは自分の隣で、さも「満足です」という顔で寝ている男への、溢れんばかりの憎しみ。

コイツは、俺に何を云わせた。
俺に、何をさせた・・・。

「んっ・・・」
丁度、その時博隆が覚醒した。
「んだよ、ダーリン。もう少し寝ようぜ―――」
昨日の態度そのままに、博隆は渚を自分の下に抱き込もうとする。

「この、大馬鹿野郎が―――!!!」
「グハッ!」

渚の右ストレートが見事に決まった。

「な・・・渚?」
寝ぼけていた博隆も、一気に目が覚める。

「貴様!!よくも昨日、酔った俺に数々の不埒な事をしたなぁ!!!」
「へっ?」

怒りのため、全身震えている渚を見ながら、博隆もやっと現状を把握しだした。

「やっぱ、あれ、酔ってたのか?」
「それ以外、何があると云うんだ・・・俺が・・・あんな・・・」
忘れたいけど、決して忘れてはくれない脳が憎い。

「いいじゃん、二人でノリノリで最高に気持ちよかったんだし―――」
「こ・・・こんのぉぉ―――」
「云わせて貰うが、渚が『もっともっと』とか『挿れてっ』とか、云ったんだぜ?」
「き、貴様ぁぁ―――」
ニヤニヤと博隆は渚をのぞき見ると、俯いて震えていた渚は、鬼の形相で・・・。

「これから、一切貴様とは口をきかんし、関わらんっ!」
「渚―――」
博隆が渚に伸ばしかけた腕を、渚は思いっきり叩くと、ギッと睨み付け、立ち上がりバスルームへと消えていった。

「俺だけが、悪者か―――?」
博隆のボヤキは、渚には聞こえない。



その後1週間、渚は博隆とまともに口を利くことがなかった。
そして渚は、博隆の前では浴びるほど酒を飲むことはなくなり、渚の嬌態を博隆が再び見れたのは、9年後、博隆の策略に渚が見事に引っかかったときだった。



終わり



『楽園』高校生編


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