本能と3日と禁欲のバランス関係〜
「楽園」シリーズ・高校生編








―――あいつはそろそろ寝ただろうか。

渚は集中していたノートから顔を上げた。
時計を見ると、1時を回っている。
消灯時間は、11時。
既に2時間は過ぎている計算になる。

普段のあいつなら、とっくに寝ている時間だろう。

―――戻ろう。

渚は立ち上がると、小さな部屋の電気を消し、扉を閉めた。


◇◆◇◆◇


桜華学園の3年生になって、同室となった和泉博隆という男に強姦されて、はや1ヶ月。
博隆の精力は留まるところを知らず、ほぼ毎日のように夜になると博隆は渚のベットに潜り込んできた。
それなりに抵抗するのだが、かき口説かれ、強引に押し進めてくる博隆に、渚はいつも最後には陥落していた。
博隆に抱かれ、今までにない安息と充実を手に入れているのが、渚自身にも判っていたせいであろう。

だが3日前、渚は本気で博隆に抵抗した。



その日は久しぶりに義母から電話がかかってきたのだ。

『身分を―――自分の身分をわきまえなさい。お前など・・・庶子のお前などが瀬野の家に関わることなど許さないっ!』

義母の怒りの理由は渚にはすぐに判った。
その1週間前に飯島が持ってきた資料のことだろう。

渚の父である忠雄は、

『使える人間であるかどうか』
『会社にとって役立つ人間か』

で、人の評価をする男であった。
たとえそれが自分の肉親であっても、他人であっても関係なく―――

渚の母が死んで瀬野の家に渚を迎え入れたのだって、忠雄は渚が将来瀬野に役に立つ人間だと判断した結果であると渚は理解していた。
そして忠雄は時々、渚の腕を試すような事をする。
先日の資料だってそうだ。
不良債権を抱えた瀬野グループの関連会社が羅列してある3枚の紙。
その中から、切るべき会社と残していく会社を選別しろ、というのが忠雄の指示だった。
膨大な会社資料を読みあさり、判断を下す。
義母が文句を云ってきたということは、飯島に託して父に渡した渚の判断がきっと正しかったと云うことだろう。
想像するに、3男4男も同じ課題を忠雄から出されているはずだ。
そして、正しく判断が出来たのは渚だけだったのだろう。
忠雄は、義母・3男4男の前でそれを語り、叱責したはずだ。

『渚は出来ているのに、お前達は全くダメだ。本当に私の血を継いでいるのか―――』

無神経な言葉。
義母と異母兄達の恨みは、すべて渚に降り注ぐのである。
ずっと―――瀬野の家に来てから続いていたことなので、渚はもう慣れてしまったが。

しかし、義母の声を―――罵りを聞くと、どうしてもナーバスになってしまう。
その日、博隆がいつも通りベットの中に潜り込んできた時、本気で抵抗してしまった。
全くその気にならなかったのだ。
渚と博隆の体格は、線は渚の方が細いが、あまり変わらない。
だから、本気で抵抗した渚を博隆が押さえつけて犯せるわけもなく―――。
その次の日も、抵抗した。
昨日からは、部屋にも戻らなかった。
優等生を演じている渚は、教師受けがいい。
「一人で集中して勉強したい」と、寮担当の先生を落とし、個室を借りていたのだった。


◇◆◇◆◇


ガチャ。
戸締まりという言葉を知らない男は、一度たりとも自分で鍵を閉めたことがない。
―――あの馬鹿。いつも鍵を閉めろと・・・あれほど云っているのに。

部屋にはいると、真っ暗だった。
少しおかしいと、渚は首を傾げる。
博隆は寝るとき、豆球を点けて寝るのだ。
なのに―――部屋は、真っ暗だった。
渚は、明かりを付けようとスイッチの方向に向かった―――その時

「―――フ、グッ」
その時突然、後ろから羽交い締めにされる。
そして口元に、布があてられ―――渚の意識は一気に遠のいてしまった。


◇◇◇


ピチャリ
濡れた音と下腹部の圧迫感に、渚はうっすらと目を開けた。
「う・・・んっ―――」
意識せず、声が出る。
「目ぇ、覚めたか―――」
覚醒してくると、自分の身に起こっていることが・・・・・・・・・・・・・理解できた。

「な、にをしてるんだ、お前。離せっ!!」
渚の腕はロープで縛られ、ベットにくくりつけられていた。
そして、両足は思いっきり開かれ、自分の最奥を、博隆は指で犯していた。

「何日、してねぇと思ってるんだ―――」
「馬・・・。抜けよっ!指っ!!!」

既に2本の指を埋め、思い思いに渚の内部で動かしながら、博隆は片手でピンク色の液体の入った瓶を取った。
「この俺様に、3日も禁欲生活を布いたんだぞ、お前は。それなりの代価は払ってもらわねぇとな。」
手は全く動かない。
足を閉じようにも、博隆の躰がしっかり入ってしまっているので、閉じることもできない。
博隆は瓶の蓋を口で開けると、渚の中に突っ込んでいる2本の指をギュッと広げる。
「くっ・・・何をする気―――」
そして広げた蕾に、トロトロとそのピンク色の液体を流し込んでいった。
冷たい液体と、ドロドロとした感触に、渚の背が弓なる。
ドロドロと半分ほど流し込むと、博隆はサイドテーブルにその瓶をおいた。
そして、3本目の指を入れると、再び蠢かせ始めた。

「うっ・・・ふっ・・・やめっ・・・!!」

勝手知ったる渚の躰。
博隆は、渚の前立腺を小刻みに刺激した。
そのたび、渚の躰は陸に上がった魚のようにベットの上を飛び跳ねる。
高まる欲望。
我慢できないほどに、渚のソコは張りつめ、だが、後ろの刺激だけではイケなくて、もがき苦しんだ。
「ひろ・・・たか―――」
上擦った声で、助けを求める。
躰は、何故か・・・いつも以上に熱くなっていくのだ。
「イきたいか―――」
耳元で囁く、低い声。
博隆の痛いほどに高ぶった欲望も、渚の太股に当たっている。
なのに博隆は、指のみで渚を刺激していた。
「ったか―――!!」
プライドも何もかもが、崩れ落ちそうになる瞬間。
指だけじゃ足りない。
もっと、熱い太いモノで、貫いて欲しい。
前を触って欲しい。
躰が、
躰が、熱い―――

「俺を、拒絶するな。俺を、拒むな。」
ワケも分からず、肯く。
何でもいい。
自分の中を、男のモノでいっぱいにして欲しかった。

「ひろっ・・・ハヤク―――」
おかしくなりそうだ。
躰中が、男を、博隆を求めて啼いている。
内壁が、欲しい欲しいと、博隆の指に絡んでいくのが、渚にも判った。
欲しい。
ハヤク
ハヤク
ハヤク―――

「忘れんなよ、その言葉―――」
「あっ・・・ああぁ―――」

貫かれた瞬間、渚は吐精した。
だが容赦ない博隆の突き上げに、躰の力を抜くヒマもなかった。



「ひっ・・・くっ・・・ああっ・・・」
「くそっ、最高だぜ―――」
激しく揺すぶられ、肩口に噛みつかれる。
思わぬ快感が躰中を駆けめぐり、すぐに欲望を吐き出してしまう。
しかし、躰の熱は冷めることなく、すぐに甦ってくる。
おかしい
おかしい―――
渚は、自分の躰の変化に多大なる疑問を抱きながらも、荒れ狂う欲望の波には勝てず、獣と化した男の動きにあわせて自分の腰を降り続けた。


◇◆◇◆◇


差し込む朝日が、黄色く見える―――
こんな事を経験する日が来るとは、渚自身思っても見なかった。

昨夜の博隆との交わりは、まるで獣のようだった。
博隆は一度自分が達しても、自身を渚から抜こうともせず、縛っている紐を外して体位を変えた。
バック、座位―――
ワケも分からない体位をとらされ、啼かされ続けた。
そして、気絶するように、眠りについたのだった。

ゴワゴワするシーツに、居心地の悪さを感じる。
腰が、とてつもなく重い。

横で、機嫌良くスヤスヤと眠っている男を殴りつけてやろうと、渚は躰を起こそうとして―――

「―――!!!!」

ベットの上に、もう一度倒れ込んだ。

躰中の筋肉が、悲鳴を上げた。
普段滅多に使うことのない筋肉を酷使され、何時間も揺さぶり続けられた渚の躰は限界にきていたのだ。

―――う・・・そだろ。

枕に顔を埋めて、渚は信じられない事実を必死に受けとめようとしていた時・・・

「モーニン、ダーリン。最高の夜だったぜ」
無神経な言葉が、頭上か降ってきた。

「いつも、アレくらい求めてくれたら、俺だって毎回張り切るのになぁ。」
男は、大変ご機嫌のようである。
ハッキリいって毎日あのようなコトに及んでいたら、自分は3日で腹上死するだろう、と渚は思った。

「博隆・・・・・・・昨日、俺に何をした?」
冷静に考えてみると、昨日の自分の躰は、おかしかった。
何度も何度も高みに放り投げられても足りなくて、浅ましいくらいにこの男を求めた。
躰中が熱くて熱くて―――頭が真っ白になるくらいに。

「お・・・?気が付いたか?」
男はニヤリと犬歯を見せて笑いながら、ピンク色の瓶を渚の前にかざした。
「な・・・んだ、ソレは―――」
「ん?ちょっと知り合いに貰って・・・昨日試してみた。」
「だから、なんなんだ、ソレは―――」
「―――所謂、媚薬って云うヤツ?」
媚薬―――!!
そ、そんなものを使われていたのか・・・!!
渚は、フッと気が遠くなりそうになり、次の瞬間怒りが躰中を駆けめぐった。

「こ、この―――!!!」

隣でニヤニヤしている男を殴ってやろうと拳を振り上げ―――
もう一度、ベットに沈没した。

「おこんなよ、ダーリン。今日は学校休め。風邪引いたって云っておいてやる」
博隆は、渚の怒りを感じたのか、サッサとベットから離れて制服を着込んで出ていった。

はぁ―――

確かに、全く動けそうにない。
渚の無遅刻無欠席記録は、こんなコトのために潰えてしまうらしい。

はぁ・・・・・・。

あの男を、禁欲させるのは・・・・3日までだな。
でないと、いつか、遠くない未来に腹上死させられる。

はぁ―――

この、二人の精液の飛び散ったシーツの上で、このまま寝てないといけないんだろうか。

はぁ・・・・・・。

渚の溜息は、昼まで止まらなかった。





END





『ONEDAY−渚のある一日』
に出てきたエピソードです。
博隆さんは、禁欲生活は3日しか持たないらしいです。
で、4日目には獣と化す(笑)
渚は、体力勝負ですね。こういうのを相手にすると。
うふふ、大変大変〜。


それでは、コレからも水貴&AngelRingをどうぞよろしくお願いします〜。

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